ベトナムで相次ぐ広告炎上事件——The Body Shop・3CE・MayChaなど消費ブランドが「失態」連発

Liên tiếp các thương hiệu tiêu dùng “sẩy chân” trong hoạt động quảng cáo, marketing
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ベトナムで消費財ブランドによる広告・マーケティングの「炎上」が相次いでいる。SNSやデジタルプラットフォームが企業と消費者を結ぶ主要チャネルとなる中、文化的感受性を欠いたコンテンツが次々と批判の的となり、ブランドイメージの毀損や不買運動にまで発展するケースが出てきた。ベトナム市場への進出・投資を検討する日本企業にとっても、「ベトナムの消費者が何に怒るのか」を理解することは極めて重要である。

目次

The Body Shopベトナム:50周年記念広告が「文化的に不適切」と炎上

2026年3月24日、英国発の美容ブランド「The Body Shop」(ザ・ボディショップ)のベトナム公式Facebookページが、ブランド創立50周年を記念する広告画像を投稿した。問題となったのは、男性モデルの下着の内側に商品ボトルを配置するという大胆なビジュアルだった。

投稿は即座に激しい批判を浴びた。同日、The Body Shopベトナムはブランドの歴史を紹介しながら、この画像が1990年代に話題を呼んだキャンペーン「Fake It」のリメイクであると暗に説明する投稿を行ったが、火消しには至らなかった。

注目すべきは、この画像を掲載したのはベトナムのファンページのみであり、The Body Shopの国際アカウントでは通常のバースデーケーキの画像で50周年を祝っていたという点である。つまり、ベトナム市場向けに企画されたローカルキャンペーンが、当のベトナムの文化的価値観と著しく乖離していたことになる。記事執筆時点でも、問題の画像はファンページ上に残ったままだ。

3CE×Tous les Jours:国際女性デーに「家庭内暴力」を想起させる動画

これに先立つ3月8日の国際女性デーには、韓国発の人気コスメブランド「3CE」(スリーシーイー)とベーカリーチェーン「Tous les Jours」(トゥレジュール)がTikTok上でコラボコンテンツを公開し、大炎上を引き起こした。

動画では、妻の頬が赤い理由を家庭内暴力のイメージで表現するという演出が使われていた。あくまで「演出」であるとはいえ、家庭内暴力を連想させる内容が、まさに女性を称える日に公開されたことで、主要顧客層である女性消費者を中心に猛烈な怒りが噴出した。

圧力が高まる中、動画は速やかに削除された。3CEベトナムは長文の謝罪声明を発表し、「伝統的価値観、とりわけ女性と家庭の尊重を常に重視している」と強調しつつ、当該コンテンツが「不適切であり、多くの議論を引き起こした」ことを認めた。Tous les Joursベトナムも同様に謝罪している。

Chautfifth:「The Art of Being Her」キャンペーンで不買運動に発展

さらに同じ国際女性デーのタイミングで、ベトナム国内のファッションブランド「Chautfifth」(チョーフィフス)が展開した広告キャンペーン「The Art of Being Her」も大きな物議を醸した。ユーモアや風刺を狙ったアプローチだったが、多くの消費者がそのメッセージを「女性を否定的に描写している」と受け取り、女性を讃える日の文脈では到底許容されないとの声が相次いだ。

対応の遅れも致命的だった。ブランド創設者による冗長な釈明文がかえって火に油を注ぐ形となり、SNS上ではボイコットの呼びかけにまで発展した。一部の消費者は、同ブランドが意図的に「炎上マーケティング」を仕掛けていると見なし、ブランドへの信頼喪失は深刻なものとなっている。

MayCha(トッポギティー):Zalo上の下品なワードプレイで即炎上

直近では、タピオカミルクティーブランド「MayCha」(メイチャー)が、ベトナム発のメッセージアプリ「Zalo」(ザロ)の広告アカウントを通じて大量のプッシュ通知を配信し、問題となった。通知に使われたキャッチコピーは、下品な言葉遊びと評され、消費者から即座に反発を受けた。ブランド側は迅速に謝罪し、内容の見直しに着手したとされる。

SNS時代のベトナム広告市場——「創造」と「炎上」の境界線

近年、TikTok、Instagram、Facebook、Zaloといったプラットフォームは、ベトナムにおいて単なる娯楽コンテンツの共有場所ではなく、最も活発な「ブランドコミュニケーションの場」へと変貌している。大企業から中小企業まで、従来型広告よりも低コスト・高速・高効率で顧客にリーチできるこれらのチャネルを積極的に活用している。

