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ベトナム最大手鉄鋼グループであるホアファット(Hòa Phát、ティッカー:HPG)傘下の養豚事業において、ラックトゥイ(Lạc Thủy)GGP農場が2年連続で最優秀種豚農場に選ばれた。アフリカ豚熱(ASF)が全国34省・市で猛威を振るうなか、同農場は操業開始以来一度も疫病を発生させず、2025年の全生産指標を上回る成果を記録している。注目すべきは、養豚事業全体のROE(自己資本利益率)が83%という驚異的な水準に達し、ホアファットグループ内で最高の収益性を誇っている点である。
ラックトゥイGGP農場の生産実績
ラックトゥイ農場は2016年8月に着工し、2017年4月からホアビン省(現在の行政区分ではフート省に編入)の40ヘクタールの敷地で稼働を開始した。当初は商業用母豚の飼育施設として運営されていたが、その後ホアファットが自社で種豚の垂直統合型サプライチェーンを構築する方針を打ち出したことに伴い、最上位の種豚等級である「GGP(Great Grand Parent=曾祖父母豚)」に格上げされた。
GGPとは、養豚における品種改良ピラミッドの頂点に位置する等級であり、ここから生まれた豚がGP(祖父母豚)→PS(親豚)→商業用肉豚へと段階的に供給されていく。ラックトゥイ農場の母豚には、デンマークのダンブレッド・インターナショナル(DanBred International)から輸入した純血種の遺伝子が使用されており、ランドレース、ヨークシャー、デュロックの3系統で構成されている。デンマークは世界的に養豚技術の先進国として知られ、ダンブレッドはその中でも最大級の種豚改良プログラムを運営する企業である。
2025年の具体的な生産実績は以下の通りである。
- 離乳豚・後備豚・出荷肉豚の合計生産量:約43,000頭(計画比+1,800頭、達成率104.4%)
- 平均母豚頭数:1,246頭(年間計画を上回る)
- 母豚の分娩率:月次で92%〜98%を維持
- 離乳区画での損耗率:1.1%(計画値1.3%を下回る優良水準)
- 操業開始以来、疫病の発生ゼロ
アフリカ豚熱の脅威と生物安全対策
2025年はベトナム全土でアフリカ豚熱(ASF)が再び深刻化し、34の省・市で感染が確認された年であった。ASFは致死率がほぼ100%で有効なワクチンが限られており、一度農場に侵入すれば全頭殺処分に至るケースも珍しくない。こうした中でラックトゥイ農場が疫病ゼロを維持した意義は極めて大きい。
ホアファット畜産開発株式会社(Công ty Cổ phần Phát triển Chăn nuôi Hòa Phát)のグエン・ティ・タイン・ヴァン社長は、「ラックトゥイ農場はシステム内の3つの原種農場の一つであり、後備母豚の補充とロンハー(Long Hà)農場群への供給という重要な役割を担っている。また、ホアファット農業開発株式会社(HPA)が推進する『種豚+飼料』一体型の販売戦略に基づき、外部市場への後備豚の販売も行っている」と説明した。さらに同氏は、「全国統一の生物安全基準を全農場に適用することでASFから農場を守っており、今後も適切な新技術を導入して生産性の向上を図る」と述べている。
ホアファット養豚事業の収益性
ラックトゥイ農場を運営するホアファット畜産開発は、HPA(ホアファット農業開発株式会社)の4つの事業セグメントの一つである。2025年、養豚事業はROE83%という極めて高い収益性を記録し、ホアファットグループ全体で最も利益率の高い事業となった。また、HPA全体の総売上高に占める養豚事業の比率は44%に達している。
ホアファットといえば鉄鋼メーカーのイメージが強いが、近年は農業・畜産分野への多角化を積極的に進めており、養豚事業がグループの収益ポートフォリオにおいて無視できない柱に成長していることがわかる。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の報道が示す重要なポイントは以下の通りである。
1. HPG株への示唆:ホアファット(HPG)は鉄鋼市況の影響を受けやすい銘柄として認識されがちだが、養豚事業のROE83%という数値は、同グループの収益構造が鉄鋼一本足ではなくなりつつあることを示している。鉄鋼サイクルが下向きの局面でも畜産事業が利益のバッファーとなる可能性があり、グループ全体のバリュエーション再評価につながり得る。
2. ASF耐性と競争優位:ASFの蔓延は中小養豚業者の淘汰を加速させる一方、厳格な生物安全対策を実施できる大規模農場にとっては市場シェア拡大の好機となる。ホアファットの「疫病ゼロ」の実績は、種豚供給者としてのブランド価値を高め、中長期的な成長ドライバーとなろう。
3. 日本企業との関連:ベトナムの畜産業の近代化・大規模化が進む中、飼料添加物、畜舎設備、冷凍・冷蔵物流など日本企業が強みを持つ分野での商機が広がっている。ホアファットのような垂直統合型プレーヤーとの協業は、ベトナム進出を検討する日系企業にとって有力な選択肢となり得る。
4. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数格上げが実現すれば、HPGのような大型株には海外機関投資家からの資金流入が期待される。その際、鉄鋼だけでなく畜産事業の高収益性がグロースストーリーとして注目される可能性がある。
5. ベトナム経済全体のトレンド:ベトナムでは所得水準の上昇に伴い食肉消費が拡大を続けており、農業・畜産の産業化は国家的な課題でもある。大手コングロマリットが最先端の遺伝子資源と生物安全技術を導入して養豚業を近代化する動きは、ベトナム経済の構造高度化を象徴する事例と言えるだろう。
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出典: 元記事












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