ベトナム中北部に位置するゲアン省(Nghệ An)が、2026年の年明けから驚異的な投資誘致実績を叩き出している。2026年2月27日に開催された省人民委員会の定例会議で報告された内容によると、同年1〜2月の2カ月間で新規・追加投資の総額が6兆4,341億ドンに達した。その中核を担うのが、総投資額5兆9,372億ドンという同省史上最大規模の「クインラップLNG火力発電所(Nhà máy nhiệt điện LNG Quỳnh Lập)」プロジェクトである。
ゲアン省とは──ホーチミンの故郷として知られる歴史ある省
ゲアン省は、ベトナムの国父とも称されるホー・チ・ミン主席の出身地として知られ、ベトナム人にとって特別な意味を持つ土地である。首都ハノイから南へ約300キロメートル、南シナ海(東海)に面した沿岸部と、ラオス国境に接する山岳地帯を併せ持つ広大な省だ。近年は、深水港を有するヴィン(Vinh)市やクアロー(Cửa Lò)ビーチを中心に、工業団地の整備や観光開発が進んでいる。
史上最大のLNG火力発電所プロジェクトが承認
今回最も注目を集めているのが、クインラップLNG火力発電所プロジェクトである。ゲアン省人民委員会は、同プロジェクトの投資方針を承認するとともに、投資家の選定も同時に決定した。総投資額は5兆9,372億ドンで、同省に誘致されたプロジェクトとしては過去最大規模となる。
このプロジェクトは、ベトナムが推進するエネルギー転換政策の一環として位置づけられており、LNG(液化天然ガス)を燃料とする火力発電所は、従来の石炭火力に比べてCO2排出量が大幅に少なく、環境負荷の低減が期待される。さらに、発電所の建設・稼働に伴い、関連する部品供給や保守サービスなどの裾野産業の集積も見込まれており、地域経済への波及効果は計り知れない。
鉱工業生産指数は前年同期比11.42%増
投資誘致だけでなく、ゲアン省の経済全体が好調な滑り出しを見せている。鉱工業生産指数(IIP)は前年同期比11.42%増を記録。建設用石材、加工石材、ヌックマム(魚醤)、包装資材、セメントなど、主力製品の生産が軒並み伸びており、製造業セクター全体の付加価値向上に寄与している。
小売・観光も二桁成長──テト需要が追い風に
サービス業も堅調だ。小売総額は2兆4,034億ドンで前年同期比15.62%増。観光客数は161万人を記録し、観光収入は1,969億ドン(前年同期比18%増)に達した。旧正月(テト)前後の市場監視や価格安定化対策も強化され、スーパーマーケットや商業施設、流通企業に対して需給バランスの確保が要請された。
財政面も健全──税収は前年同期比15.8%増
財政面でも明るい材料が並ぶ。国家予算収入は5,578億ドンで、年間計画の23.9%を達成し、前年同期比15.8%増となった。歳出は5,815億ドンで、収支のバランスは概ね良好と評価されている。
新規企業設立が68.2%増──起業マインドが活発化
投資誘致と並んで特筆すべきは、新規企業設立数の急増である。2026年1〜2月に同省内で新たに設立された企業は816社で、前年同期比68.2%増という大幅な伸びを示した。LNG発電所プロジェクトを契機とした関連ビジネスへの期待感や、省政府が進める規制緩和・行政手続きの簡素化が、起業家の背中を押しているものと見られる。
農林水産業も安定推移──春作の作付け面積は計画の9割を達成
農林水産業も安定した推移を見せている。春作の作付け面積は11万7,794ヘクタールで、年間計画の90.36%、前年同期比98.24%を達成。畜産業も成長基調を維持しており、水産物の総生産量は1万8,606トンに達した。また、2026年春の植樹祭が省内各地で一斉に開催され、環境保全への取り組みも進んでいる。
省主席が号令──「2026年の成長目標達成に全力を」
会議では、ヴォー・チョン・ハイ(Võ Trọng Hải)ゲアン省人民委員会主席が、各部局・各レベルの行政機関に対し、2026年の成長目標達成に向けた緊張感を持った業務遂行を求めた。副主席をリーダーとする各作業部会には、第1四半期の進捗状況を自主的に評価し、成長シナリオの確実な達成を図るよう指示が出された。
税収確保についても強い姿勢が示され、ブイ・タイン・アン(Bùi Thanh An)常任副主席が財政局、税務局、税関、各地方自治体を指揮し、ロードマップに沿った進捗管理を徹底するよう命じられた。
重点事業については、着工・完成の節目を厳守するよう各部局に要請。財政局は週次で各プロジェクトの進捗を報告する体制を敷くことになった。また、公共投資の執行加速に向け、省党常務委員会の指令第10号に基づき、建設関連の未払い債務処理にも取り組む方針だ。
さらに、財政局は2025年計画のうち2026年1月31日時点で未執行の資金の処理を検討し、2026〜2030年の公共投資計画の策定も進める。建設局には、ヴィン市やクアローの都市部における道路・公園の整備、浸水対策システムのアップグレード案の策定が急務として課された。
日本企業への示唆──エネルギー・インフラ分野に商機か
今回のゲアン省の動きは、日本企業にとっても注目に値する。ベトナムは2050年のカーボンニュートラル達成を宣言しており、LNG火力発電はその過渡期を支える重要な電源として位置づけられている。日本の総合商社やエンジニアリング企業、発電機器メーカーにとって、プロジェクトへの参画や関連ビジネスの受注機会が広がる可能性がある。
また、ゲアン省は労働力人口が豊富で人件費も比較的低く、深水港を通じた輸出入アクセスも良好であることから、製造業の進出先としても検討に値する。省政府が行政手続きの迅速化に力を入れている点も、日系企業にとってはプラス材料と言えるだろう。
出典: Vn Economy
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