ベトナムが量子技術の「TSMC」を目指す——半導体に続く次世代産業での勝算と投資機会

Việt Nam và “cơ hội” trở thành TSMC trong ngành lượng tử
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量子コンピューティングが「AI前夜」と同じ段階にあるとされる中、ベトナムが量子技術分野で世界のサプライチェーンの中核を担う「量子版TSMC」を目指す戦略が明らかになった。ベトナム量子技術ネットワーク(VnQuantum)副会長で、ハノイ国家大学量子技術研究所所長のグエン・クオック・フン氏がベトナム経済誌VnEconomyのインタビューに応じ、その具体的なロードマップと勝算を語っている。

目次

量子技術は「夜明け前」——AI爆発の再現が迫る

フン氏はまず、AI(人工知能)の歴史を引き合いに出す。2024年以前、大規模言語モデル(LLM)がここまで世界を変えると予想した人はほとんどいなかった。ChatGPT登場前、チャットボットは「娯楽用」と見なされ、投資家も実用性に懐疑的だった。しかし技術的ブレークスルーが一度起きると、AIはあらゆる領域に浸透した。

量子技術は現在、まさにその「夜明け前」の段階にあるとフン氏は指摘する。爆発的普及の正確な時期は不明だが、世界各国の巨額投資、量子関連銘柄の株価動向、そして主要国によるハイテク輸出規制の強化といったシグナルから、「跳躍」は間近に迫っていると分析する。ここで傍観していれば、ベトナムはAI・半導体と同様に後発組として不利な立場に追い込まれる。

なぜ「今」なのか——先行者利益を得る最後のチャンス

AIや半導体の教訓は明白である。巨大テック企業や技術大国がエコシステムを確立し、基盤理論を支配した後では、後発国が参入する余地はほとんど残されない。しかし量子技術においては、世界はまだ「形成途上」にある。支配的な基盤技術は確立されておらず、周辺の補助技術も未成熟である。つまり、ベトナムがスタートラインから競争に加わるための「ゴールデンタイム」が今まさに開かれているのである。

フン氏は、早期にグローバルエコシステムの中核的な一環となることで、技術的自立と他国依存からの脱却が実現できると強調する。

ベトナムの戦略——3つの技術領域と「ニッチ」の見極め

フン氏は量子技術を3つのグループに分類する。

第1グループ:「超量子技術」(基礎科学研究)
実用化まで20〜30年を要する可能性がある最先端の基礎研究分野である。ベトナム科学アカデミーや国家大学が担うべき領域とされる。

第2グループ:量子×古典技術の融合
既存の「古典的」技術と量子技術を組み合わせ、現実の課題を即座に解決するアプローチである。基礎研究をゼロから行う必要がなく、実用化の可能性がある一方、量子技術がまだ成熟していない段階では方向性を見誤るリスクも高い。

第3グループ:量子補助技術エコシステム(最大のチャンス)
フン氏が「ベトナム企業にとって最も有望なニッチ」と位置づけるのがこの領域である。量子コンピュータの複雑なシステムには、必ずしも「量子技術」でなくとも製造可能な多くの必須部品が存在する。単一光子発生装置、極低温冷却システム、無損失信号伝送用光ファイバーケーブルなどがその例である。こうした補助技術エコシステムの構築は、ベトナムの既存の製造能力を活かせる分野であり、十分に主導権を握れるとフン氏は述べる。

「量子版TSMC」への道——コスト優位性とFDIの波

現在、世界の量子コンピュータ開発企業の多くはまだ小規模であり、プロトタイプの受託製造や小ロットの発注が主なニーズとなっている。欧州で製造すればコストは極めて高い。ベトナムは質の高い技術人材と競争力のあるコストを武器に、こうした補助システムの受託製造を引き受けることが可能である。その過程で設計ノウハウを蓄積し、サプライチェーンの深部に根を下ろすことができる。

さらにフン氏は、2025年に入ってから複数の海外パートナーから量子技術関連の製造をベトナムに移転したいとの提案を直接受けていることを明かした。背景には、自国での製造コストの高さに加え、アジア向けハイテク輸出規制がある。ベトナムに拠点を置くことで、コスト問題と地域市場開拓の両方を解決できるというわけである。

フン氏は「現在、世界の量子産業には半導体におけるTSMC(台湾積体電路製造、世界最大の半導体受託製造企業)のような巨大な受託製造企業がまだ存在しない。迅速かつ果断に動けば、ベトナムが『量子のTSMC』を目指せない理由はない」と述べた。

鍵を握る「海外ベトナム人専門家ネットワーク」

戦略実現の最大の鍵は、グローバルに活躍するベトナム人専門家のネットワークである。世界の量子コンピュータ製造企業でCTO(最高技術責任者)や主任研究者といった要職に就くベトナム人は少なくない。彼らがプロジェクトや製造案件をベトナムに持ち帰る能力を十分に持っている。

実際、既に一部のベトナム企業が世界の量子技術企業向けに密かに受託製造・加工を行っているという。フン氏は「こうした先駆的存在を見極め、優遇措置を設けて育成し、強固なエコシステムへと拡大することが急務だ」と訴える。

また、ベトテル(Viettel、ベトナム軍隊通信グループ、同国最大の通信企業)やFPT(ベトナム最大手のIT企業)といった大手テック企業もすでに量子分野に参入しており、政府レベルでも首相決定1131号に代表される戦略的技術リストの策定など、「まずやってみる」という姿勢への転換が進んでいる。

半導体エコシステムの教訓——参入すれば「制裁されない」

フン氏が興味深い指摘をしている。半導体やナノテクノロジーの発展史が示すように、一旦グローバルエコシステムの不可欠な一部となれば、「誰もその国に技術制裁をかけられなくなる」というものである。これはベトナムにとって、単なる経済的利益を超えた安全保障上の戦略的意義を持つ。

投資家・ビジネス視点の考察

今回のニュースは、ベトナムが半導体に続く次の「技術産業の波」に早期参入しようとしている姿勢を鮮明にするものである。投資家にとっていくつかの重要な示唆がある。

関連銘柄への注目:記事中に名前が挙がったFPT(HOSE: FPT)やベトテル関連企業(CTR、VGIなど軍隊通信グループ傘下銘柄)は、量子技術への取り組みが今後の成長ストーリーに組み込まれる可能性がある。ただし、量子分野からの収益貢献は中長期的なものであり、短期的な株価材料としてはAI・半導体テーマほどの即効性はないだろう。

FDI誘致の新たな柱:量子技術関連のFDIが実際に流入し始めれば、ベトナムの「ハイテク製造拠点」としてのブランド価値がさらに高まる。これは2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにとっても、「ベトナムは単なる低コスト製造国ではなく、先端技術エコシステムの一角を占める国である」というナラティブを補強する材料となり得る。

日本企業への示唆:日本は量子コンピューティング分野で理化学研究所を中心に研究を進めているが、製造コストの課題は欧米と共通する。量子関連の補助部品・装置の製造委託先としてベトナムが浮上すれば、日越間の技術協力・サプライチェーン連携の新たなチャネルが開かれる可能性がある。ベトナムに製造拠点を持つ日系精密機器メーカーにとっては、既存設備を活用した新規事業の機会にもなり得る。

総じて、量子技術は「10年スパン」のテーマである。しかし、AIがそうであったように、市場が本格的に動き出す前にポジションを取っておくことの重要性を、フン氏のインタビューは改めて示唆している。ベトナムという国そのものが、量子時代の「アーリーステージ投資先」として注目に値する段階に入ったと言えるだろう。


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出典: VnEconomy元記事

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