ファム・ミン・チン首相が日本企業と直接対話──投資環境改善・半導体・水素エネルギーなど新領域での協力拡大を呼びかけ

Tăng cường đối thoại, thúc đẩy hợp tác Việt Nam – Nhật Bản trong giai đoạn mới

2025年3月21日、ベトナムのファム・ミン・チン首相は政府庁舎において日本企業との対話会を主催し、投資環境の継続的改善と、ハイテク・エネルギー・インフラ分野での協力拡大を強調した。日本側からは伊藤直樹駐ベトナム大使のほか、在ベトナム日本商工会議所(JCCH)をはじめとする主要な業界団体・大手企業の代表が出席。ベトナム側も各省庁・地方政府の幹部が顔を揃え、両国経済関係の深化を印象づける大規模な対話となった。

目次

日本企業のベトナムへの信頼は過去最高水準に

対話会では、ベトナム政府が進める行政改革の成果や、日本企業が抱える課題・要望について率直な意見交換が行われた。伊藤直樹大使は、2025年に入ってからすでに2回実施された首相と日本企業との対話が、多くの実務上の障害を迅速に解消してきたと高く評価。日本政府としてもベトナムの改革努力を支持する姿勢を示し、日本企業がベトナムの新たな成長モデルの形成に貢献することへの期待を表明した。

在ベトナム日本商工会議所の若林浩一会長は、日本の経済界におけるベトナムへの関心が引き続き高まっていると述べた。その背景として、ベトナムの経済成長率の高さに加え、政策の実行段階における意思決定のスピードが目に見えて改善されている点を挙げた。中東情勢の緊張やエネルギー価格の変動など世界経済の不確実性が増すなか、ベトナムの安定した投資環境と改革姿勢は際立った優位性として評価されている。

数字が裏付けるベトナム経済の存在感

対話会で示された報告によれば、2025年のベトナムのGDP規模は約5,140億ドルに達し、世界第32位、ASEAN域内では第4位に位置する見通しである。一人当たり国民所得は約5,000ドルに到達した。外国直接投資(FDI)の累計受入額は約5,300億ドルに上り、ベトナムは世界のFDI誘致上位15カ国に名を連ね続けている。2025年単年では、登録ベースで384億ドル超、実行ベースで276億ドル超と、いずれも過去5年間で最高を記録した。

貿易面では、2025年の輸出入総額が約9,300億ドルに達した。ベトナムはこれまでに60を超える国・地域と17の自由貿易協定(FTA)を締結しており、グローバルなサプライチェーンの結節点としての地位を着実に固めている。世界銀行が2025年に公表した「B-Ready(ビジネス環境)ランキング」では、ベトナムはビジネス環境が良好な上位20%の経済体に分類された。さらに、2025年第4四半期のビジネス信頼感指数は80ポイントと7年間で最高を記録し、87%の企業がベトナムを投資先として他社に推薦する意向を示している。

日本企業に絞った調査結果も注目に値する。国際協力銀行(JBIC)の調査ではベトナムが今後3年間の事業拡大先として世界第3位に選ばれ、日本貿易振興機構(JETRO)の調査では在ベトナム日本企業の67.5%が2025年に黒字を見込み、56.9%が事業拡大を計画していると回答した。

日越経済関係の全体像──ODA・投資・貿易・人的交流

日越経済関係の厚みは多層的である。日本はベトナムに対する最大の二国間ODA供与国であり、累計で200億ドル超の円借款、約7億5,000万ドルの無償資金協力、約13億4,000万ドルの技術協力を実施してきた。ベトナム国内には5,600件を超える日本の投資プロジェクトが存在し、登録投資総額は794億ドルに達している。

2025年の二国間貿易総額は514億3,000万ドル超で、前年比11.28%の増加となった。内訳をみると、ベトナムから日本への輸出が267億7,000万ドル(同8.77%増)、日本からベトナムへの輸入が246億8,000万ドル(同14.13%増)で、ベトナムは20億9,000万ドルの貿易黒字を維持している。

人的交流の面でも関係は急拡大している。現在、日本国内で生活・就労するベトナム人は60万人を超え、過去10年間で8倍に増加した。2025年だけでも6万4,600人以上のベトナム人労働者が新たに日本へ渡っている。日本の深刻な人手不足を背景に、ベトナム人材への需要は今後も高い水準で推移することが見込まれる。

日本企業からの主な提案・要望

対話会において、日本企業側からはいくつかの具体的な提案がなされた。まず、日本の先端技術とベトナムの高度人材とのマッチング促進が挙げられた。次に、グリーン交通への転換推進、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)の枠組みを活用したエネルギー分野の資金動員、行政手続きの継続的簡素化、そして投資上の障害除去や交通インフラプロジェクトの円滑な実施といったテーマが議論された。

