「EVは自動車産業の枠を超えて見るべき」──ベトナム著名エコノミストが指摘するエネルギー安全保障の盲点

TS Võ Trí Thành: Cần nhìn xe điện rộng hơn một ngành ôtô đơn lẻ

ベトナムで電気自動車(EV)市場が急拡大するなか、著名エコノミストのヴォー・チー・タイン博士が「EVを単なる自動車産業の一分野として捉えるべきではない」と提言し、注目を集めている。同氏は、EVはガソリンや軽油の消費を減らす一方で、二次エネルギーである電力の需要を大幅に押し上げるため、エネルギー安全保障の「唯一の解」にはなり得ないと警鐘を鳴らした。

目次

ヴォー・チー・タイン博士の問題提起

ヴォー・チー・タイン博士は、ベトナム中央経済管理研究所(CIEM)の元副所長であり、ベトナムの経済政策に長年携わってきた重鎮エコノミストとして知られる人物である。同氏は、EVの普及がもたらすエネルギー構造の変化について、より広い視野からの分析が必要だと主張している。

同氏の論点の核心は明快だ。EVが普及すれば、化石燃料であるガソリン・軽油の消費量は確かに減少する。しかし、その代わりに電力消費が急増するため、エネルギー安全保障の問題が「解決」されるわけではなく、むしろ課題の形が変わるだけだという指摘である。電力をどのように安定的かつクリーンに供給するかという問題が、新たな重要課題として浮上するのだ。

ベトナムにおけるEV市場の急成長と背景

ベトナムでは、ビンファスト(VinFast、ベトナム最大手コングロマリット・ビングループ傘下のEVメーカー)が国産EVの量産を開始して以来、EV市場が急速に拡大している。政府もEV普及を後押しする税制優遇策を打ち出しており、登録税の減免やEV向け特別消費税の軽減措置などが実施されてきた。

こうした追い風を受け、ベトナムの都市部ではEVの存在感が急速に高まっている。ハノイやホーチミン市の街中では、ビンファスト製のEVタクシーやバイクが日常的に見られるようになった。二輪車大国であるベトナムでは、電動バイクの普及も著しく、従来のガソリンバイクからの転換が若年層を中心に進んでいる。

エネルギー安全保障の新たな課題

タイン博士の指摘が重要なのは、ベトナムが近年、深刻な電力不足に直面してきた背景があるからだ。2023年には北部を中心に大規模な電力不足が発生し、工業団地の操業停止や計画停電が相次いだ。製造業の集積地であるベトナム北部では、日系企業を含む外資系メーカーにも大きな影響が出た。

ベトナムの電源構成は、水力発電や石炭火力への依存度が依然として高い。再生可能エネルギーの導入は進んでいるものの、太陽光や風力の発電量は天候に左右されやすく、安定供給には送電網の整備や蓄電技術の発展が不可欠である。こうした状況下でEVが大量に普及すれば、ピーク時の電力需要がさらに逼迫するリスクがある。

つまり、EVの普及は「石油依存からの脱却」という一面では有効であっても、電力供給体制が整わなければ、エネルギー安全保障上の新たなボトルネックを生み出す可能性があるのだ。

「産業横断的」な視点の重要性

タイン博士が強調するのは、EVを「自動車産業」という単一セクターの問題として捉えるのではなく、エネルギー政策、インフラ投資、環境政策、そして産業政策全体を横断する課題として認識すべきだという点である。

具体的には、EV普及に伴う電力需要増に対応するための発電所建設、送電網の高度化、充電インフラの整備、さらにはスマートグリッド(次世代送電網)の導入など、多岐にわたる投資と政策調整が求められる。また、EVに使用されるバッテリーの原材料調達やリサイクル体制の構築も、サプライチェーン全体の問題として検討する必要がある。

日本企業への示唆

この議論は、ベトナムに進出している日本企業にとっても無視できない論点を含んでいる。ベトナムの電力供給の不安定さは、製造拠点を置く日系企業にとって経営リスクに直結する。EVの急速な普及が電力需給をさらに逼迫させる可能性がある以上、自社工場のエネルギー確保策や、自家発電設備の導入といった対応を検討する必要性が高まるだろう。

一方で、EVの普及に伴うインフラ整備需要は、日本企業にとってビジネスチャンスでもある。送電技術、蓄電池技術、充電インフラ、再生可能エネルギー関連の技術を持つ日本企業にとって、ベトナム市場は大きな可能性を秘めている。日本政府が推進するアジアにおけるエネルギー・トランジション(脱炭素移行)支援の枠組みも、こうしたビジネス展開を後押しする要因となり得る。

まとめ

ヴォー・チー・タイン博士の提言は、EVブームに沸くベトナムに対し、冷静かつ構造的な視点を求めるものである。EVは確かに脱炭素社会への重要なピースだが、それだけではエネルギー安全保障の万能薬にはならない。電力供給体制の抜本的な強化と、産業横断的な政策設計があってこそ、EVの真の価値が発揮される。急成長を続けるベトナム経済が、このバランスをいかに取っていくか、今後も注視が必要である。

出典: VN Express

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