ベトナムが暗号資産取引所を試験導入へ——初期は海外保有者のみ取引可能、200億ドル超市場の行方

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ベトナム国家証券委員会(SSC)は2026年3月25日、ベトナムブロックチェーン・デジタル資産協会(VBA)と共同で、暗号資産(デジタル資産)取引所の試験運用に関する大規模な対話イベントを開催した。当局は「慎重かつ段階的」なアプローチを明言し、初期段階ではすでに海外取引所で暗号資産を保有している投資家のみがベトナム国内取引所での売買を許可される方針を示した。規模200億ドル超とも言われるベトナムの暗号資産市場に、ついに正式な規制枠組みが整備されようとしている。

目次

イベントの全容——省庁横断で議論が加速

「デジタル資産取引所の試験運用:監督メカニズム、運営能力、投資基準」と題されたこの対話には、財務省、公安省、司法省、ベトナム国家銀行(中央銀行)など主要省庁の代表者に加え、暗号資産関連企業、テクノロジー企業、銀行、金融機関、そして投資家コミュニティから数百名が参加した。省庁横断的にこれほど大規模な暗号資産に関する公式イベントが開催されたのは、ベトナムにおいて事実上初めてであり、政府がこの分野に本腰を入れ始めたことを強く印象づけるものとなった。

公安省の危機感——FATFグレーリスト脱却への切り札

公安省サイバーセキュリティ・ハイテク犯罪対策局(A05)第4課のホアン・ゴック・バック大佐は、暗号資産関連犯罪との実務上の戦いから得た教訓を率直に語った。同氏によれば、法的規定の欠如により、捜査は資金の追跡段階で困難に直面するだけでなく、手がかりを見つけた後も資金フローが海外取引所を経由しているため処理が極めて難しいのが実情だという。

バック大佐は「正規の取引所が設立されれば、違法行為の抑止につながり、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策の能力が強化され、ベトナムをFATF(金融活動作業部会)のグレーリストから脱却させることにも貢献する」と強調した。ベトナムは2023年にFATFのグレーリスト(監視強化対象国リスト)に掲載されており、これが国際的な資金調達や金融取引における信用コストの上昇要因となっている。暗号資産取引所の正規化は、単なる投資環境の整備にとどまらず、国家の金融インフラの信頼性回復という文脈でも極めて重要な意味を持つ。

同氏はさらに、透明な暗号資産市場の構築にはすべての関係者の参加が不可欠だとし、投資家に対しては十分な知識・スキルの習得を、取引所に対してはユーザーの本人確認(KYC)から異常取引の監視まで厳格な運営プロセスの構築を、そして規制当局に対しては取引管理に関する法的規定の整備と暗号資産を悪用した不正行為への積極的な予防・処罰を、それぞれ求めた。

初期フェーズの具体像——「海外保有者限定」の慎重戦略

国家証券委員会・暗号資産取引市場管理委員会のトー・チャン・ホア副常任委員長は、取引所の認可審査について具体的な方針を明らかにした。法定資本金や株主構成といった法定条件に加え、企業の実際の運営能力——すなわちITシステムの品質、チームの経験値、運営の透明性——を重点的に評価するという。

ホア氏は「これは新しい市場であり、多くのリスクを内包しているため、規制当局は慎重かつ段階的にアプローチする。初期段階では、すでに海外取引所で暗号資産を保有している投資家のみがベトナム国内の取引所で取引を認められる」と明言した。この制限は、暗号資産に関する一定のリテラシーを持つ投資家層から市場を開始し、未経験者が無防備に参入するリスクを抑制する狙いがある。

また、今後の重点課題として、国家証券委員会が公安省、国家銀行、VBAなどと連携して投資家向けの知識普及プログラムを推進していく方針も示された。

投資家保護の要——資産分離と早期警戒メカニズム

専門家らが繰り返し強調したのが、顧客資産と取引所資産の分離という原則である。これはFTX破綻の教訓から世界的に重視されるようになった論点であり、取引所が営業停止した場合でも投資家の資産が保全されるための基盤と位置づけられている。規制当局は、市場リスクへの対応シナリオも構築しており、早期警戒メカニズムの導入や、異常事態における投資家の自主的な資産処分を可能にする仕組みを整備するとしている。

情報セキュリティ——証券取引所より高い「レベル4」を要求

技術面では、ブロックチェーンセキュリティ企業Verichains(ベリチェインズ)の創業者であるグエン・レー・タイン氏が重要な指摘を行った。暗号資産取引所に対して求められる情報セキュリティレベルは「レベル4」であり、これは現行のベトナム証券取引所に求められる「レベル3」よりも高い水準である。同氏は、セキュリティは認証を取得して終わりではなく、リアルタイム監視、定期的なペネトレーションテスト(侵入テスト)、インシデントへの即応能力を含む継続的な運用プロセスであると述べた。

