ベトナムの首都ハノイを率いるグエン・ズイ・ゴック(Nguyễn Duy Ngọc)党書記が、2026年2月19日・20日(現地時間)の2日間にわたり米国ワシントンD.C.を訪問し、半導体、人工知能(AI)、戦略投資といった先端分野で米国の大手企業・大学・業界団体と精力的な協議を行った。ベトナム共産党政治局員であり、科学技術・イノベーション・デジタル変革に関する中央指導委員会の副委員長も務める同氏の訪米は、ベトナムが国を挙げて推進するハイテク産業育成戦略の一環として注目される。
ローゼン・パートナーズと観光・不動産から戦略分野へ拡大を協議
ゴック書記はまず、米投資会社ローゼン・パートナーズ(Rosen Partners)のダニエル・ローゼンCEOと会談した。同社は観光・娯楽分野でハノイへの投資関心を示しており、書記は大規模FDI(外国直接投資)の呼び込みと先進的な経営ノウハウの導入に期待を寄せた。
書記は、2026年初頭に開催されたベトナム共産党第14回大会で、党創立100周年(2030年)および建国100周年(2045年)を見据えた国家目標が掲げられたことを説明。科学技術とイノベーションを成長の核心に据える方針や、中央決議57号(57-NQ/TW)に基づくベンチャー投資エコシステムの構築、ハノイ・ホーチミン市周辺でのハイテク特区設置計画などを紹介した。
ハノイ市については、2025年のGRDP(域内総生産)成長率が8.16%に達し、国家歳入の約4分の1を占めることを強調。2026年以降は年11%の成長を目指すとし、「100年の視野に立った首都計画」「多層・多中心の都市空間開発」「周辺衛星都市との広域連携」という3本柱を掲げた。また、「文化遺産・独自性・創造性」を兼ね備えたスマート・グリーン大都市を目指すとして、ローゼン社に対し不動産・観光にとどまらず、ホアラック・ハイテクパークでの研究開発拠点設置など長期的な優先分野への進出検討を呼びかけた。
アリゾナ州立大学と半導体人材育成で連携強化
続いて書記は、全米有数の規模を誇るアリゾナ州立大学(ASU)の戦略技術イニシアチブ担当副学長ケビン・マクギニス氏と会談。2026年初頭に開催されたセミナー「半導体産業の未来を形づくる」での協力実績を踏まえ、ベトナムの主要都市とASUとの間で半導体分野の包括的な協力協定を締結するよう提案した。
具体的な協力内容としては、①半導体人材育成プログラムの共同開発、②米国半導体企業によるチップ設計・パッケージング・検査・先端材料の研究開発拠点への投資誘致、③大学・高等専門学校のカリキュラム作成支援と教員育成、④ダブルディグリー制度や共同指導プログラムの推進——が挙げられた。ハノイ市が進める「国際水準の博士1,000人育成プロジェクト」への協力も要請された。
書記は、ハノイ市とホーチミン市には大規模な大学群が存在し、「大学内に企業を置く」モデルによりキャンパス内にイノベーション拠点を形成できる可能性があると強調。ホアラック・ハイテクパークへの優先投資も呼びかけた。
Metaと長期戦略パートナーシップ構築へ——ベトナム語AIデータ整備も
米巨大IT企業メタ(Meta)のジョエル・カプラン国際対外担当社長との会談では、メタがベトナムで進めるデバイス製造や、科学技術省との戦略的覚書締結交渉を評価。今こそ「長期戦略的テクノロジーパートナー」へと関係を格上げすべき時期だと訴えた。
書記は中央決議57号を引用し、ベトナム政府が「管理されたリスクの下で新たなビジネスモデルの試行を許容する」姿勢であること、半導体チップやAIチップ、IoTチップが戦略技術リストに含まれることを説明。そのうえでメタに対し、国家規模のベトナム語データセット構築への協力を要請した。これはデジタル主権の確保とベトナム語AI競争力の向上を両立させる狙いがあり、2027年末までに大規模AIモデル向けデータセットを完成させる目標が示された。
さらに、①ベトナムの言語・文化・法律に適合したAI基盤モデルのファインチューニング支援、②AIリスク管理・安全性確保のノウハウ共有、③若者・労働者向けデジタル・AIスキル研修、④中小企業のEC発展支援、⑤フェイクニュース・ネット詐欺対策での連携——といった協力項目も提案された。
米半導体工業会(SIA)と政策・企業連携を協議
最後に書記は、米国半導体売上高の大部分と世界市場の相当シェアを占める企業群を代表する米半導体工業会(SIA)のジョン・ノイファー会長と会談した。書記はベトナム政府が「2030年までの半導体産業発展戦略(2050年ビジョン)」を策定し、5万人超のエンジニア育成、設計企業の拡大、パッケージング・検査能力の強化、さらには将来的なチップ製造能力の形成を目標に掲げていることを紹介した。
科学技術・イノベーション・デジタル変革中央指導委員会を代表して、書記はSIAに対し①半導体人材の研修・資格認定プログラムでの協力、②SIA会員企業とベトナムの大学との直接マッチング、③研究開発投資誘致に向けた法制度・政策整備へのアドバイス——を求めた。SIA側からも複数の提案があり、書記は「実質的かつ長期的な半導体・ハイテクエコシステムの構築に向け、米国パートナーと緊密に連携する用意がある」と表明した。
考察——ベトナムのハイテク外交と日本企業への示唆
今回の訪米は、ベトナムが米中対立の間隙を縫いながら、半導体・AIといった「戦略的技術」の誘致に本腰を入れていることを象徴する。特にハノイ市が11%という高い成長目標を掲げ、ホアラック・ハイテクパークを前面に押し出している点は注目に値する。日本企業にとっても、ベトナムを製造拠点としてだけでなく、研究開発や高度人材育成の協力先として再評価する契機となりうる。
出典: VnEconomy
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