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ベトナム首相がバイク(モーターバイクおよびモペッド)の排ガス検査制度のロードマップを正式に公布した。2027年7月1日からハノイとホーチミン市で開始され、他の中央直轄市は2028年7月、その他の省は2030年7月と段階的に全国へ拡大する。約7,000万台ともいわれるベトナムの二輪車に対する初の本格的排ガス規制であり、都市部の大気環境と二輪車関連産業に大きな変革をもたらす可能性がある。
制度の全体像:製造年ごとに4段階の排出基準
農業・環境省の通達第92/2025号に基づく国家技術基準では、排ガス中の炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)の許容上限値を4段階(レベル1〜4)に分けて設定している。バイクの製造・輸入年によって適用レベルが異なる仕組みである。
モーターバイク(排気量50cc超)の場合:
- 2008年より前に製造・輸入 → レベル1
- 2008年〜2016年末に製造・輸入 → レベル2
- 2017年〜2026年6月30日に製造・輸入 → レベル3
- 2026年7月1日以降に製造・輸入 → レベル4
モペッド(排気量50cc以下)の場合:
- 2016年より前に製造・輸入 → レベル1
- 2017年〜2027年6月30日に製造・輸入 → レベル2
- 2027年7月1日以降に製造・輸入 → レベル4
ハノイ・ホーチミン市には追加の厳格規定
特に注目すべきは、2028年1月1日以降、ハノイおよびホーチミン市の域内を走行するすべてのバイク・モペッドはレベル2以上の排ガス基準を満たさなければならないという規定である。これは事実上、2008年以前製造のモーターバイクや2016年以前製造のモペッドがレベル1にしか該当しない場合、修理・改良して基準を満たすか、廃車にするかの選択を迫られることを意味する。
さらに、ハノイについては首都法(Luật Thủ đô)に基づく「低排出ゾーン(vùng phát thải thấp)」が設定される予定であり、ハノイ市人民評議会の決議に従ったより厳しい排ガス基準が適用される。欧州の都市で導入が進むLEZ(Low Emission Zone)に類似した制度がベトナムでも本格化する形である。
自動車にも先行して排ガス規制を適用済み
バイクに先立ち、首相は2025年11月28日付の決定第43/2025号で自動車の排ガス検査ロードマップをすでに公布している。概要は以下の通りである。
- 1999年以前製造 → レベル1(Euro 1相当)、2026年3月1日施行
- 1999年〜2016年製造 → レベル2(Euro 2相当)
- 2017年〜2021年製造 → レベル3(Euro 3相当)。ただしハノイ・ホーチミン市では2027年1月1日からレベル4(Euro 4相当)を適用
- 2022年以降製造 → レベル4(Euro 4相当)施行時から適用、2032年1月1日からレベル5(Euro 5相当)。ハノイ・ホーチミン市では2028年1月1日からレベル5を前倒し適用
- 2029年1月1日以降、ハノイ・ホーチミン市ではすべての自動車がレベル2以上必須
自動車・二輪車を合わせた包括的な排ガス規制体系が、ベトナムで急速に整備されつつある状況である。
背景:深刻化する大気汚染と国際的圧力
ベトナム、とりわけハノイの大気汚染は近年深刻化しており、IQAirの世界大気汚染ランキングでハノイはワースト上位に頻繁にランクインしている。二輪車からの排ガスは都市部のPM2.5やCO濃度を押し上げる主要因の一つとされ、政府は2050年までのカーボンニュートラル目標(COP26での公約)達成に向けて交通分野の排出削減を急いでいる。
ベトナム全土で登録されている二輪車は約7,300万台に上り、人口比で見ても世界有数の「バイク大国」である。老朽化した車両が排ガス基準を満たせず廃車となれば、新車への買い替え需要が大量に発生する可能性がある。
投資家・ビジネス視点の考察
1. 二輪車メーカーへの追い風:ホンダベトナム(Honda Vietnam)はベトナム二輪車市場で約8割のシェアを持つ圧倒的存在である。排ガス基準を満たせない古いバイクの廃車と新車買い替えサイクルが加速すれば、同社をはじめヤマハ、ピアジオ、さらにはベトナム地場のビンファスト(VinFast、ティッカー:VFS)の電動バイク事業にも恩恵が及ぶ。ビンファストの電動二輪車は排ガスゼロのため、規制強化の流れの中で競争優位性が高まる。
2. 検査関連ビジネスの拡大:全国7,300万台の二輪車を定期的に検査するインフラ整備が必要となる。検査機器メーカーや検査ステーション運営企業にとって大きな市場機会が生まれる。自動車検査で実績を持つベトナム車両登録局(Cục Đăng kiểm)傘下の検査センターの拡充や、民間参入の可能性も注視すべきである。
3. 日本企業への影響:ホンダ、ヤマハといった日系メーカーはベトナムを重要な生産・輸出拠点としている。排ガス規制の段階的強化は、より高性能なエンジンや燃料噴射(FI)システム搭載車へのシフトを促し、部品サプライヤーを含むサプライチェーン全体に影響を与える。
4. FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場への格上げにおいて、ベトナム政府のガバナンス強化や制度整備の姿勢は評価要因の一つとなる。環境規制の国際標準への接近は、ESG投資の観点からもベトナム市場の魅力を高める要素である。
5. 社会的インパクト:一方で、古いバイクを日常の足とする低所得層への経済的負担は無視できない。政府が買い替え補助金や廃車インセンティブを導入するかどうかが、制度の実効性と社会的受容性を左右する重要なポイントとなる。
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出典: 元記事












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