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ベトナム政府が暗号資産(仮想通貨を含む「コード化資産=tài sản mã hóa」)市場の制度設計を急ピッチで進めている。2026年3月に公布された財務省通達第15号(Thông tư số 15/2026/TT-BTC)は、試験運用に参加する事業者に対する会計処理の原則を定めたもので、市場全体の透明性確保に向けた重要な「土台」となる。試験運用ライセンスを取得できる企業はわずか最大5社——この厳しい枠をめぐる動きと、法整備の最新状況を詳しく解説する。
政府決議05号——試験運用は「最大5社」の厳格設計
ベトナム政府は2025年9月、暗号資産サービスの試験的運用を認める政府決議第05号(Nghị quyết số 05/2025/NQ-CP)を公布した。同決議の第17条は、試験運用(サンドボックス)に参加できる暗号資産サービス提供事業者の数を「最大5社」と明確に制限している。
この極めて厳格な上限設定により、関連する動向はすべて市場の注目を集めることになった。どの企業が法人登記を行ったのか、どの企業がライセンス申請書類を提出したのか、さらには資本要件を満たすための資金調達の状況まで、公式報道であれ市場の噂であれ、あらゆる情報が世間の関心の的となっている。
申請7社のうち5社が要件充足と評価
報道によれば、ライセンス申請書類を提出した企業は計7社。このうち、書類審査を経て要件を満たすと評価されたのは以下の5社である。
- VIXコード化資産取引所株式会社(Công ty CP Sàn giao dịch Tài sản mã hóa VIX)——証券大手VIXグループとの関連が注目される名称である
- ロクファット・ベトナム(Lộc Phát Việt Nam)
- ベトナム・ティンヴオン(Việt Nam Thịnh Vượng)——社名は「ベトナム繁栄」の意
- テクコム(Techcom)——大手銀行テクコムバンク(Techcombank)との資本関係の有無が市場の関心事となっている
- ベトナム・デジタル資産(Tài sản số Việt Nam)
最終的なライセンス付与の判断はまだ下されていないが、公安省(Bộ Công an)およびベトナム国家銀行(Ngân hàng Nhà nước=中央銀行)の審査・承認を待つ段階にある。この待機期間を利用して、5社は財務体制の整備を進め、正式なライセンス交付後に即座に事業を開始できるよう準備を加速させている。
通達15号の意義——既存の会計制度に暗号資産を組み込む「実務的アプローチ」
2026年3月に財務省(Bộ Tài chính=BTC)が公布した通達第15号(Thông tư số 15/2026/TT-BTC)は、暗号資産市場の試験運用に参加する事業者に適用される会計処理の基本原則を規定したものである。
専門家の評価によれば、ベトナム当局は暗号資産専用の新たな会計制度を一から構築するのではなく、既存の会計システムの中に暗号資産を位置づけるアプローチを選択した。この判断は極めて実務的かつ合理的である。暗号資産というリスクの高い新種の資産を、すでに運用実績のある枠組みに素早く取り込むことで、「計測可能かつ監視可能」な状態を短期間で実現できるからだ。
暗号資産市場は、匿名性が高い、取引主体の特定が困難、国境を越えた送金が容易といった特性を持つ。これらの特性はユーザーにとっての利便性であると同時に、マネーロンダリング(資金洗浄)、脱税、テロ資金供与といった違法行為の「入口」にもなり得る。こうしたリスクは、ベトナムに限らず世界各国の規制当局にとって頭の痛い問題であり続けている。
通達15号がこうした課題のすべてを解決するわけではない。しかし、試験運用に参加するライセンス事業者の財務活動を標準化・透明化するための「基盤」として機能することは間違いない。ライセンス事業者の財務が透明であること——これこそが、国全体の暗号資産市場の持続的発展にとっての「根幹」であると、原文記事は強調している。
ベトナムの暗号資産規制——世界的潮流の中での立ち位置
ベトナムは、暗号資産の個人保有率が世界でもトップクラスに高い国として知られている。チェイナリシス(Chainalysis)が毎年発表する「暗号資産普及指数」で、ベトナムは常に上位にランクインしてきた。しかし、これまで法的な枠組みがほぼ不在だったことが、投資家保護や課税の面で大きな課題となっていた。
2025年の政府決議05号、そして2026年の通達15号という一連の法整備は、ベトナムがようやく暗号資産を「放置」から「管理下に置く」フェーズへ移行したことを示している。最大5社というサンドボックスの枠は、一気に市場を開放するのではなく、管理可能な規模で実証を行い、問題点を洗い出した上で段階的に拡大するという慎重な戦略の表れだ。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:今回の暗号資産市場整備は、ベトナムの金融市場全体の制度的成熟を示すシグナルとして受け止められるだろう。証券会社やフィンテック関連企業の中に、暗号資産サービスへの参入を企図する動きが出てくる可能性がある。特に「VIX」の名前を冠した取引所が申請リストに含まれている点は、証券セクターへの波及を感じさせる。テクコムバンク(TCB)との関連がもし確認されれば、同行の株価にもポジティブな材料となり得る。
日本企業・ベトナム進出企業への影響:日本の暗号資産交換業者やブロックチェーン関連企業にとって、ベトナム市場は巨大な潜在需要を持つフロンティアである。法整備が進むことで、日越間の技術協力やライセンス提携の道が開ける可能性がある。また、ベトナムに進出している日本企業にとっては、デジタル決済・デジタル資産に関する現地法規の動向を把握しておくことが、コンプライアンス上ますます重要になる。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、ベトナムの資本市場全体の制度的信頼性が問われる審査でもある。暗号資産市場の法整備は直接的な評価項目ではないものの、金融セクター全体のガバナンス強化という文脈で、格上げ審査に間接的なプラス効果をもたらす可能性がある。規制の透明性向上は、海外機関投資家がベトナム市場に資金を投じる際の安心材料となるからだ。
今後の注目点:公安省と国家銀行による最終審査の結果、そして正式にライセンスを取得する企業の顔ぶれが最大の焦点となる。加えて、試験運用開始後に取引量や利用者数がどの程度のスピードで立ち上がるか、また税制面での追加的な整備がいつ行われるかも注視すべきポイントである。
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