世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であり、投資界の「伝説」と称されるレイ・ダリオ氏が、世界経済に対する重大な警告を発した。2月3日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「世界政府サミット(WGS)」において、米CNBCのインタビューに応じた同氏は、「世界は資本戦争の瀬戸際にある」と述べ、投資家に対して金(ゴールド)の保有を強く推奨した。
「資本戦争」とは何か──お金が武器になる時代
ダリオ氏が言う「資本戦争」とは、通常の軍事的衝突とは異なり、金融・経済的手段を用いた国家間の対立を指す。具体的には、貿易制裁、資本市場へのアクセス遮断、債権の保有を外交的レバレッジとして利用するなどの手法が挙げられる。同氏は「我々はそうした戦争の瀬戸際に立っている。戦争はまだ始まっていないが、非常に近く、起こりやすい状況にある。なぜなら、双方が相手を恐れているからだ」と語った。
トランプ政権の動きが生む欧米間の「恐怖」
ダリオ氏は、トランプ大統領がデンマーク領グリーンランドの米国への併合を要求するなど、近年の地政学的緊張の高まりに言及した。欧州の投資家や政府が米国資産を保有することへの「恐怖」が広がっており、ワシントンからの制裁対象になりうるとの懸念があるという。一方、米国側にも「欧州が米国資産への投資を止めるのではないか」という不安が存在すると指摘した。
米シティグループのデータによれば、2025年4月から11月にかけて米政府が売却した国債のうち、実に80%を欧州勢が購入している。この数字は、米欧間の資本の相互依存がいかに深いかを物語っており、仮にこの関係が崩れれば、世界金融システムに甚大な影響を及ぼす可能性がある。
歴史が示す「資本戦争」の前例
ダリオ氏は、歴史的に資本戦争は為替管理や資本規制といった手段を伴ってきたと解説する。第二次世界大戦前、米国は日本との関係悪化を受けて経済制裁を発動した歴史がある。同氏は「現在の米中関係にも同様の構図が見られる」と警鐘を鳴らした。さらに、貿易赤字の裏側には資本収支の不均衡が存在し、この資本そのものが「武器」として使われうると述べた。
トランプ大統領は就任以来、多くの貿易相手国に対し関税を課しては撤回・軽減するという予測困難な政策を繰り返しており、これが世界の金融市場に大きなボラティリティ(変動性)をもたらしている。ダリオ氏によれば、各国の政府系ファンドや中央銀行はすでにこうした資本戦争への備えを進めているという。
なぜ今「金」なのか──ダリオ氏の投資哲学
こうした不透明な国際情勢の中で、ダリオ氏は金を最も有効な資産防衛手段として推奨する。金価格は前年同期比で約65%上昇しており、直近の高値からは約16%下落したものの、その上昇トレンドは「一日で変わるものではない」と同氏は強調した。
「金価格がこれだけ動いたから買うべきかどうか、と問うのは間違いだ」とダリオ氏は述べ、中央銀行や政府系ファンドに対しては「ポートフォリオの何割を金に配分すべきか」を考えるよう提言した。金は市況が悪化した際にパフォーマンスを発揮し、好況時においても分散投資の有効な手段であるという。同氏は「最も重要なのは、分散されたポートフォリオを持つことだ」と締めくくった。
日本への示唆──地政学リスクと資産防衛
ダリオ氏の警告は、日本の投資家や企業にとっても他人事ではない。日本は米国債の主要保有国であり、米中対立や米欧関係の悪化は、円相場や日本の対外資産に直接影響を与えうる。また、グローバルサプライチェーンに深く組み込まれた日本企業にとって、資本規制や貿易制裁の拡大は事業リスクの増大を意味する。金や他の実物資産への分散投資、地政学リスクを織り込んだ経営戦略の見直しが、今後ますます重要になるだろう。
出典: VnExpress












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