ベトナム・ホーチミン市が「多極型メガシティ」へ再編——50〜100年先を見据えた都市計画の全貌

TP. Hồ Chí Minh định hình không gian phát triển đô thị theo hướng đa trung tâm
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ベトナム最大の経済都市ホーチミン市が、行政境界にとらわれない「多極型メガシティ」への転換を本格的に打ち出した。2025年4月1日に開催された市党委員会第5回会議で、都市計画・建築局のヴォー・ホアン・ガン局長が明らかにしたもので、今後50〜100年を見据えた総合都市計画の策定が進んでいる。周辺省との合併により生まれた新たな行政空間を活かし、「1空間・3ゾーン・1特区」という構造で、アジア太平洋地域を代表する持続可能な創造都市を目指す。

目次

背景——国会決議260号と省合併がもたらした転換点

今回の動きの直接的な契機は、国会決議98号を改正・補充する決議260号の施行である。決議98号は2023年にホーチミン市に対し財政・投資面での特別な権限を付与した画期的な法令だが、決議260号はこれをさらに拡充したものだ。加えて、ベトナム全土で進行中の省・市合併により、ホーチミン市の管轄範囲が大幅に拡大。従来の単一都市の枠組みを超え、広域的な「メガシティ・リージョン」としての再設計が不可避となった。

「1空間・3ゾーン・1特区」の具体像

ガン局長が示した空間構造は以下の通りである。

  • コアゾーン(都心部):引き続き金融・サービス・イノベーションの中枢を担う。現在のホーチミン市1区、3区、トゥードゥック市(旧2区・9区・トゥードゥック区が合併して2021年に誕生)などが該当する。
  • ビンズオン(Bình Dương)ゾーン:ハイテク産業の集積地として位置づけられる。ビンズオン省はもともと外資系製造業の一大拠点であり、サムスンやロッテなど多くの日系・韓国系企業が進出している地域だ。
  • バリア=ブンタウ(Bà Rịa – Vũng Tàu)ゾーン:海洋経済の玄関口として、港湾・エネルギー産業の中核を担う。カイメップ=チーバイ(Cái Mép – Thị Vải)国際深水港群を擁し、南部最大の物流ハブとしてすでに機能している。
  • コンダオ(Côn Đảo)特区:エコツーリズム・リゾートの拠点として開発される。コンダオ諸島はベトナム戦争時代の政治犯収容所跡が残る歴史的な島であると同時に、手つかずの自然が残る観光資源の宝庫でもある。

最大のポイントは、これらの各ゾーンが行政区画ではなく「経済的機能」と「バリューチェーン」に基づいて編成される点である。ガン局長は「発展空間はもはや行政境界で分断されるのではなく、経済的ロジック・機能・広域連携に基づいて運営される」と強調した。各極は都市鉄道や広域鉄道などの公共交通インフラで結ばれ、資源共有と協調的発展を可能にする。これにより、従来問題視されてきた省間の分断や内部競争の解消を図る狙いがある。

戦略的回廊と交通インフラ

都市空間の「骨格」として、複数の戦略的発展回廊が設定される。特に都市鉄道(メトロ)と広域鉄道の整備が重視されており、現在建設・計画中のメトロ1号線(ベンタイン〜スオイティエン間、2024年末に開業)を皮切りに、今後複数路線の整備が加速する見通しだ。公共交通指向型開発(TOD)の考え方を全面的に導入し、鉄道駅周辺に都市機能を集約させる方針である。

ニャーロン港地区の再開発も始動

同時に、ホーチミン市人民委員会はニャーロン港=カインホイ(Cảng Nhà Rồng – Khánh Hội)地区の都市計画推進を承認した。ニャーロン港は1911年に若きホー・チ・ミンがフランスへ渡航した歴史的港湾であり、現在はホーチミン博物館(ホーチミン市分館)が立地する。ここを含む一帯について、マットチョイ・グループ(Công ty Cổ phần Tập đoàn Mặt Trời=サングループ)がスポンサーとしてコンセプト設計に参画し、縮尺1/500の詳細計画が策定される。ウォーターフロントの再開発は、都心コアゾーンの魅力向上に直結するプロジェクトとして注目される。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の都市再編構想は、ベトナム株式市場および日本企業に対して複数の重要なインプリケーションを持つ。

不動産・インフラ関連銘柄への追い風:多極型メガシティの形成に伴い、ビンズオンやバリア=ブンタウ地域での土地・不動産需要が中長期的に拡大する可能性が高い。ホーチミン証券取引所(HOSE)上場のビングループ(VIC)、ノヴァランド(NVL)、フート・フン(PHR=ビンズオン省のゴム・不動産大手)など、関連銘柄への資金流入が見込まれる。メトロ・鉄道整備の加速は、建設大手のコテック(CTD)やフーミー・フン開発を手がけるナムロン(NLG)にもプラスに作用し得る。

日本企業への影響:ビンズオン省には多くの日系製造業が集積しており、ハイテク産業ゾーンとしての再定義は、追加投資の判断材料となる。また、メトロ整備では日本のODA(政府開発援助)が大きな役割を果たしており、住友商事やフジタなどが関与するプロジェクトの拡大余地がある。TOD型の都市開発は、日本が知見を持つ分野でもあり、コンサルティングやデベロッパーの進出機会が広がる。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2025年3月にベトナムはFTSEのウォッチリスト上で「セカンダリー・エマージング」への格上げ候補に留まっている。2026年9月の最終判断に向け、市場の透明性や流動性の改善が求められるなか、ホーチミン市の都市計画がもたらすインフラ投資の拡大と経済成長の加速は、海外機関投資家にとってベトナムの「投資適格性」を補強する材料となる。広域メガシティ構想の具体化は、ベトナム経済の構造的成長ストーリーに厚みを加えるものだ。

リスク要因:一方、50〜100年という超長期の計画であり、政権交代や財政制約、省間の利害調整など不確実性は大きい。また、計画が壮大であるがゆえに、実行フェーズでの遅延リスクも織り込む必要がある。ベトナムではメトロ1号線の建設に約20年を要した前例もあり、インフラ整備のスピードが計画に追いつくかどうかが鍵を握る。


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出典: 元記事

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