しかし、機会にはリスクが伴う。今回の一連の事例は、広告における「創造性」と「不快感」の境界線がいかに細いかを如実に示している。注目を集めるために企画されたアイデアが、コミュニティの強い反発を招けば、瞬時にブランド危機へと転化する。

ベトナムの消費者は、特に以下の点に敏感であることが今回の事例から読み取れる。

  • ジェンダーに関する表現:家庭内暴力や女性蔑視を想起させる内容には極めて厳しい反応が返ってくる。
  • 文化的自尊心:ユーモアのつもりが、嘲笑や侮辱と受け取られるリスクがある。ベトナム文化への敬意を欠いた外資ブランドのローカルキャンペーンは特に槍玉に挙がりやすい。
  • 性的表現:The Body Shopの事例のように、欧米では許容されるセクシュアルな表現が、ベトナムでは「品位を欠く」と見なされることがある。

責任の所在については、まず広告主と制作者が第一義的に問われる。しかし、SNSプラットフォーム側もコンテンツフィルターや審査体制を標榜しながら、実際にはガイドライン違反の動画が広くレコメンドされるケースが後を絶たない。プラットフォームの監督強化と、悪質アカウントへの厳正な対処も喫緊の課題である。

伝播の専門家は、SNSが消費行動に強い影響を与える時代にあって、企業は「面白ければいい」という広告思考から「戦略的に設計する」思考へ転換すべきだと指摘する。具体的には、ブランドコミュニケーションのガイドライン策定(言語・画像・音声・知的財産権・法的制約の明文化)、広告規制に関する社内外研修、危機対応マニュアルの整備、KOL(キーオピニオンリーダー)やインフルエンサーとの透明な契約管理などが推奨されている。

また、危機発生時には「迅速かつ誠実な対応と具体的な行動」が鍵となる。SNSの即時拡散環境下で、「素早く、本心から反応する」ことがブランド存続の原則であると強調されている。グローバルな先例として、2017年にペプシがケンダル・ジェンナー起用のTVC「Live for Now」でデモ活動を矮小化・商業化したとして猛批判を受けた事例も想起される。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の一連の広告炎上事件は、ベトナム市場特有の消費者行動とSNSの影響力を如実に示しており、日本企業・投資家にとって複数の示唆がある。

1. ベトナム消費市場の成熟と消費者パワーの台頭
ベトナムの消費者は、かつてのように広告を受動的に受け入れる存在ではなくなった。SNS上での組織的な批判や不買運動の発生は、消費者のリテラシーとブランドに対する要求水準が急速に高まっていることを意味する。ベトナムの小売・消費セクター(VNインデックス構成銘柄でいえば、MWG=モバイルワールド、PNJ=フーニュアンジュエリー、MML=マサンメアットライフなど)に投資する際は、各企業のブランドマネジメント体制やSNS上のレピュテーションリスク管理能力も精査すべき時代に入ったといえる。

2. 日本企業のベトナム進出における教訓
日本の消費財メーカーやサービス企業がベトナム市場で広告展開を行う場合、本社主導のグローバルキャンペーンをそのまま転用するだけでなく、現地の文化的文脈を深く理解したローカライズが不可欠である。The Body Shopの事例は、まさにグローバルとローカルの温度差が招いた典型的な失敗パターンだ。日系企業は、現地パートナーや広告代理店との連携を強化し、コンテンツの文化的妥当性を事前にチェックする仕組みを構築する必要がある。

3. デジタルマーケティング関連銘柄への含意
ベトナムではデジタル広告市場が急拡大しており、FPTデジタル(FPTグループ傘下)やVCCorp(VnExpressなどを運営するメディア企業)などが関連銘柄として注目される。一方、今回のような炎上が相次ぐことで、広告主企業がプラットフォームやデジタル代理店に対してより厳格なコンプライアンスを求める流れが強まる可能性がある。これは短期的にはコスト増要因だが、中長期的には業界の健全化とプレミアム化を促し、質の高いデジタルマーケティング企業にとっては追い風となり得る。

4. FTSE新興市場指数格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、ベトナム企業のガバナンスや透明性への注目をさらに高める。広告・ブランドマネジメントの失態がSNSで瞬時に世界に拡散される環境は、上場企業のレピュテーションリスクを可視化する。海外機関投資家の参入が本格化すれば、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも、企業のマーケティング倫理が投資判断の一要素として評価される局面が増えるだろう。

ベトナムの消費市場は約1億人の人口と若い人口構成に支えられ、中長期的な成長ストーリーに変わりはない。しかし、その市場で成功するためには、「何を伝えるか」だけでなく「どう伝えるか」——すなわち文化的感受性とブランドコミュニケーションの質が、これまで以上に問われる時代に入ったことを、今回の一連の事例は明確に示している。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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