AZECは日本が主導するアジア地域の脱炭素化イニシアティブであり、ベトナムはその主要なパートナー国の一つに位置づけられている。水素やアンモニアなど新エネルギーの実装に向けた資金調達や技術移転において、日越間のAZEC協力は今後ますます重要性を増すとみられる。

チン首相が示した5つの協力方針

ファム・ミン・チン首相は対話会の結びにあたり、ベトナムと日本の「包括的戦略パートナーシップ」が引き続き良好に発展しており、経済・貿易・投資分野がその中核であり最も輝かしい柱であると評価した。日本はベトナムにとってODAおよび労働者受入で第1位、投資で第3位、貿易・観光で第4位の重要パートナーである。

そのうえで、首相は今後の協力に向けた5つの方針を明確に打ち出した。

第一に、日本企業の経験・資金力・信用力を活用し、投資移転の受け皿としてのベトナムの競争力強化、AZEC等を通じたグリーンファイナンスの呼び込み、科学技術・イノベーション投資の拡大、そしてハノイ都市鉄道2号線などの重要インフラ事業へのODA活用を推進する。ハノイ都市鉄道2号線は日本の支援で計画が進む大型プロジェクトであり、急速に拡大するハノイの都市交通問題解決の切り札として期待されている。

第二に、質・効率・技術・環境保護を重視した投資を優先的に誘致する。具体的な対象分野として、グリーン経済、デジタル経済、循環経済、知識経済、科学技術・イノベーション、電子部品、電気自動車(EV)、半導体製造、水素などの新エネルギー、再生可能エネルギー、金融センター・グリーンファイナンス、バイオテクノロジー、医療、ハイテク農業が列挙された。いずれも日本企業が強みを持つ分野であり、ベトナム側の誘致意欲の高さがうかがえる。

第三に、サプライチェーンの強靱化、裾野産業の発展、高度技能労働力の育成における協力強化を求めた。両国の利益に資する形で、多様性・透明性・持続可能性を備えた生産体制の構築を目指すとしている。

第四に、ハイテク分野を中心とした重点協力プロジェクトの迅速な実施と、長期にわたり懸案となっている問題の抜本的解決を要請した。とりわけ、ギソン(Nghi Sơn)製油所の再構築と原油調達先の多角化が具体的に言及された。ギソン製油所は日本の出光興産やクウェートの国営石油会社が出資する大型プロジェクトだが、採算性や運営上の問題が長年指摘されており、ベトナム側としても早期の正常化を強く望んでいる。

第五に、ベトナム企業がグローバルサプライチェーンにより深く実質的に参画できるよう、日本の投資家に引き続き支援を求めた。

「3つの保証」と「3つの共に」──ベトナム政府のコミットメント

チン首相は、ベトナム政府として「3つの保証」を堅持すると明言した。すなわち、①外国投資セクターの役割の保証、②投資家の合法的権利・利益の保証、③政治・社会の安定と投資誘致政策の安定の保証である。加えて、企業との関係においては「3つの共に」──共に傾聴し、共に分かち合い、共に発展する──を実践すると約束した。

最後に首相は、日本企業に対しベトナムへの信頼を維持し、関係を深め、投資を拡大するよう呼びかけ、それが日越包括的戦略パートナーシップの推進ひいてはアジアと世界の平和・繁栄に貢献するものであると強調して、対話会を締めくくった。

日本企業への示唆──「選ばれる投資先」としてのベトナムの進化

今回の対話会は、ベトナムが単なる低コスト生産拠点から、半導体・水素エネルギー・EV・グリーンファイナンスといった次世代産業の集積地へと変貌を遂げようとしている姿を鮮明に映し出している。首相自らが具体的な分野名を列挙し、日本企業の技術と資金を求める姿勢は、これまで以上に踏み込んだものといえる。

米中対立の長期化やサプライチェーン再編の加速を背景に、「チャイナ・プラスワン」の最有力候補としてのベトナムの存在感は年々増している。JBICやJETROの調査が示すように、日本企業のベトナムに対する事業拡大意欲は依然として極めて旺盛だ。一方で、ギソン製油所問題に象徴されるように、大型案件における長期的な課題解決には引き続き注視が必要である。行政手続きの簡素化や制度の透明性向上がどこまで実効的に進むかが、今後の日本企業の投資判断を大きく左右するだろう。

60万人を超える在日ベトナム人コミュニティの存在も、両国関係の裾野を広げる重要な要素である。経済だけでなく、人と人とのつながりが厚みを増すなかで、日越関係は名実ともに「包括的戦略パートナーシップ」の新たなステージに入りつつある。

出典: Vn Economy

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