ベトナムは東南アジア有数の原油産出国でありながら、国内のガソリン・軽油需要の約30%を輸入に頼っている。採掘した原油の大半を国内の製油所に振り向けているにもかかわらず、急速な経済成長とモータリゼーションの進展が需要を押し上げ、自給だけでは賄いきれない構造が続いている。日本企業にとっても、ベトナムのエネルギー事情は投資判断やサプライチェーン戦略に直結する重要テーマである。
原油産出国ベトナムの実像
ベトナムは南シナ海(ベトナム名:東海/ビエンドン)の大陸棚を中心に豊富な石油・天然ガス資源を有しており、1980年代から本格的な海洋油田開発を進めてきた。国営のペトロベトナム(PetroVietnam/ベトナム石油ガスグループ)が上流から下流まで一貫して管轄し、ロシアとの合弁企業ビエトソフペトロ(Vietsovpetro)をはじめとする複数のプロジェクトで原油を生産している。
ただし、ベトナムの原油生産量はピークだった2004年頃の日量約40万バレルから緩やかに減少傾向にあり、近年は日量約15万〜20万バレル前後で推移している。老朽化した油田からの産出量が落ち込む一方、新規鉱区の開発は南シナ海の領有権問題もあって思うように進んでいないのが実情だ。
国内製油所の能力と限界
ベトナムには現在、主要な製油所が2カ所ある。一つは中部クアンガイ省に位置するズンクアット製油所(Nhà máy lọc dầu Dung Quất)で、2009年に稼働を開始した国内初の大型製油所である。処理能力は日量約14万8,000バレルで、国内需要の約3割強をカバーしている。
もう一つは南部タインホア省のニーソン製油所(Nhà máy lọc hóa dầu Nghi Sơn)で、クウェート国営石油や出光興産(現・出光興産株式会社)などが出資する国際合弁プロジェクトとして2018年に商業運転を開始した。処理能力は日量約20万バレルと国内最大級であり、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料などを生産している。
この2カ所を合わせた精製能力は国内需要の約70%をカバーできる水準とされている。しかし、定期メンテナンスやトラブルによる稼働率低下、さらには需要の季節変動や年々の消費増加を考慮すると、恒常的に約30%の不足分が生じ、韓国やシンガポール、マレーシアなどからの輸入で補っているのが現状だ。
なぜ輸入依存が続くのか
ベトナムの石油製品消費量は、経済成長率(近年はGDP成長率6〜7%台)に比例して着実に増加してきた。二輪車の登録台数は約7,000万台以上、自動車市場も年間50万台規模に拡大しつつあり、物流の拡大とあいまって燃料需要は右肩上がりである。
加えて、ベトナムで採掘される原油の多くは低硫黄の軽質〜中質原油であるものの、すべてが国内製油所の設備仕様に最適とは限らず、一部は輸出して代わりに精製しやすい原油や石油製品を輸入するという「スワップ」的な取引も行われている。こうした複合的な要因が、産油国でありながら輸入に依存するという構造を生んでいる。
日本企業・投資家への示唆
ニーソン製油所に出光興産が出資していることからもわかるように、日本企業はベトナムのエネルギーセクターに深く関与している。今後はEV(電気自動車)の普及やLNG(液化天然ガス)火力発電の拡大など、ベトナムのエネルギーミックスが大きく変わる可能性がある。ビンファスト(VinFast)に代表されるEVメーカーの台頭は中長期的にガソリン需要を抑制する要因となり得るが、当面はインフラ整備の遅れもあり、石油製品への依存は続く見通しだ。
また、ベトナム政府はエネルギー安全保障の観点から第3の製油所建設や戦略石油備蓄の拡充を検討しており、関連するインフラ投資の商機も注目される。日本のエンジニアリング企業やエネルギー関連商社にとって、ベトナムのガソリン・軽油市場は引き続き重要なウォッチ対象である。
出典: VN Express
いかがでしたでしょうか。今回のベトナムのガソリン・石油製品の生産と消費構造について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
【noteメンバーシップのご案内】
より詳細なベトナムの経済ニュース解説や企業の投資分析、現地からのリアルタイム情報をお求めの方は、ぜひメンバーシップへのご参加をご検討ください。
https://note.com/gonviet/membership












コメント