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ベトナム第3の都市ハイフォン(Hải Phòng)市で、土地使用を伴う投資プロジェクトの入札制度に関する大規模な投資促進会議が開催された。2025年投資法(2026年3月1日施行)のもと、ハイフォン市では134件の土地区画が入札対象として決定されており、総投資額4.7兆ドン超に上る267件の都市開発プロジェクト群の中から、透明性ある手続きで投資家を選定していく方針である。法改正による規制緩和と入札プロセスの明確化は、ベトナム不動産市場全体に大きなインパクトを与える動きだ。
ハイフォン市の投資促進会議の概要
2026年3月25日、ハイフォン市財務局(Sở Tài chính Hải Phòng)は国内投資促進会議を開催した。この会議は、2025年投資法および入札関連法令に基づく土地使用プロジェクトの投資家選定手続きについて、企業・投資家に対して周知・指導することを目的としたものである。会議には財務省入札管理局(Cục Quản lý Đấu thầu, Bộ Tài chính)の代表も出席し、入札対象となるプロジェクトの範囲や手続きの流れについて詳細な説明が行われた。
ハイフォン市の開発プロジェクト全体像—267件・総投資額4.7兆ドン超
ハイフォン市財務局のグエン・ティエン・ホアン(Nguyễn Tiến Hoan)副局長によると、同市には現在、都市開発区、農村居住区、住宅地区を合わせて267件のプロジェクトが存在する。その総面積は696,439ヘクタール、総投資額は4.7兆ドン(4,700,000,000,000,000ドン=4.7 triệu tỷ đồng)を超える規模である。
内訳は以下の通りだ。
- 経済特区・工業団地内のプロジェクト:13件(総面積708.82ヘクタール、総投資額89,538兆ドン)
- 経済特区・工業団地外のプロジェクト:254件(総面積695,730ヘクタール、総投資額約4.62兆ドン)
ハイフォンは、北部ベトナム最大の港湾都市であり、首都ハノイから約120kmに位置する。近年はディンブー(Đình Vũ)やカットハイ(Cát Hải)の深水港整備、ハノイ〜ハイフォン高速道路の開通などにより、物流・製造拠点としての重要性が急速に高まっている。この大規模な都市開発プロジェクト群は、同市の経済成長戦略の中核を成すものである。
入札対象として決定された134件の土地区画
市全体では、ハイフォン市人民評議会(HĐND)が8つの決議を通じて、134件の土地区画を入札による投資家選定の対象として承認している。地域別では西ハイフォン(Tây Hải Phòng)が66件、東ハイフォン(Đông Hải Phòng)が68件と、ほぼ均等に配分されている。
プロジェクトの種類別内訳は以下の通りである。
- 商業住宅プロジェクト:78件(全体の58.21%)
- 社会住宅プロジェクト:15件(11.19%)
- 専門分野プロジェクト:41件(30.6%)
商業住宅が過半数を占めていることから、ハイフォン市が民間投資を積極的に呼び込み、都市の居住環境整備を加速させたい意向が読み取れる。一方で、社会住宅(低所得者向け公的住宅)も15件が含まれており、社会的公平性にも配慮した構成となっている。
2025年投資法の改正ポイント—規制緩和と事後チェックへの転換
ハイフォン市財務局のグエン・ゴック・トゥー(Nguyễn Ngọc Tú)局長は、国会決議226/2025/QH15による特別メカニズムと合わせて、2025年投資法(2026年3月1日施行)が投資家にとってより有利な環境を創出していると説明した。同法の主な改正ポイントは以下の通りである。
- 投資方針承認が必要なケースの縮小:従来は多くのプロジェクトで事前の投資方針承認が求められていたが、その対象が大幅に絞り込まれた。
- 事業条件の大幅削減:参入障壁となっていた各種の事業条件(ビジネスコンディション)が整理・削減された。
- 行政手続きの簡素化:書類や承認プロセスが簡略化された。
- 事前規制から事後チェックへの転換:管理方式が「前検(tiền kiểm)」から「後検(hậu kiểm)」へ移行し、企業がより主体的に事業活動を展開できるようになった。
この「事前規制から事後チェックへ」の転換は、ベトナムのビジネス環境改善において極めて重要な意味を持つ。従来、ベトナムでは投資プロジェクトの着手前に膨大な許認可手続きが必要であり、これが外資・内資を問わず投資のボトルネックとなっていた。今回の法改正は、こうした構造的課題に正面から取り組むものである。
実務上の課題—法改正の浸透と手続きの長期化
一方で、トゥー局長は実務面での課題も率直に認めている。主な問題点は以下の通りだ。
第一に、新法令の周知不足である。一部の企業・投資家が新しい法規定を十分に把握できておらず、新制度へのアクセスや適用に際して混乱が生じている。特に、法体系が大幅に改正・補充されている現在の過渡期においては、周知・指導・統一的運用に時間を要する状況にある。
