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ベトナム北部最大の港湾都市ハイフォン(Hải Phòng)市が、2018年に策定したロジスティクス発展計画(第38号決議)の廃止を正式に検討している。2025年7月1日にハイズオン(Hải Dương)省と合併し「新ハイフォン市」が誕生したことで、従来の計画が実態に合わなくなったためである。ロジスティクス戦略そのものを放棄するのではなく、より高い次元の総合都市計画に統合・再編する動きであり、同市の物流インフラに関わる投資家・企業にとって注視すべき転換点である。
廃止対象の第38号決議とは何だったのか
2018年12月10日にハイフォン市人民評議会が採択した第38号決議(38/NQ-HĐND)は、同市のロジスティクスサービス体系を2025年までに整備し、2030年までの方向性を定めた包括的な計画であった。主な数値目標は以下の通りである。
- 2025年までにロジスティクスサービスの年間成長率25〜35%を達成
- GRDP(域内総生産)に占めるロジスティクスの比率を15〜25%に引き上げ
- アウトソーシング型ロジスティクスの利用率を40〜60%に
- 2030年までにロジスティクスセンター経由の貨物比率を域内需要の60〜65%に
- 2030年の港湾貨物取扱量目標:2億890万トン
計画ではラックフエン(Lạch Huyện)、VSIP、チャンズエ(Tràng Duệ)、ナムディンヴー(Nam Đình Vũ)の既存4拠点に加え、ティエンラン(Tiên Lãng)とカットビ(Cát Bi)の新規2拠点を整備し、2030年に年間総処理能力1億4,035万トン(うちコンテナ約786万TEU)を目指すものであった。さらに3本の主要ロジスティクス回廊を形成し、マルチモーダル輸送、倉庫、フォワーディング、EC物流、航空物流、港湾支援サービスを包括的に発展させる青写真が描かれていた。
計画がもたらした成果——港湾都市としての地位強化
ハイフォン市人民委員会の評価によれば、第38号決議は一定の成果を上げた。同市の港湾システムは5つの主要埠頭ゾーンに51の港湾(計98バース、総延長1万4,178.5メートル)を擁するまでに拡大。なかでもラックフエン国際ゲートウェイ港は載貨重量20万DWT超のコンテナ船を受け入れ可能な能力を持ち、北部ベトナムのハブ港としての地位を確立した。
貨物取扱量も順調に伸び、2021〜2024年の累計は6億7,800万トンを超え、2024年単年では1億9,000万トンに達した。市内にはロジスティクス企業250社が存在し、工業団地・経済特区にはロジスティクス分野で85件の投資プロジェクト(FDI30件、国内投資55件)が進行中で、総投資額は9億ドル超に上る。大型倉庫・ヤードは60カ所、総面積700ヘクタール以上で、ディンヴー(Đình Vũ)、タンヴー(Tân Vũ)、チュアヴェ(Chùa Vẽ)、ホアンジエウ(Hoàng Diệu)、ハイアン(Hải An)区に集中している。現在2カ所のロジスティクスセンターが稼働中で、さらに4カ所が建設・投資段階にある。
また、沿岸道路、港湾〜工業団地〜国境ゲート接続道路、ラックフエン埠頭拡張、環状道路など戦略的な交通インフラプロジェクトも推進され、広域・国際的な連結性が着実に向上している。
なぜ今、廃止なのか——3つの理由
成果がある一方で、廃止に至った背景には主に3つの要因がある。
第一に、目標の陳腐化である。第38号決議は2030年の港湾貨物目標を2億890万トンとしていたが、共産党政治局が2019年1月に出した第45号決議(45-NQ/TW)はハイフォンを2025年までに国家ロジスティクスセンター、2030年までに国際的な近代ロジスティクスセンターとする方針を打ち出した。これを受け、市は2030年の貨物目標を3億8,000万トンへと大幅に上方修正しており、旧計画の数値では到底対応できない状況となった。
第二に、行政区域の劇的変化である。2025年7月1日、ハイフォン市はハイズオン省と合併し「新ハイフォン市」が発足した。基礎自治体(社級)の再編も行われ、ロジスティクス計画の空間的前提が根本的に変わった。旧計画の対象エリアと新市域はもはや一致しない。
第三に、上位計画との不整合である。国の地域計画、業種別国家計画、市の総合計画など上位の枠組みが相次いで更新・承認されたことで、旧決議の内容は法制度上も整合性を失った。一部のロジスティクスセンター建設は用地確保、収用手続き、投資認可の遅れで未着手または進捗が大幅に遅延しており、政策面の課題も露呈していた。
こうした状況を踏まえ、市人民委員会はロジスティクスの発展方針を廃棄するのではなく、現在策定中の市総合計画(調整版)に空間設計・需要予測・発展方針のすべてを「一体的に統合」する方針を示している。
投資家・ビジネス視点の考察
港湾・物流関連銘柄への影響:今回の決議廃止は「後退」ではなく「格上げ」と読むべきである。2030年の貨物目標が2億890万トンから3億8,000万トンへ約82%上方修正されたことは、港湾運営会社(ジェマデプト=GMD、ハイフォン港=PHP、コンテナベトナム=VSCなど)やロジスティクス関連企業にとって中長期的な追い風となる。ラックフエン港の拡張投資も加速が見込まれ、関連インフラ建設企業にも恩恵が及ぶ可能性がある。
ハイズオン統合の意味:ハイズオン省は工業団地が密集する製造拠点であり、ハイフォンの港湾機能と一体化することで「製造+物流」のシームレスなサプライチェーンが形成される。日系企業を含む外資製造業にとっては、内陸の工場から港湾までの輸送効率が改善する可能性があり、新たな工業団地・倉庫投資の候補地が広がる。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、外国人投資家の資金流入が加速する。物流インフラの近代化・拡充はベトナム経済全体の競争力を底上げする要素であり、格上げ審査においてもプラス材料と評価されうる。特にハイフォンは北部経済圏のゲートウェイとして、中国+1戦略を採る多国籍企業のサプライチェーン再編の恩恵を最も受けやすい都市の一つである。
日本企業への示唆:ハイフォン近郊にはすでに多数の日系製造業が進出しており、VSIPハイフォンなど日越合弁の工業団地も稼働中である。新総合計画の策定過程で、ロジスティクス拠点の位置や規模が再定義される可能性があるため、倉庫・物流センターの新規投資を検討している企業は計画確定を注視すべきである。一方で、3億8,000万トンという野心的な目標に向けたインフラ投資の加速は、建設・設備・ITシステムなど幅広い分野でビジネス機会を生む。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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