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ベトナム内務省(Bộ Nội vụ)は、公務員(viên chức=事業単位に勤務する公的職員)に対する新給与制度が正式に施行されるまでの間、現行の給与等級・係数をそのまま適用し続ける方針を提案した。2025年公務員法の具体化を目指す政令草案の中で示されたもので、給与政策の安定性を確保しつつ、職位(ポジション)ベースの人事管理体制への移行を段階的に進める狙いがある。
政令草案の全体像——「職位ベース管理」への転換
内務省が現在パブリックコメントを募集しているのは、「公務員の職位に関する政令」の草案である。2025年公務員法(Luật Viên chức 2025)が定める「職位(vị trí việc làm)を中心とした公務員管理」を具体化することが最大の目的だ。従来、ベトナムの公務員管理は職階(ngạch)や資格等級に基づいて行われてきたが、今回の改革ではポジション(職位)を人事管理の中核に据え、採用・配置・研修・評価・給与のすべてを職位に紐づける統一的な仕組みを全国レベルで構築する。
適用対象は、国家管理機関、公立事業単位(病院・学校・研究機関など)に勤務する公務員および契約労働者である。ベトナムには数百万人規模の公務員が存在し、その給与体系の変更は国家財政や消費経済に直結する極めて重大なテーマである。
職位カテゴリーの枠組み
草案では、政府が「枠組み職位一覧(danh mục vị trí việc làm khung)」を公布し、以下の3カテゴリーに分類するとしている。
- 管理職位(quản lý)——組織の管理・運営を担うポジション
- 専門・業務職位(chuyên môn, nghiệp vụ)——各専門分野の実務を担うポジション
- 支援職位(hỗ trợ)——事務補助・技術支援等のポジション
専門・業務職位と支援職位については、各職業活動分野ごとに1つの職位が対応し、それぞれの職位の中に「キャリア発展段階(bậc phát triển nghề nghiệp)」が設定される。各公立事業単位は、この枠組みから自らの機能・任務に合った職位とキャリア段階を選択し、採用・配置・研修・評価・給与政策に適用する仕組みだ。
注目すべきは、従来の制度では各省庁が所管分野ごとに独自の職位一覧を策定・通達していた点である(2020年政令第106号に基づく)。今回の草案では、この分散的な運用を廃し、政府が一元的に枠組みを定める方式に転換する。職務記述書や能力要件フレームワークについても統一テンプレートを政令に添付し、各機関がバラバラに作成する非効率を解消する方針である。
給与の移行措置——現行制度を「技術的な橋渡し」として維持
今回の草案で最も実務的に重要なのが、新給与制度が施行されるまでの経過措置である。内務省は、権限ある機関が新たな給与制度に関する文書を公布するまでの間、現行の公務員職階に基づく等級(bậc)・給与係数(hệ số lương)を「技術的な移行根拠」としてそのまま使用し、給与の格付けおよび各種手当・政策の適用を継続することを提案している。
具体的には、2025年公務員法に基づき新たに採用される公務員には、配属される職位のキャリア段階に応じて以下のように現行給与体系を適用する。
- 第1段階(bậc 1)——「職員(nhân viên)」級相当の給与
- 第2段階(bậc 2)——「事務官(cán sự)」級相当の給与
- 第3段階(bậc 3)——「専門員(chuyên viên)」級相当の給与
- 第4段階(bậc 4)——「主任専門員(chuyên viên chính)」級相当の給与
- 第5段階(bậc 5)——「上級専門員(chuyên viên cao cấp)」級相当の給与
また、管理職位に任命された公務員は、現在保持している専門職階の等級・係数に基づいて給与が格付けされる。既存の公務員が職種別等級(hạng chức danh nghề nghiệp)から新たなキャリア段階に移行する場合も、それぞれ対応する段階に転換し、現行の等級・係数をそのまま引き継ぐ形となる。
将来、権限ある機関が職位ベースの新給与制度を正式に公布した場合には、その時点で改めて当局の規定・指導に従い給与の切り替えが行われる。
背景——長年先送りされてきたベトナム給与改革
ベトナムでは2018年の第7期共産党中央委員会第7回総会(Hội nghị Trung ương 7 khóa XII)で公務員給与の抜本改革方針が決議され、当初は2021年の実施が目標とされていた。しかし新型コロナウイルスの影響による財政逼迫などを理由に繰り返し延期され、2024年7月には基本給(lương cơ sở)の30%引き上げが実施されたものの、職位ベースの新給与体系への全面移行は依然として実現していない。今回の草案は、この「移行期」を制度的に安定させるための措置と位置づけられる。
投資家・ビジネス視点の考察
一見すると、公務員の給与制度は株式市場や外国企業の事業活動と無関係に思えるかもしれないが、以下の点で注目に値する。
1. 内需・消費への影響は限定的だが注視が必要:今回の措置は「現状維持」であり、大幅な賃上げを伴うものではない。つまり、公務員層の購買力が急激に変化する局面ではなく、消費関連銘柄への直接的なインパクトは小さい。ただし、将来的に新給与制度が実施される際には、数百万人規模の所得変動が発生するため、小売・不動産・消費財セクターへの波及が見込まれる。
2. 行政改革・公務員削減の文脈:ベトナム政府は2025年に入り、省庁の大規模統合(中央省庁を18機関に再編)や公務員の大幅削減を推進している。職位ベース管理への移行は、この行政スリム化と表裏一体であり、冗長なポジションの整理が加速する可能性がある。行政効率の向上は、許認可手続きの迅速化を通じて外資系企業やベトナム進出日本企業にとってプラスに働き得る。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2025年11月に「ベトナム証券法改正」が施行予定であり、2026年9月のFTSE定期見直しでの新興市場格上げが市場のコンセンサスとなりつつある。行政改革や法制度の近代化は、格上げ審査における「制度的インフラの改善」として間接的にポジティブな要素となる。公務員管理の透明化・標準化もガバナンス向上の一環として評価される可能性がある。
4. 日系企業への実務的影響:公立病院・学校・研究機関などで勤務する公務員の処遇体系が変わることで、日系企業が連携するベトナム側のカウンターパート(研究者・技術者等)の人事異動や待遇変更が生じる可能性がある。特にODA関連事業や技術協力プロジェクトに携わる企業は、ベトナム側人材の制度変更を把握しておく必要がある。
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出典: 元記事












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