【2026年1月】ベトナム経済は拡大維持も「成長の制約」が鮮明に──コスト上昇・企業撤退・貿易赤字の三重苦

Kinh tế Việt Nam tháng 1/2026: Mở rộng được duy trì, những ràng buộc tăng trưởng lộ diện

2026年の幕開けとなる1月、ベトナム経済は依然として拡大基調を維持しているものの、成長を阻む構造的な制約が次々と表面化している。グローバル経済の構造変動、関税戦争と保護主義の台頭、金融・通貨リスクの高まり、そしてAI分野を中心とした技術バブルの懸念——こうした外的環境の中で、ベトナム国内では生産コストの上昇、企業の市場撤退増加、貿易収支の赤字転落という三重の課題が顕在化している。

目次

製造業:拡大は継続、だがコスト圧力が急上昇

2026年1月の鉱工業生産指数(IIP)は前月比0.2%減となったものの、前年同月比では21.5%増という高い伸びを記録した。特に製造業は前月比0.7%増、前年同月比23.6%増と堅調だ。この高成長の主因は、受注の改善に加え、今年1月は前年同月より営業日数が多かったことが挙げられる。

製造業の先行指標である購買担当者景気指数(PMI)は52.5ポイントを記録。前月の53.0ポイントからは若干低下したものの、景気拡大・縮小の分岐点である50ポイントを上回っており、製造活動の拡大が継続していることを示している。1月のPMI低下は季節要因と、年末の加速局面後の技術的な調整によるものだ。特筆すべきは、新規受注が1月に急増しており、特に海外からの需要が改善を続けている点である。

しかし、PMIの内訳を詳しく見ると、原材料不足と国際市場での価格上昇により、投入コストが顕著に上昇していることがわかる。これは企業の生産コストに直接的な圧力をかけ、コストプッシュ型インフレのリスクを高めている。短期的には消費者物価への大きな影響は見られないものの、この状況が長期化すれば生産者物価指数の上昇を通じて購買力とインフレ期待に影響を及ぼす可能性がある。

この動向は、製造業におけるリスクが「需要不足」から「供給サイドのリスク」へと移行していることを示している。需要が回復する中で投入コストが上昇すれば、企業の利益率は圧縮され、中期的な生産拡大・投資判断に影響を与えることになる。

企業動向:耐久力が試される厳しい環境

2026年1月、全国で約2万4,200社の新規企業が設立された。1社あたりの登録資本金は平均約75億ドンで、前年同月比15.2%減少している。また、既存企業の増資額も前年同月比2.49%減となっており、投入コストの上昇と利益率の圧縮を背景に、企業が投資規模の拡大に慎重になっている様子がうかがえる。

一方、ポジティブな側面として、約2万4,500社が事業を再開し、1月に市場に参入した企業の総数は4万8,700社に達した。これは、特に一時的に市場から撤退していた企業が、受注改善の兆しを受けて復帰の機会を模索していることを示しており、ビジネスへの信頼感は依然として維持されていると言える。

しかし、全体像を見ると状況は厳しい。1月には約5万4,300社が期限付きの事業休止を届け出たほか、7,300社が解散手続き中、4,600社が解散を完了している。つまり、市場に参入した企業数は撤退企業数のわずか73.5%にとどまっており、特に中小企業にとって事業継続の圧力が非常に大きいことがわかる。

多くの企業が解散ではなく一時休止を選択しているのは、市場環境の好転を待つ「防御的姿勢」の表れである。生産拡大の勢いがあっても、その恩恵が投資拡大や資本増強という決断に結びつくほど強くないことを示している。

貿易:輸出鈍化で貿易赤字に転落

2026年1月の輸出入活動には注目すべき変化が見られた。輸出額は431.9億ドルで前月比2%減、一方で輸入額は449.7億ドルで前月比0.6%増となった。その結果、物品貿易収支は17.8億ドルの赤字(入超)となった。前年同月は31.7億ドルの黒字(出超)であったことから、大きな転換である。

1月の輸出減少は季節要因と年末の成長期後の調整によるものだが、より注目すべきは経済セクター間の輸出入構造の違いだ。外国直接投資(FDI)企業は16.2億ドルの出超を記録した一方、国内企業は34億ドルの入超となった。この二極化は、FDI企業が輸出の主役を担い、国内企業が原材料・部品・機械の輸入に大きく依存しているというベトナム経済の構造的特徴を改めて浮き彫りにしている。

国内セクターの入超は貿易収支に影響を与えるだけでなく、外部からのコストショックに対する経済の脆弱性を高めている。これはバリューチェーンへの参加能力と国内企業の内製化率に関わる中期的な課題である。