第二に、土地使用プロジェクトにおける手続きの長期化である。投資、土地、用地解放(立ち退き・補償)に関する手続きは範囲が広く、多くのプロセスを経る必要があるため、プロジェクトの進捗に遅延が生じるケースが少なくない。ベトナムにおける用地解放問題は長年の構造的課題であり、特に都市部での住民移転を伴うプロジェクトでは数年単位の遅延が常態化している現実がある。
これらの課題に対し、トゥー局長は行政の指導・調整の一層の強化、各機関の連携・責任体制の改善、そして企業・投資家への実質的な支援と伴走の強化が必要であると述べた。
入札が必要なプロジェクトの具体的範囲
財務省入札管理局官民パートナーシップ(PPP)事務所のグエン・ティ・トゥー・ハー(Nguyễn Thị Thu Hà)副所長は、入札による投資家選定が必要なプロジェクトの範囲について詳細な説明を行った。
土地法に基づく入札対象(第126条第1項a号)
2024年土地法第126条第1項a号に基づき、以下のプロジェクトが入札対象となる。
- 複合機能を持つ都市開発区プロジェクト(新規建設または都市改修・整備)
- 省級人民評議会が入札による土地交付・賃貸を決定した農村居住区プロジェクト
業種別法令に基づく入札対象(第126条第1項b号)
土地法第126条第1項b号に基づき、国が土地を収用する投資プロジェクトのうち、業種別法令で入札が義務付けられている以下の案件も対象となる。
- 生活固形廃棄物処理施設の建設プロジェクト
- 上水道施設の建設プロジェクト
- 市場(チョー)の建設プロジェクト
- 道路サービスエリア(休憩所)の建設プロジェクト
- 空港における航空サービス施設の建設プロジェクト
2社以上の関心表明がある場合の入札対象
さらに、2社以上の投資家が関心を示した場合に入札が必要となるプロジェクトとして、以下が挙げられている。
- 教育、医療、文化、スポーツ、環境分野の社会化(民間開放)プロジェクト
- 社会住宅建設プロジェクト
- 老朽集合住宅の改修・建て替えプロジェクト
- 軍・警察向け住宅建設プロジェクト
- 投資方針が承認済みの競馬場・ドッグレース場プロジェクト
- 電力施設建設プロジェクト
入札実施の前提条件
ハー副所長は、事業用プロジェクトの入札実施にあたっての前提条件として、当該土地が土地法第79条に基づく土地収用対象に該当すること、かつ省級人民評議会が決定した入札対象土地リストに含まれていることが必要であると説明した。また、入札プロセス全体の流れ、関心表明の募集手続き、公開入札・制限入札の区分、審査・承認・契約締結の手順、入札書類の評価方法、投資家選定基準なども併せて解説された。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のハイフォン市における動きは、以下の観点から注目に値する。
不動産関連銘柄への影響:ハイフォン市だけで267件・4.7兆ドン超という大規模な開発計画が明らかになったことは、ベトナム不動産市場全体の回復基調を裏付けるものである。特に、北部ベトナムで事業展開する不動産デベロッパーにとっては大きなビジネスチャンスとなる。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するヴィンホームズ(VHM)、ノヴァランド(NVL)といった大手のほか、ハイフォン地場のデベロッパーの動向にも注目が集まるだろう。
入札制度の透明性向上と外資への影響:2025年投資法による事後チェック方式への転換や手続き簡素化は、外国投資家にとっても歓迎すべき変化である。入札プロセスの明確化は、従来「関係性」が重視されがちだったベトナムの土地取得プロセスに透明性をもたらす可能性がある。日系の不動産デベロッパーや建設会社にとっても、参入障壁が下がる方向に作用するだろう。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいて、ベトナムの法制度の透明性・予見可能性は重要な評価ポイントとなる。投資法改正による規制環境の改善や入札制度の整備は、格上げに向けた「制度面の成熟」を示すシグナルとして国際投資家から評価される可能性が高い。
残る実務的リスク:一方で、記事中にも指摘されている用地解放の遅延問題や、法令の周知不足による混乱は、引き続き注視すべきリスクである。特に日本企業がベトナムの土地関連プロジェクトに参画する際には、現地パートナーとの連携や法務デューデリジェンスの徹底が不可欠となる。法改正の過渡期にある現在は、制度と実務の間にギャップが生じやすく、この点を理解した上での投資判断が求められる。
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出典: 元記事












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