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ハノイ市人民委員会は、都市再開発プロジェクトに伴い土地を収用された住民が、社会住宅(ニャーオーサーホイ)を購入・賃借・割賦賃借できる具体的な基準を定めた決定第37/2026/QĐ-UBND号を公布した。2026年4月10日から施行されるこの新規定は、急速に進むハノイの都市整備のなかで、立ち退きを迫られる住民のセーフティネットを明確化するものであり、不動産市場および社会住宅政策の両面で注目すべき動きである。
新規定の対象者—抽選免除・条件免除の特例
今回の決定で最も重要なポイントは、一定の条件を満たす土地収用対象者が、通常の社会住宅配分で求められる「抽選」および「所得・住宅要件」を免除される点である。具体的には以下の2類型が対象となる。
第一に、都市改造・整備プロジェクトのために土地を収用され、再定住(タイディンクー)の対象として認められているにもかかわらず、再定住用住宅の購入を希望しない者。第二に、同様に土地を収用されたが再定住の条件を満たさず、かつ住宅困窮の状況にある者である。
社会住宅取得のための具体的基準
上記の対象者が社会住宅を取得するためには、以下の基準を同時に満たす必要がある。
まず、プロジェクト所在地のコミューン(社)・ワード(坊)レベルの人民委員会から、本規定に基づく対象者であることを確認する文書を取得し、購入・賃借・割賦賃借のいずれかの希望形態を選択すること。次に、ハノイ市内の他の社会住宅プロジェクトにおいて、過去に社会住宅を購入または割賦賃借した実績がないことが求められる。
さらに、以下のいずれかの具体的ケースに該当する必要がある。
ケース1:立ち退き対象地の居住用地が全面的に収用され(収用後の残地が当該地方の分筆最低面積未満となる場合を含む)、かつ収用地所在のコミューン・ワード内に他の居住用地・住宅を保有していない世帯・個人。
ケース2:土地が全面収用されず残地が存続条件を満たすため再定住の対象とならないが、7人超の世帯員を抱える大家族、または2組以上の夫婦が同一の土地上で実際に同居しており、一人当たりの住宅面積が政府の定める基準以下である場合。
ケース3:上記のいずれにも該当しないが、立ち退き対象地には居住しておらず、収用地所在のコミューン・ワード内に別の住宅を有するものの、その一人当たり住宅面積が政府基準以下である場合。
背景—ハノイの都市再開発と住宅問題
ハノイは人口約850万人(登録ベースでは1,000万人超とも推計)を擁するベトナムの首都であり、近年は環状道路の整備、旧市街地の再開発、地下鉄(メトロ)建設など大規模な都市インフラプロジェクトが同時並行で進んでいる。これに伴い、土地収用と住民移転は恒常的な課題となっており、補償額や再定住先の質をめぐるトラブルも少なくない。
ベトナムでは2024年に改正土地法が施行され、土地収用時の補償を市場価格に近づける方針が打ち出された。しかし、ハノイ中心部の地価高騰により、収用補償金だけでは同等の住居を確保できないケースが増加している。今回の決定は、こうした制度の隙間を埋め、都市再開発の円滑な推進と住民の居住権保障を両立させる狙いがある。
社会住宅はベトナム政府が低中所得者向けに供給を推進している住宅カテゴリーであり、市場価格より大幅に安い価格設定が特徴である。政府は2025年までに少なくとも100万戸の社会住宅建設を目標に掲げてきたが、土地確保や事業者のインセンティブ不足などから進捗は遅れ気味であった。ハノイ市が今回、土地収用住民への社会住宅アクセスを明確に制度化したことは、供給側・需要側双方にとって意義のある一歩といえる。
投資家・ビジネス視点の考察
本規定は直接的には住民保護の制度設計であるが、ベトナム不動産市場および関連銘柄に対していくつかの示唆を持つ。
第一に、社会住宅デベロッパーへの需要下支え効果である。抽選免除で確実に入居者が確保される仕組みは、社会住宅プロジェクトの空室リスクを低減させる。社会住宅事業に積極的なビングループ(Vingroup、ベトナム最大手のコングロマリット、銘柄コード:VIC)傘下のビンホームズ(Vinhomes、VHM)や、社会住宅に注力する中堅デベロッパーにとってはポジティブな材料となり得る。
第二に、都市再開発の加速可能性である。住民の移転先が制度的に保証されることで、立ち退き交渉が円滑化し、インフラ・再開発プロジェクトの工期短縮につながる可能性がある。ハノイでは地下鉄3号線の延伸や環状4号線の建設が控えており、周辺の建設・資材関連銘柄にも波及効果が期待される。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連では、ベトナム政府がガバナンスと制度透明性の向上を進めている姿勢を示す一例として、間接的にプラス評価される可能性がある。土地・住宅分野の法制度が整備されることは、外国人投資家が重視する「法の予見可能性」の改善を意味するためである。
日本企業の観点では、ハノイで工業団地や商業施設の開発に参画している企業(住友商事、東急など)にとって、土地収用プロセスの透明化・迅速化は事業リスクの低減につながるため、中長期的に好材料と捉えてよいだろう。
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