FDI:登録額は急減も、実行額は過去5年で最高を記録

2026年1月のFDI動向では、登録ベースと実行ベースで明確な乖離が見られた。新規登録、増資、外国投資家による出資・株式取得を含むFDI登録総額は25.8億ドルで、前年同月比40.6%減と大幅に落ち込んだ。新規FDIプロジェクト1件あたりの平均規模も427万ドルと、前年1月の457万ドルを下回り、新規投資判断における慎重姿勢が強まっている。

投入コストの上昇とサプライチェーンリスクの高まりを背景に、国境を越えた投資決定において「ゆっくりだが確実に」というトレンドが広がっている。

一方、明るい材料はFDI実行額にある。1月のFDI実行額は16.8億ドルで、前年同月比11.3%増となり、過去5年間の1月として最高額を記録した。これは、新規登録が減速する中でも、既存のFDIプロジェクトが積極的に進められていることを示している。

製造業は引き続きFDIの主要な投資先であり、1月の実行額の82.5%を占めた。これはベトナムが地域・グローバルの製造チェーンにおいて重要な位置を占めていることを裏付けており、多国籍企業がベトナムの製造能力、産業インフラ、サプライチェーン組織力を高く評価していることを反映している。

登録額の大幅減と実行額の増加という対照的な動きは、ベトナムへのFDIが「量から質」への転換期に入っていることを示唆している。新規プロジェクトの急拡大よりも、許可済みプロジェクトの着実な実行、投資効率の最適化、既存の優位性の活用に重点が移っている。これは中期的な安定という点ではポジティブなシグナルだが、FDI誘致政策に新たな要件を突きつけている。

政策の重点は、登録規模の拡大から、FDIの質と効率の向上、特に国内企業への波及効果の強化へとシフトする必要がある。高い実行率を維持するには安定した投資環境、適正なコスト、整備されたインフラが求められ、新規プロジェクトの誘致は技術力、付加価値、持続可能な発展という基準とより緊密に結びつける必要がある。

国内消費:選択的な回復、購買力の広がりは限定的

2026年1月の経済で注目すべきもう一つの点は、国内消費の動向である。小売売上高とサービス消費収入は6.3%増となったが、前年同月の6.5%増を下回った。この伸びは、家計の消費需要が改善し、消費者心理が安定しつつあることを示しているが、力強いブレイクスルーには至っていない。

消費構造を見ると、支出は日常生活に必要な商品・サービスに集中しており、家計の大きな支出は依然として慎重に検討されている。これはリスク回避の心理が根強いことと整合的である。国内消費を持続的な成長エンジンとするためには、労働市場、所得、社会保障政策からの追加的な支援が必要だ。

成長の制約が鮮明に:政策転換の必要性

2026年1月の経済全体像は、拡大基調を維持しながらも、成長の核心的制約が明確になり、それらが相互に絡み合い増幅し合う傾向を示している。原材料不足と投入価格の上昇による生産コスト圧力の急上昇が利益率を直接的に圧縮し、企業の生産拡大意欲を減退させている。企業動向は耐久力の限界を示しており、市場撤退企業数が参入企業数を大きく上回り続けていることから、ビジネス信頼感の本格的な回復には至っていない。

国際物品貿易が入超に転じ、FDI登録額が大幅に減少したことで、二つの重要な成長エンジンが弱体化している。これらの動向は、外延的成長(量的拡大)の余地が縮小していることを示しており、マクロ政策は回復支援から課題解決へと積極的に転換する必要がある。さもなければ、今後の四半期における成長鈍化リスクがより現実的なものとなるだろう。

求められる政策:コスト安定と内生的能力の強化

成長の制約が年初から明らかになった状況において、マクロ経済運営の重点は明確に定められるべきだ。「安定を守ることで成長の勢いを守り、コストを削減して企業を守り、内生的能力を強化して発展の原動力を再生する」——これはもはや政策の選択肢ではなく、2026年以降の成長軌道を維持するための必須要件である。

まず、マクロ経済の安定は短期的な拡大目標よりも優先されるべきだ。供給サイドからのコスト圧力とインフレリスクを踏まえると、金融緩和の余地は限られている。金利、信用、為替の運営は安定志向で一貫性を保ち、市場の期待を乱すような調整を避け、企業の耐久力が低下している中で資本コストを上昇させないことが求められる。

ベトナム政府が掲げる10%超の成長目標を達成するためには、こうした構造的課題への対応が急務であり、外需依存から内需主導型経済への転換、国内企業の競争力強化、サプライチェーンの内製化推進が今後の政策の鍵を握ることになるだろう。

出典: Vn Economy

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