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米大手暗号資産取引所Coinbase(コインベース)が、機関投資家や大口投資家──いわゆる「クジラ(cá mập)」──の間で、ビットコインをただ長期保有(ガチホ=「găm hàng」)するのではなく、積極的に利回りを生み出す運用手法へとシフトする潮流が加速していると指摘した。暗号資産の保有人口で世界トップクラスとされるベトナムにとっても、この動きは無視できないトレンドである。
「ガチホ」から「イールド追求」へ──何が変わったのか
これまで暗号資産、とりわけビットコインの投資戦略といえば、「買って持ち続ける(HODL/ガチホ)」が主流であった。価格の長期的な上昇を信じ、売買を繰り返さずにウォレットに寝かせておく手法である。しかしCoinbaseの最新レポートによれば、伝統的金融(TradFi)出身の大手機関投資家やファミリーオフィス、ヘッジファンドといった「金融のクジラ」たちが、ビットコインや暗号資産を単に保有するだけでなく、そこから定期的なインカム(利回り)を得るための戦略を積極的に模索し始めている。
具体的には、以下のような手法がトレンドとして浮上している。
- レンディング(貸付):保有するビットコインを第三者に貸し出し、利息を受け取る。
- カバードコール戦略:ビットコインのオプションを売却してプレミアム収入を得る、伝統的な株式市場でも広く使われる手法。
- ステーキング関連商品:イーサリアムなどプルーフ・オブ・ステーク(PoS)系の暗号資産ではステーキング報酬が得られるが、ビットコインでも類似のイールド商品が開発されつつある。
- DeFi(分散型金融)プロトコルの活用:スマートコントラクトを通じた流動性提供やイールドファーミング。
こうした動きの背景には、暗号資産市場の成熟化がある。2024年1月に米国でビットコイン現物ETF(上場投資信託)が承認されて以降、機関投資家の暗号資産への参入が一気に加速した。彼らは株式や債券と同様に、暗号資産からも「インカム」を求めるのが当然の発想であり、単なる値上がり益(キャピタルゲイン)だけでは満足しなくなっている。
ベトナム──世界有数の暗号資産大国の現在地
ベトナムは、ブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)が毎年発表する「暗号資産導入指数(Global Crypto Adoption Index)」で、過去数年にわたり常に上位にランクインしてきた。人口約1億人、平均年齢が若く、スマートフォン普及率が高いベトナムでは、個人投資家を中心に暗号資産の売買が活発に行われている。
ベトナム政府は暗号資産に対する法的枠組みの整備を進めている最中であり、現時点では暗号資産は「合法的な決済手段」としては認められていないものの、「資産」としての保有や取引自体は禁止されていない。2025年以降、政府はブロックチェーン技術の産業応用や暗号資産の課税制度についても具体的な検討を進めている。
こうした環境下で、Coinbaseが指摘する「イールド追求型」の運用トレンドがベトナムの投資家層にも波及する可能性は高い。特にベトナムでは銀行預金金利が近年低下傾向にあり、株式市場のボラティリティも高いことから、暗号資産を活用した新たな利回り獲得手段への関心が高まりやすい土壌がある。
機関投資家の参入がもたらす市場構造の変化
Coinbaseのレポートが示す重要なポイントは、暗号資産市場の参加者の「質」が変わりつつあるという点である。かつては個人のリテール投資家が主体であった市場に、リスク管理やポートフォリオ理論に基づいた運用を行う機関投資家が本格的に参入してきた。これにより、以下のような構造変化が起きている。
- ボラティリティの低下圧力:機関投資家はヘッジ戦略を駆使するため、市場の極端な価格変動が徐々に抑制される方向に向かう。
- デリバティブ市場の拡大:オプション、先物、仕組み商品といったデリバティブの取引量が急増しており、ビットコインの金融商品としての多層化が進んでいる。
- カストディ(保管)サービスの高度化:大口資産を安全に管理するための機関向けカストディソリューションの需要が急拡大している。
こうした変化は、暗号資産が「投機の道具」から「本格的な金融資産クラス」へと進化する過程そのものであり、伝統的な金融市場との融合が着実に進んでいることを意味する。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への間接的影響:暗号資産市場の成熟化とイールド商品の充実は、ベトナムの個人投資家の資金フローに影響を及ぼす可能性がある。暗号資産で安定的な利回りが得られるようになれば、ベトナム株式市場(VN-Index)から暗号資産への資金流出圧力が生まれる一方、逆に暗号資産で得た利益がベトナム株に還流するケースも考えられる。特にブロックチェーン関連事業を展開するベトナム企業や、フィンテック分野の上場銘柄には注目が集まる余地がある。
日本企業・ベトナム進出企業への示唆:ベトナムでフィンテック事業やデジタル決済サービスを展開する日系企業にとって、暗号資産のイールド商品に対するベトナム国内の需要動向は重要な市場情報となる。また、ベトナム政府が暗号資産の規制枠組みを明確化すれば、日系金融機関がベトナム市場で暗号資産関連サービスを提供する道が開ける可能性もある。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、ベトナムの金融市場全体の国際化を加速させるものである。暗号資産市場の制度整備が進むことは、ベトナムの金融インフラ全体の信頼性向上にも寄与し、格上げ後の海外機関投資家の資金流入を後押しする好材料となり得る。
ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ:ベトナムはデジタル経済の成長を国家戦略の柱に掲げており、ブロックチェーン技術や暗号資産はその重要な構成要素である。若年層の人口ボーナスとデジタルリテラシーの高さを武器に、ベトナムが東南アジアにおけるWeb3・暗号資産のハブとしてプレゼンスを高める可能性は十分にある。今回のCoinbaseレポートが示すグローバルなトレンドは、ベトナムの暗号資産エコシステムの発展を後押しする追い風と見るべきである。
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