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ベトナム、伝統医学を公的医療保険の給付対象に統合へ—トー・ラム国家主席が保健省に指示

Nghiên cứu tích hợp bài thuốc cổ truyền vào danh mục BHYT chi trả
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ベトナムのトー・ラム(Tô Lâm)党書記長兼国家主席が、伝統医学(東洋医学)の処方や技術的サービスを公的医療保険(BHYT=Bảo hiểm Y tế)の包括的給付リストに統合するよう保健省に研究を指示した。国民皆保険制度の拡充を目指すベトナムにとって、医療費負担の軽減とヘルスケア産業の構造変革につながる重要な政策シグナルである。

目次

トー・ラム国家主席の指示内容

今回明らかになったのは、トー・ラム党書記長兼国家主席が保健省(Bộ Y tế)に対し、ベトナムで「正統」と位置づけられる伝統医学の処方(bài thuốc cổ truyền chính thống)および関連する医療技術サービスを、BHYT(ベトナム公的医療保険)の給付対象に全面的に組み込むための調査・研究を進めるよう指示したという内容である。

ベトナムの公的医療保険制度は、加入率がすでに90%を超えるとされ、国民皆保険に近い水準にある。しかし、給付対象となる医療サービスや医薬品のリストには制限があり、特に伝統医学分野のカバー範囲は限定的であった。今回の指示は、党・国家のトップレベルから発せられたものであり、政策的な優先度の高さを示している。

ベトナムにおける伝統医学の位置づけ

ベトナムの伝統医学は「東医学(Y học cổ truyền)」と呼ばれ、中国伝統医学の影響を強く受けつつも、独自の発展を遂げてきた。漢方薬に類似した生薬処方、鍼灸、吸い玉療法などが広く行われており、特に農村部では西洋医学へのアクセスが限られる中、伝統的な治療法が日常的に利用されている。

ベトナム政府はこれまでも伝統医学の振興政策を掲げてきた。各省に伝統医学病院が設置されているほか、ハノイやホーチミン市には伝統医学の研究・教育を担う専門機関がある。しかし、保険給付の対象としては西洋医学が中心であり、伝統医学の処方を保険で受けられるケースは一部に限られていた。この「制度上のギャップ」を埋めようというのが、今回の指示の本質である。

政策の背景にある医療費問題と高齢化

ベトナムは急速な経済成長の一方で、医療費の増大という課題に直面している。都市部を中心に生活習慣病が増加し、医療サービスへの需要は年々拡大している。また、ベトナムは東南アジアでも比較的早いペースで高齢化が進んでおり、2035年ごろには「高齢社会」に突入するとの予測もある。

こうした中、比較的コストの低い伝統医学を保険給付に組み込むことは、医療費全体の効率化につながる可能性がある。慢性疾患の管理やリハビリテーション、予防医学的なアプローチにおいて、伝統医学が一定の役割を果たせるとの見方は、WHO(世界保健機関)も支持している。WHOは2019年に国際疾病分類(ICD-11)に伝統医学の章を初めて組み込んでおり、世界的にもこの分野への関心は高まっている。

制度設計上の課題

もっとも、伝統医学の処方を保険給付に統合するには、いくつかの重要なハードルがある。第一に、「正統な」伝統医学処方の定義と標準化である。エビデンスに基づく有効性・安全性の評価基準をどう設けるかは、国際的にも議論が続くテーマである。第二に、保険基金への財政的影響の試算が必要となる。給付範囲が拡大すれば、当然ながら保険支出の増加が見込まれるため、持続可能な制度設計が求められる。

第三に、伝統医学の施術者や薬剤の品質管理体制の整備も不可欠である。ベトナムでは、正規の資格を持たない施術者による治療や、品質が不安定な生薬が流通するケースも報告されており、保険適用の前提として規制の強化が必要となるだろう。

投資家・ビジネス視点の考察

今回のニュースは、ベトナムのヘルスケアセクターに中長期的な影響を及ぼす可能性がある。以下の観点から注目したい。

①ベトナム製薬・生薬関連企業への追い風:伝統医学処方が保険給付に組み込まれれば、関連する生薬・漢方薬メーカーの需要拡大が見込まれる。ベトナム株式市場に上場する製薬企業の中には、伝統医学関連製品を手掛ける企業もあり(例:TRA=トラファコ〈Traphaco〉など)、これらの銘柄への関心が高まる可能性がある。TraphacoはベトナムHOSE(ホーチミン証券取引所)上場の大手製薬企業で、伝統医学に基づく製品ラインナップに強みを持つ。

②日本企業との関連:日本は漢方医学の制度化において世界的にも先進的な立場にある。日本の医療用漢方製剤は健康保険の適用対象であり、そのノウハウはベトナムの制度設計において参考にされる可能性が高い。ツムラや栄太郎といった日本の漢方メーカー、あるいは医療制度コンサルティング企業にとって、ベトナム市場への参入・協力機会が広がる可能性がある。

③ヘルスケアセクターの底上げとFTSE格上げへの間接的効果:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに直接関係するテーマではないが、ベトナムの社会保障制度の整備・拡充は、同国の「制度的信頼性」を高める要素の一つである。外国人投資家がベトナム市場を評価する際、こうした制度面の進展はポジティブな材料となり得る。

④医療保険基金(VSS)の支出構造への影響:保険給付範囲の拡大は、短期的にはベトナム社会保険(VSS=Vietnam Social Security)の支出増を意味する。ただし、伝統医学が高額な西洋医学の一部を代替する形で機能すれば、長期的にはコスト最適化に寄与する可能性もある。この点は、ベトナムの保険・金融セクター全体にとって注視すべきテーマである。

総じて、今回の動きはベトナム政府が「国民の健康と医療費負担」という社会課題に対し、伝統文化の資産を活用して取り組もうとする姿勢を明確にしたものである。政策の具体化にはまだ時間がかかるとみられるが、ヘルスケア関連銘柄への投資を検討する際には、中長期的なテーマとして念頭に置いておきたい。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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