ベトナムが国際金融センター構想の一環として、ブロックチェーンおよび暗号資産分野における「規制サンドボックス」制度の導入に向けて本格的に動き出した。2026年2月2日、ホーチミン市経済大学(UEH)が開催した学術シンポジウムで、専門家らは同市に建設が進む「ベトナム国際金融センター(VIFC-HCMC)」における実験的規制枠組みの詳細な設計案を提示した。
国会決議に基づく国際金融センター構想が背景
今回のシンポジウムは、2025年に国会が採択した「第222/2025/QH15号決議」に基づき、ホーチミン市に国際金融センターを建設するという国家プロジェクトの一環として開催されたものである。ベトナム政府は、金融イノベーションの推進と近代的な金融市場の育成を通じて、アジア・太平洋地域における同国の金融ハブとしての地位向上を目指している。
ホーチミン市は、ベトナム南部の経済中心地として約1,000万人の人口を抱え、国内GDPの約2割を占める経済都市である。シンガポールや香港といったアジアの主要金融センターと肩を並べることを目標に、この国際金融センター構想は野心的な計画として注目されている。
「法律の空白地帯」ではない──サンドボックスの本質
シンポジウムで専門家らが強調したのは、サンドボックスが「法の及ばない地帯」ではないという点である。サンドボックスとは、時間・空間・参加者を限定した「管理された法的実験環境」であり、新しい金融モデルを規制当局の厳格な監督下で試験運用するための制度的枠組みを指す。
参加企業は、現行の技術実態に適合しない一部規制について一時的な免除を受けられる一方、発生するリスクに対しては全面的な責任を負う。つまり、規制緩和ではなく「規制の段階的適用」という位置づけである。
95カ国以上の先行事例を分析──シンガポール・ドバイ・香港・英国がモデル
UEHの研究チームは、世界95以上の経済圏で導入されているサンドボックス制度を分析し、特にシンガポール、ドバイ(UAE)、香港(中国)、英国の事例を重点的に参照している。これらの金融センターに共通する成功要因として、以下の4点が挙げられた。
第一に、柔軟な法的枠組み。第二に、能動的な監督体制。第三に、明確な移行ロードマップ。第四に、システミックリスク(金融システム全体に波及するリスク)の厳格な制限である。
VIFC-HCMCの副執行委員長を務めるグエン・フー・フアン准教授は、「VIFCは政策・技術の実験室として位置づけられ、段階的に東南アジア・アジア全域のフィンテックハブへと発展することを目指す。サンドボックスはVIFCの発展にとって極めて重要な役割を担う」と述べた。
3段階のロードマップと初年度5〜8件のパイロット事業
専門家らは、VIFCにおけるサンドボックス導入を3段階で進めることを提案している。第1段階は、サンドボックス事務局の設立と申請受付インフラの整備。第2段階は、先行企業群による管理下での実証実験。第3段階は、サンドボックスの正式な規制システムへの統合である。
初年度には、P2P(個人間)融資、電子ウォレット、不動産トークン化、カーボンクレジット(炭素排出権)のトークン化といった分野から5〜8件のプロジェクトが試験対象として選定される見込みである。
リスク階層化と3層KPIによる監督体制
提案の注目点の一つが、金融商品ごとのリスク階層化である。実際の資金や資産に直接関わる「高リスク」、監視ツールや内部試験が中心の「中・低リスク」に分類し、それぞれに異なる条件、制限、監督基準を適用する。
また、パフォーマンス(業績)、リスク、顧客満足度という3層構造のKPI(重要業績評価指標)を組み込み、規制当局が試験プロセスを詳細に追跡できる仕組みも導入される。
緩和できる規制と絶対遵守の義務を明確に区分
UEH研究チームの代表を務めるト・コン・グエン・バオ博士は、「サンドボックスは市場と国家管理の交差点に設計されるべきであり、関係者が対話を通じて適切な『許容閾値』を設定し、政策の一貫性と市場との効果的な連携を図る。これにより安全な実験空間が形成され、制度上のボトルネックを適時に解消できる」と説明した。
専門家らは、緩和可能な規制と絶対遵守義務の明確な区分が透明性と安全性確保の鍵であると強調。個人情報保護、マネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)、技術セキュリティ、職業倫理に関する要件は、いかなる場合も厳格に遵守されなければならないとした。
日本企業・投資家への示唆
ベトナムは近年、東南アジアにおける製造拠点としてだけでなく、デジタル経済・フィンテック分野でも急速に存在感を高めている。今回のサンドボックス構想が実現すれば、日本のフィンテック企業やブロックチェーン関連スタートアップにとって、ベトナム市場への参入障壁が低下する可能性がある。
一方で、AML/CFT規制の厳格な適用は、コンプライアンス体制の整備が求められることを意味する。日本企業がVIFCのサンドボックスへの参加を検討する場合、現地規制当局との緊密な連携と、国際基準に準拠した内部統制の構築が不可欠となるだろう。
ベトナムがシンガポールや香港に並ぶアジアの金融ハブを目指す動きは、同国の経済発展の新たな局面を示すものであり、今後の制度整備の進展が注目される。
出典: Vn Economy
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