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ベトナム中部クアンチ省(Quảng Trị)で、ミートゥイ港(cảng Mỹ Thủy)からカムロー=ラソン高速道路(cao tốc Cam Lộ – La Sơn)を結ぶ国道15D(Quốc lộ 15D)の建設が、用地収用問題を乗り越えて加速している。総投資額1,940億ドンの同プロジェクトは、省にとって戦略的な物流軸を形成する重要インフラであり、2026年の最重点事業に位置付けられている。
プロジェクトの全体像と戦略的意義
国道15Dは、クアンチ省の沿岸部に位置するミートゥイ港と、内陸部を東西に走るカムロー=ラソン高速道路を接続する路線である。クアンチ省は、ベトナム中部の南北のほぼ中間に位置し、北にはドンハー市(Đông Hà)、南にはフエ(Huế)といった都市圏が控える。かつてベトナム戦争時の激戦地として知られた同省は、近年では経済特区の整備や港湾開発を通じた地域経済の底上げに力を入れている。
ミートゥイ港は、クアンチ省が推進する「東南経済区(Khu kinh tế Đông Nam)」の中核インフラとして整備が進む深水港であり、完成すれば中部ベトナムにおける物流ハブとしての機能が期待されている。国道15Dは、この港と全国交通網を結ぶ「ラストワンマイル」とも言うべき路線であり、プロジェクトの完成により港湾—高速道路—国道が一体となった物流回廊が形成される。これは、省全体の競争力を高め、製造業やロジスティクス産業の誘致にも大きく寄与するものとされている。
プロジェクトの総投資額は1,940億ドンで、4つのサブプロジェクトに分割されて実施される。
用地収用が最大のボトルネックに
現在、プロジェクトの進捗を最も阻んでいるのが、用地取得(giải phóng mặt bằng)の問題である。路線は人口密集地域を通過するため、住民の移転、墓地(lăng mộ)の移設、そして農地の収用が大量に発生している。ベトナムの地方インフラ整備において用地収用は常に最大の課題であるが、本プロジェクトも例外ではない。
こうした状況を受け、クアンチ省人民委員会のホアン・ナム(Hoàng Nam)常務副主席が現地を直接視察し、関連部局・地方自治体と協議を行った。省は以下の指示を出している。
- 補償・支援・再定住に関する書類手続きの迅速な完了
- 住民への広報活動を強化し、プロジェクトへの理解と同意を促進
- 施工中に発生する諸問題を随時洗い出し、迅速に解決
- 2026年4月中に全用地の引き渡しを完了することを目標に設定
さらに、省はこのプロジェクトを2026年の各地方の最重点任務と位置づけ、「政治システム全体」による指導体制の強化を打ち出した。具体的には、専門の作業部会を設置して進捗を直接監督するほか、公安(警察)との連携を強化して施工現場の治安確保にも万全を期すとしている。
施工面での対応——複雑な区間から優先着手
用地収用と並行して、施工業者にも積極的な対応が求められている。省の方針として、地形的に難易度の高い区間を優先的に施工し、人員・機械・設備を最大限動員して交代制勤務(tăng ca, tăng kíp)を実施することが明示されている。これは、工期遵守と品質確保を両立させるための重要な施策である。
ホアン・ナム常務副主席は視察の場で、「国道15Dのミートゥイ港〜カムロー=ラソン高速道路区間は、クアンチ省の経済社会発展とインフラ接続の強化にとって、特別に重要な役割を果たす」と強調。関連部局に対し、責任感を発揮し、各種施策を同期的に展開して、進捗・品質・効果を確保するよう求めた。
投資家・ビジネス視点の考察
本プロジェクトは地方インフラ案件であり、直接的にベトナム株式市場の大型銘柄を動かすニュースではないが、以下の観点から注目に値する。
1. 建設・インフラ関連銘柄への波及
ベトナムでは2025年から2026年にかけて、南北高速道路の延伸やロンタイン国際空港の建設など、大型公共投資が集中している。地方の国道整備も含めた公共投資の加速は、建設セクター全体の受注増につながる。ホーチミン証券取引所(HOSE)上場のCTD(コテックコンス)、HBC(ホアビンコンストラクション)、あるいはハノイ証券取引所(HNX)上場の中堅建設会社などの業績に中長期的な追い風となる可能性がある。
2. 物流・港湾関連への影響
ミートゥイ港の接続性が高まれば、中部ベトナムにおける物流コストの低減が期待できる。これは、同地域に工場を持つ、あるいは進出を検討している日系製造業にとっても好材料である。ベトナム中部はダナン(Đà Nẵng)やフエを中心に外資誘致が進んでおり、クアンチ省の物流インフラ整備はこの流れを補完するものだ。
3. FTSE新興市場指数の格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいて、ベトナムのインフラ投資の進展は国全体の「投資適格性」を高める要素の一つとなる。個別プロジェクトの影響は限定的だが、全国的な公共投資の加速という文脈の中では、海外投資家の評価にプラスに作用すると考えられる。
4. 用地収用リスクの典型例として
本件が示すように、ベトナムのインフラプロジェクトにおいて用地収用は依然として最大のリスク要因である。日本企業がベトナムの工業団地や物流施設への投資を検討する際、用地問題による遅延リスクは常に念頭に置くべきポイントだ。クアンチ省が「2026年4月中の全用地引き渡し完了」を打ち出していることは、政治的コミットメントの強さを示すものだが、実際の進捗については引き続きウォッチが必要である。
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