シリコンバレーの越僑エンジニア90人超が結集──ベトナムが「頭脳還流」で狙う戦略技術の大転換

Kết nối và huy động hiệu quả nguồn tri thức của cộng đồng người Việt tại Silicon Valley (Hoa Kỳ)

ベトナム政府が、シリコンバレーに散らばる自国出身の頭脳を本格的に結集させる動きに出た。2026年3月14日(現地時間)、米カリフォルニア州で開催された座談会には、Google、Tesla、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校など米国を代表するテック企業・研究機関で活躍するベトナム人専門家90人以上が参集。AI、半導体、量子コンピューティングからドローン、宇宙技術に至るまで、幅広い戦略技術分野での米越協力モデルが議論された。

目次

シリコンバレーで開かれた異例の「知の結集」

今回の座談会「シリコンバレーにおけるベトナム・イノベーションネットワークと専門家の連携──戦略技術産業の発展に向けて」は、ベトナム国家イノベーションセンター(NIC)と在サンフランシスコ・ベトナム総領事館の共催で実施された。NICはベトナム財務省の傘下にあり、国家のイノベーション政策を推進する中核機関である。

このイベントは、2026年3月13日から17日にかけて米国で開催されている「グローバル・ビジネス・イノベーション・コネクション2026(GBIC)」の一環として位置づけられている。GBICはNICが主導する国際プログラムで、ベトナム企業と海外のイノベーション・エコシステムを橋渡しすることを目的としている。

参加者の顔ぶれは豪華だ。Googleの上級研究者として知られるレ・ヴィエット・クオック氏、Teslaのレ・ミン・トン氏、カリフォルニア大学バークレー校のグエン・ヴィエット・フン氏、AI Allianceのクリストファー・グエン氏など、米国テック業界の第一線で活躍するベトナム人エンジニア、科学者、起業家、投資家が一堂に会した。特にレ・ヴィエット・クオック氏は、ディープラーニング分野の先駆者の一人として世界的に知られる人物であり、その発言は大きな注目を集めた。

背景にある「決議57号」と国家戦略技術リスト

この座談会が開催された背景には、ベトナム共産党政治局が発出した「決議57号(57-NQ/TW)」がある。同決議は、科学技術・イノベーション・デジタルトランスフォーメーション(DX)を国家発展の根幹に据えることを明確に打ち出したもので、ベトナムの技術政策における最上位の指針文書とされる。

これに基づき、グエン・スアン・フック首相(当時)が署名した「決定1131号(1131/QĐ-TTg)」では、国家戦略技術および戦略技術製品のリストが具体的に定められた。AI、半導体チップ、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、量子技術、ブロックチェーン、5G/6G通信、ロボティクス・自動化、バイオテクノロジー、新エネルギー・新素材、サイバーセキュリティ、航空宇宙技術、無人航空機(UAV)など、まさに先端技術の全領域を網羅する野心的なリストである。

ベトナムはここ数年、サムスンやインテルなど外資系半導体メーカーの生産拠点として存在感を高めてきたが、「組み立て・製造」から「研究開発・設計」へとバリューチェーンを上流に移行させることが長年の課題であった。今回の座談会は、その課題を海外在住の自国人材の知見で突破しようという試みに他ならない。

NIC副局長が語る「内生的技術力」の重要性

NICのヴォー・スアン・ホアイ副局長は座談会で、「シリコンバレーのベトナム人専門家・知識人・起業家のネットワークを結集し活用することは、ベトナムの科学技術・イノベーション発展にとって特別に重要な意味を持つ」と強調した。

同氏はさらに、「海外在住ベトナム人コミュニティの知的資源を効果的に動員することこそが、国家の内生的技術力(ナンルック・コンゲー・ノイシン)を高め、戦略技術産業の発展を推進する鍵となる」と述べた。「内生的技術力」という表現は、外国技術への依存から脱却し、自国で技術を生み出し発展させる能力を意味しており、ベトナム政府の技術政策における中核的な概念となっている。

Google研究者レ・ヴィエット・クオック氏の「100人構想」

座談会で最も注目を集めたのは、Googleの上級研究者レ・ヴィエット・クオック氏の発言であった。同氏は「AIはベトナムが多くの重要な発展課題を解決し、戦略技術産業で飛躍するための機会を切り開いている」と述べたうえで、世界各地で活躍するベトナム系トップ技術者約100人をベトナムのイノベーション・エコシステムに参画させるプロジェクトへのコミットメントを表明した。