さらにタイン氏は「最大のリスクは外部からの攻撃ではなく、内部システムおよびブロックチェーン環境と取引所運用インフラの接続ポイントにある」と警告した。これらは資産が移動する敏感な領域であり、高度な攻撃の標的になりやすいという。

200億ドル超の市場に世界が注目

VBAのファン・ドゥック・チュン会長は、世界の大手取引所や著名機関がベトナムの具体的な動向を注視しており、200億ドル超の市場規模を持つこの市場への参入を待ち望んでいると語った。ベトナムは世界有数の暗号資産利用国であり、Chainalysisの「Global Crypto Adoption Index」でも常に上位にランクインしてきた。しかし、法的枠組みの不在ゆえに、取引の大半が海外プラットフォーム経由で行われ、国内にはほとんど税収や経済的恩恵がもたらされてこなかった。

BitGet(ビットゲット)ベトナムの責任者レー・シー・グエン氏は、国内投資家を引きつけるために必要な要素として、流動性、ユーザー体験の最適化、商品の多様性、安全性の確保を挙げた。「システムは運用初日から安定して稼働する必要がある。小さな技術的障害でも信頼を急速に損ない、回復には何倍もの時間がかかる」と同氏は警告した。

フィリピンのPDAX——海外の成功モデルから学ぶ

テザー(Tether)APAC地域開発ディレクターのレー・ヴー・フオン・クイン氏は、フィリピンの暗号資産取引所PDAXの事例を紹介した。PDAXは暗号資産取引(ウォレット、流動性メイキング、外貨交換、暗号資産サービスなど)に加え、年間約400億ドル規模の送金(レミッタンス)サービスにも進出し、国際的な投資家の関心を集めている。ベトナムも海外在住ベトナム人からの送金額が年間100億ドル超に上るとされ、同様のビジネスモデルが展開される可能性は十分にある。

TCEX——国内有力プレイヤーの準備状況

テクコム暗号資産取引所株式会社(TCEX)のドアン・マイ・ハイン社長は、金融知識とブロックチェーン技術を兼ね備えた人材が市場全体で不足している現状を指摘した。TCEXは現在、50名超のコア人材チームを構築中であり、数年にわたる研究を経て取引所技術を自社で掌握済みだという。「運用プロセスの整備、内部テストは完了しており、法的枠組みが整い次第、即座に展開可能な状態にある」とハイン氏は語った。

TCEXのシステムは最大約10万トランザクション/秒の処理能力を持ち、市場ニーズに応じた拡張が可能で、情報セキュリティ要件レベル4に対応している。また、カストディ(資産保管)、セキュリティ、オンチェーン取引分析などの分野で信頼性の高いパートナーと提携しているという。

一方、Web3マーケティング専門家のホアン・クアン・ミン氏は「ベトナムの国内取引所はグローバルプラットフォームのコピーになる必要はない。国内ユーザーにとって最適な選択肢として自らを位置づけ、市場への理解、銀行システムとの接続能力、ベトナムの法的回廊といった優位性を活用すべきだ」と助言した。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の動きは、ベトナムの金融市場の成熟度を示す極めて重要なマイルストーンである。以下の観点から注目に値する。

①ベトナム株式市場・関連銘柄への影響:暗号資産取引所の正規化は、フィンテック関連企業やIT企業への追い風となる可能性がある。TCEX(テクコムキャピタル系列と推察される)のような取引所運営企業のほか、銀行セクターも決済・カストディ連携で恩恵を受け得る。特に、ブロックチェーン技術やデジタル資産関連のサービスを提供する上場企業への資金流入が見込まれる。

②FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月にはFTSEによるベトナムの新興市場昇格判断が控えている。FATFグレーリストからの脱却は、格上げ審査においてもプラス材料となる。暗号資産市場の正規化によるマネーロンダリング対策の強化は、国際的な金融規範への適合を示すシグナルとして機能する。

③日本企業への影響:日本の暗号資産関連企業やフィンテック企業にとって、ベトナム市場への参入機会が生まれる可能性がある。特にカストディ技術、KYC/AMLソリューション、セキュリティ監査といった分野では、日本企業の技術力が活かせる余地が大きい。また、ベトナム進出済みの日系金融機関にとっても、新たなサービス領域の拡大につながる可能性がある。

④市場の構造変化:「海外保有者限定」という初期フェーズの設計は、すでにBinanceやBybit、BitGetなどの海外取引所を利用しているベトナム人投資家(推定数百万人)の資金を国内に還流させる効果を持つ。これが成功すれば、将来的には一般投資家への開放、さらにはトークン化証券や不動産デジタル資産への拡張も視野に入ってくる。ベトナムの暗号資産市場は、2026年が正式な「元年」となる可能性が高い。


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出典: 元記事

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