地政学的リスクや貿易摩擦により世界経済が不安定化する中、ベトナムは依然として「世界経済地図の輝く星」としての地位を維持している。アジア開発銀行(ADB)、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)など主要国際機関は、2026年のベトナム経済について概ね楽観的な見通しを示した。しかし、ベトナム政府が掲げる「2桁成長(10%超)」という野心的な目標と、国際機関の予測との間には大きな開きがあり、構造改革と実行力が試される1年となりそうだ。
マクロ経済の強固な基盤が成長を下支え
ベトナム経済は2024〜2025年の回復期を経て、2026年に新たな5カ年計画(2026〜2030年)の初年度を迎える。政府は2045年までに高所得国入りを果たすため、「中所得国の罠」を脱却する突破口として2桁成長を目指している。
国際機関の予測は大きく2つのグループに分かれる。楽観派のUOB(シンガポール大手銀行)は7.5%、スタンダード・チャータード銀行は7.2%の成長を予測。UOBは半導体・再生可能エネルギー分野への外国直接投資(FDI)の急増を根拠に挙げ、2026年は大手テクノロジー企業の数十億ドル規模の生産ラインが商業稼働を開始する「転換点」になると分析している。スタンダード・チャータードは国内消費の回復とコロナ前の水準を超える国際観光客の復活に注目している。
一方、慎重派のADB、WB、OECDは6.0〜6.5%、IMFはさらに控えめな5.6%を予測。WBは、ベトナムの貿易依存度がGDP比200%に達する「過度な開放性」を指摘し、米国やEUの景気減速の影響を受けやすいと警告。さらに、2026年から本格施行されるEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)がベトナムの輸出品にコスト増圧力をかけると分析している。
予測値に差はあるものの、いずれの機関もベトナムの成長率が世界平均(2.9〜3.1%)の約2倍を維持すると見込んでおり、外的ショックへの耐性が高まっていることを示している。
「10%成長」への道のりに立ちはだかる3つの壁
国際機関の予測(6〜7%台)と政府目標(10%超)の間には約3〜4ポイントの開きがある。過去数十年間、記録的なFDI誘致や輸出拡大を達成しながらも、ベトナムはかつての中国や韓国のような「離陸期の2桁成長」を実現できていない。その要因として、国際機関は以下の3点を指摘する。
第一に、資本・労働集約型成長モデルの限界。IMFやHSBCは、ベトナムの成長が依然として投資規模の拡大と安価な労働力に依存し、効率性や技術革新を示す「全要素生産性(TFP)」の改善が遅れていると指摘。国内の中小企業はFDI企業との連携が弱く、世界最先端の半導体工場が立地しても国内付加価値は限定的にとどまっている。
第二に、ハード・ソフト両面のインフラボトルネック。南北高速道路は全線開通したものの、港湾・鉄道・倉庫などの物流網が最適化されておらず、物流コストは依然としてASEAN平均を上回る。ADBは特に電力供給の問題を重視しており、ハイテク産業の急増する電力需要に現在の発電能力の拡張ペースが追いついていないと警鐘を鳴らしている。
第三に、国内資本の停滞。FDIが活況を呈する一方、国内資本の流れは滞っている。社債市場は回復途上にあり、銀行融資は依然として不動産セクターに集中。国内民間企業の投資爆発による成長という、他国が成功したモデルとは対照的な状況が続いている。
制度改革が最大の成長余地
OECDは「ベトナムの資本・労働からの成長余地は枯渇しており、最大の余地は制度改革にある」と指摘。この見解はベトナム国内の有識者とも一致している。BIDV(ベトナム投資開発銀行)チーフエコノミストのカン・バン・ルック氏は、半導体・AI分野での「規制のサンドボックス(試験的規制緩和)」導入を提言。税制優遇だけでなく、行政手続きの簡素化、外国人専門家向けビザの柔軟化、政府調達を通じた国産技術製品の需要喚起などを求めている。
日本企業・投資家への示唆
ベトナムは依然としてASEAN域内で最も高い成長率を維持する見込みであり、製造拠点の多元化やサプライチェーン再編を進める日本企業にとって引き続き有望な投資先である。ただし、電力供給や物流インフラの制約、国内サプライヤーの育成不足といった課題は、進出企業の操業コストや事業拡張計画に影響を与える可能性がある。2026年に予定される制度改革の進展度合いが、中長期的な投資判断の重要な指標となるだろう。
出典:Vn Economy
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