「データの透明性がグリーン資金調達の鍵」――DBSベトナム代表が警鐘、脱炭素への対応は企業存続の条件に

'Minh bạch dữ liệu là chìa khóa để doanh nghiệp tiếp cận vốn xanh'

グリーントランスフォーメーション(GX)はもはや「未来のトレンド」ではなく、企業が資金を調達するうえで不可欠な「前提条件」になりつつある――。DBSベトナムのトップがこう強調し、グリーンファイナンスへのアクセスを求める企業に対し、データの透明性確保を最優先課題として取り組むよう訴えた。

目次

DBSベトナム代表が語る「グリーン資金調達の現実」

シンガポール最大手の金融グループDBSのベトナム法人であるDBSベトナムのアブドゥル・ラオフ・ラティフ(Abdul Raof Latiff)総支配人は、「グリーン転換はもはや選択肢ではなく、必要条件だ」と明言した。そして、企業がグリーンキャピタル(緑の資本)にアクセスするためには、データの透明性(Minh bạch dữ liệu)が絶対的に求められると強調した。

ラティフ氏の発言は、国際金融機関や機関投資家がグリーンローンやサステナブルボンド(持続可能性連動債)を提供する際、企業側に対してESG(環境・社会・ガバナンス)関連の定量データを厳格に要求する世界的な潮流を反映したものだ。温室効果ガスの排出量、エネルギー消費の内訳、サプライチェーン全体における環境負荷など、客観的かつ検証可能なデータを持たない企業は、いかに「グリーンな取り組みをしている」と主張しても、資金調達の場では相手にされない時代が到来している。

なぜ今、ベトナムでグリーンファイナンスが注目されるのか

ベトナムは2021年のCOP26において、ファム・ミン・チン首相(当時)が2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成するという野心的な目標を国際社会に表明した。この宣言は国内外に大きな衝撃を与え、ベトナム政府はその後、再生可能エネルギーの拡大、排出量取引市場の整備、グリーン金融政策の策定など、一連の政策を矢継ぎ早に打ち出してきた。

世界銀行やアジア開発銀行(ADB)をはじめとする国際金融機関は、ベトナムのエネルギー転換を支援するために多額のグリーンファイナンスを準備している。また、欧米や日本のESG投資ファンドも、新興国の中でも成長著しいベトナムへの投資機会を虎視眈々と狙っている。しかし現実には、ベトナム国内企業の多くは、これらの資金にアクセスするために必要な「データ整備」が圧倒的に不足しているという深刻な課題を抱えている。

製造業を中心に、多くのベトナム企業は電力消費量や廃棄物の排出状況を系統的に記録・管理する仕組みを持っていない。また、国際基準であるGRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠したサステナビリティレポートを作成している企業は、大手上場企業を除けばごくわずかにとどまっている。

「透明性なき企業」に資金は流れない――国際金融の新常識

DBSグループはシンガポールを本拠地とする東南アジア最大級の銀行であり、アジア全域でのサステナブルファイナンスに積極的に取り組んでいる。ベトナムにも早くから進出し、大手現地企業や外資系企業への融資・投資銀行業務を展開している。そのトップが「データの透明性」を声高に訴えるのには、明確な理由がある。

国際的なグリーンローンやサステナブルボンドの市場では、「グリーンウォッシュ(環境への取り組みを実態以上に見せかける行為)」への警戒が年々高まっている。EUはすでにグリーンウォッシュを規制する法制度を整備しており、米国のSEC(証券取引委員会)も同様の動きを見せている。こうした国際規制の強化を受けて、資金を提供する側の金融機関や投資家は、融資・投資先企業に対してかつてないほど厳格なデータ開示を要求するようになっている。

具体的には、Scope1(自社の直接排出)・Scope2(購入した電力・熱からの間接排出)・Scope3(サプライチェーン全体の排出)という三段階のCO2排出量データの開示が標準的に求められるようになってきた。このうちScope3の測定・開示はサプライヤーを含む広範な協力が必要であり、特に中小企業にとっては高いハードルとなっている。ラティフ氏が強調する「データの透明性」とは、こうした国際基準に沿った、客観的で第三者が検証可能なデータ整備・開示体制の構築を意味している。

ベトナム企業が直面する「データ整備」の現実的課題

ベトナムの産業界に目を向けると、グリーンファイナンスへの関心は急速に高まっているものの、実際に資金調達につなげられている企業はまだ限られている。その最大の障壁が、まさに「データの透明性」の欠如だ。

繊維・縫製、電子部品、食品加工など輸出型製造業を中核とするベトナムの産業構造において、多くの企業は欧州や日本のバイヤーから環境データの開示を求められるようになってきた。EUのカーボン国境調整メカニズム(CBAM)の本格施行も、ベトナムの鉄鋼・セメント・アルミニウムなど関連産業に大きな圧力をかけている。こうした外圧が、ベトナム企業のデータ整備を後押しする要因にもなっているが、同時に対応の遅れが競争上の不利をもたらすリスクも高まっている。

ベトナム政府も問題の深刻さを認識しており、財務省や国家証券委員会は上場企業に対するESG情報開示の義務化に向けた制度整備を進めている。また、ベトナム国家銀行(SBV)はグリーンクレジット分類基準の策定を推進しており、金融機関がグリーンローンを提供する際の判断基準を明確化しようとしている。しかし、制度整備のスピードが国際金融市場の要求水準に追いついていないのが実情だ。

日本企業への示唆――ベトナム投資・調達戦略の再考を

日本企業にとっても、このテーマは対岸の火事ではない。ベトナムには現在、約2,000社以上の日系企業が進出しており、製造業を中心にサプライチェーンの重要な一翼を担っている。日系親会社が自社のScope3排出量を算定・開示する義務を負う場合、ベトナムの現地サプライヤーや合弁パートナーにもデータ提供を求めなければならない。

もしベトナムのパートナー企業がデータを整備していなければ、日本企業自身のサステナビリティ報告に支障をきたす可能性がある。また、ベトナムの現地法人がグリーンファイナンスを活用して設備投資や再生可能エネルギー導入を図ろうとする場合にも、現地でのデータ整備体制の構築が喫緊の課題となる。

さらに、日本の金融機関やJICA(国際協力機構)、JBIC(国際協力銀行)がベトナムでのグリーンプロジェクトに資金を提供する際も、同様の「データの透明性」が問われることになる。DBSベトナムのトップが発したメッセージは、ベトナムでビジネスを展開するすべての外資系企業、とりわけ日系企業にも直接的な意味を持つ。

考察――グリーン資金調達競争でベトナムは勝ち残れるか

東南アジアでは、インドネシア、タイ、マレーシアなどもグリーンファイナンスの誘致に力を入れており、国際資本の争奪戦が激化している。この競争において、「データの透明性」を早期に確立した国・企業が優位に立つことは明白だ。

ベトナムが2050年カーボンニュートラル目標を実現し、その過程で必要となる膨大なグリーン投資(一説には今後30年間で数千億ドル規模とも言われる)を国際資本市場から調達するためには、企業レベルでのデータ整備・開示体制の構築が急務だ。DBSベトナムのラティフ氏の発言は、その現実を直截に指摘したものといえる。

制度整備、人材育成、デジタルインフラの整備など、課題は山積しているが、ベトナムはこれまでも外部からの要求水準に素早く適応することで高度成長を実現してきた国だ。グリーンデータの透明性確保という新たな課題においても、官民が連携して迅速に対応できるかどうかが、今後のグリーンファイナンス誘致の成否を左右することになるだろう。

出典: VN Express

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