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ベトナム北部ニンビン省で、総投資額が数千億ドン規模に及ぶ複数の重点交通インフラプロジェクトが、用地取得の長期化、埋立用砂の不足、再定住地の整備遅延という三重の「ボトルネック」に直面している。同省のグエン・カオ・ソン副主席は、地方当局に対し「インフラ整備を先行させよ。数世帯のために全体の進捗を止めることは許されない」と強い姿勢で指示を出した。
プロジェクト①:イーイエン県道路(3,635億ドン)——14世帯が全線開通を阻む
イーイエン県(Ý Yên)において、ダイ堤防左岸から57B号線を結ぶ県道整備プロジェクトは、総事業費3,635億ドン、全長5.6kmの路線である。施工全体の75%が完了し、アスファルト舗装は約4kmまで進んでいる。ところが、旧イエンホン社とイエンバン社に残るわずか284メートル区間で、14世帯が用地を引き渡していないために工事が完全に停滞している。うち9世帯はOM9地区の再定住地を待っている状態だ。プロジェクト管理委員会は、イーイエン県を再定住インフラの事業主体とし、2026年9月30日までの完成を目指すよう要請している。
プロジェクト②:ハイハウ中心幹線道路(7,418億ドン)——たった2世帯が工事を止める
ハイハウ県(Hải Hậu)の中心幹線道路は、総事業費7,418億ドン、全長4.2kmで国道21号からイエンディン橋入口までを接続する。第1期工事の進捗率は60%にとどまり、路盤・路床工事は65〜85%に達しているものの全体としては遅延が目立つ。390世帯がすでに補償金を受領済みであるにもかかわらず、工事がストップしている原因はたった2世帯である。1世帯はハイハウ社における建物補償額に同意せず、もう1世帯はスアンチュオン社の再定住用地を要求しているという。数百世帯が協力する中で、わずか2世帯の問題が数千億ドン規模のプロジェクト全体を人質に取っている格好だ。
プロジェクト③:T4幹線道路(約4,000億ドン)——事業主体の移管が未完了で法的根拠なし
最大規模のT4幹線道路プロジェクトは、総事業費約4,000億ドン、全長16km、幅54m・6車線という大規模路線で、4つの社(村)を縦断する。しかし、事業主体が「都市開発管理委員会」から「省土地開発センター」へ移管される手続きが完了しておらず、すでに41の集落で住民説明会と測量杭の設置を終えているにもかかわらず、117.58ヘクタールの土地収用に必要な法的根拠が整っていない。行政手続きの不備がハード面の着工を阻んでいる典型例である。
「静かなるボトルネック」——埋立用砂の深刻な不足
用地問題に加え、埋立・盛土に必要な砂の供給不足がすべてのプロジェクトに影を落としている。イーイエン県道路では砂不足が路盤工事に直接影響し、ハイハウの幹線道路でも残り15〜35%の砂盛土が外部調達頼みとなっており、価格も上昇基調にある。T4幹線道路に至っては、必要量が数百万立方メートル規模に達する見込みで、長期的な供給計画がなければ資材の供給断絶リスクが極めて高い。
ニンビン省のグエン・カオ・ソン副主席は、各事業者に対し月次ベースでの砂需要予測を義務付けるとともに、丘陵土、砕石由来の人工砂、河川・用水路の浚渫土の活用など、天然砂への依存を減らす代替策の研究を指示した。ベトナム全土で天然砂の枯渇が社会問題化する中、ニンビン省の対応は他省にとっても試金石となる。
省政府が示した3つの解決策
グエン・カオ・ソン副主席は、以下の3本柱で突破を図る方針を示した。
第一に、再定住地のインフラ先行整備。「住民に最善のものを提供する」という方針のもと、5カ所の再定住地区において道路・電気・上水道を土地収用に先立って完成させる。省財政局には、即週内での予算配分を指示した。墓地の移転については清明節(ベトナムでは祖先を弔う重要な行事)の時期に合わせるなど、住民感情にも配慮する姿勢を見せている。
第二に、法的手続きに基づく強制執行。十分な説明と政策対応を行ったにもかかわらず、意図的に協力を拒む世帯については、書類を精査した上で法に基づく強制収用を実施する。「数世帯のために全体の進捗を止めてはならない」という明確なメッセージである。また、事業者には実力のある施工業者の選定を求めた。
第三に、資金と技術面の手当て。2026年の公共投資計画において追加予算を速やかに確保する。特にT4幹線道路の用地取得費として1,113億ドンの計上が急務である。新規プロジェクトでは、電力・上水道・通信などのインフラ管理者を測量・検査の段階から参画させ、用地引渡し後の手戻りを防ぐ。具体的なロードマップとしては、2026年4月中に土地収用通知を完了、同年6月までに農地の収用・引渡しを終え、同年12月31日までに宅地の収用を完了、T4を含む主要幹線道路は2028年の全線完成を目標とする。
投資家・ビジネス視点の考察
ニンビン省は、ハノイ南方約90kmに位置し、世界遺産チャンアンを擁する観光地であると同時に、近年は工業団地開発が加速する成長地域である。交通インフラの整備遅延は、同省への企業誘致や不動産開発に直接的なブレーキとなる。
ベトナム株式市場の観点では、建設・建材セクターへの影響が注目される。砂不足と価格上昇は、砕石・人工砂メーカーにとっては追い風となり得る一方、ゼネコンにとってはコスト増要因である。上場建設会社の中には、北部インフラ案件を多数抱える企業もあり、用地取得の遅延が業績見通しの下方修正につながるリスクがある。
また、2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナム政府はインフラ整備の加速を重要政策に位置付けている。公共投資の執行率が低迷すれば、マクロ経済の成長率にも影響し、格上げ判断にとってマイナス材料となりかねない。ニンビン省のような地方レベルでの「ボトルネック解消」の成否が、ベトナム全体の投資環境評価を左右する一因となるだろう。
日本企業にとっても、ニンビン省周辺の工業団地進出を検討する際、交通アクセスの整備状況は立地判断の重要な要素である。T4幹線道路のような大型路線の完成時期が不透明な状況は、進出計画のタイムラインにも影響を与える可能性がある。
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