この「100人の技術人材プロジェクト」は、2026年10月に開催が予定されており、世界中に散らばるベトナム人テック人材を集結させる大規模な取り組みとなる見通しだ。レ・ヴィエット・クオック氏はGoogleにおけるAI研究の第一人者であり、深層学習のブレークスルーに貢献した人物として広く知られている。同氏のような世界的な影響力を持つ人物がプロジェクトの旗振り役を担うことで、実効性への期待が高まっている。

「イーロン・マスクやジェンスン・ファンが選ぶ国に」

座談会では、ベトナムをイーロン・マスク氏(Tesla/SpaceX CEO)やジェンスン・ファン氏(NVIDIA CEO)のようなテック界の巨人たちが「投資先として選ばざるを得ない国」にするための提案も行われた。ジェンスン・ファン氏は台湾系米国人だが、近年ベトナムへの関心を公言しており、NVIDIAはベトナムでのAI研究拠点設立を検討しているとされる。こうした文脈の中で、ベトナムが「単なる安価な製造拠点」ではなく「イノベーションの拠点」として認知されることが、参加者共通の目標として掲げられた。

NVIDIA、META、OpenAI、スタンフォードとの直接対話も

GBICプログラムの期間中、ベトナム側の代表団はシリコンバレーの主要企業・研究機関との直接会談も実施した。訪問先には、NVIDIA、META(旧Facebook)、OpenAI、半導体設計大手のMarvell、そしてスタンフォード大学が含まれている。AI、半導体、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、量子技術、ロボティクス、UAVなどの分野で、研究・教育・技術開発における具体的な協力機会が模索された。

ベトナム側からは、大手建材メーカーのヴィグラセラ(Viglacera)、ホーチミン市工科大学(バックコア)、不動産・観光大手のサングループ(Sun Group)、アズリッチファンド(Azurich)、ベトナム郵便(Vietnam Post)など、多様な業種の企業・大学のリーダーが参加しており、単なる技術交流にとどまらない、実ビジネスとの接続が意識されていたことがうかがえる。

22カ国・2,500人超のネットワーク

今回の座談会を支えるインフラとなっているのが、NICが2018年から運営する「ベトナム・イノベーション&専門家ネットワーク」である。同ネットワークは現在、22の国・地域に広がり、2,500人以上の会員を擁する。会員には、各国の主要産業で活躍する専門家、科学者、チーフエンジニア、チーフアーキテクトなどが含まれている。

NICは現在、各国に設置された10のイノベーションネットワークに加え、戦略技術産業の発展に特化した5つの専門ネットワークも運営しており、政治局の決議57号および決議68号(68-NQ/TW)に基づく国家的課題の解決に取り組んでいる。

在サンフランシスコ・ベトナム総領事館のレ・ドゥック・チュン副総領事も、「総領事館は、ベトナム・米国間の科学技術・イノベーション・ハイテク投資に関する連携活動を常に支援してきた」と述べ、両国の包括的戦略パートナーシップの枠組みの中で、新興技術分野での実質的な協力を推進していく姿勢を改めて示した。

日本企業・投資家への示唆

今回の動きは、日本企業にとっても無視できないシグナルを発している。ベトナムは日本にとって最大級の製造業の海外移転先であり、近年はIT・ソフトウェア開発のオフショア拠点としても存在感を増している。しかし、ベトナム政府がシリコンバレーの頭脳を自国に還流させ、AI・半導体・量子技術などの最先端分野で独自のエコシステムを構築しようとしていることは、ベトナムの産業構造が中長期的に大きく変貌する可能性を示唆している。

日本企業にとっては、ベトナムを「安価な労働力の供給地」として見る従来の視点から、「共同研究・共同開発のパートナー」へと認識を転換する契機となりうる。特に、NVIDIAやOpenAIといった米国テック大手がベトナムとの協力を模索している現状を考えれば、日本企業もベトナムの技術エコシステムへの早期の関与を検討する価値があるだろう。

ベトナム政府の「頭脳還流」戦略が実を結ぶかどうかは、今後の制度設計や投資環境の整備次第であるが、少なくともその野心と実行力は注視に値する。2026年10月に予定される「100人の技術人材プロジェクト」の成果が、次の試金石となるだろう。

出典: Vn Economy

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