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ベトナム全土の協同組合(ホップタックサー)数が2025年末時点で約3万6,270に達し、GDP全体の約4.8%を直接的に担う存在にまで成長した。集団経済セクターの量的・質的な発展が鮮明となる一方、資金アクセスやブランド力の不足など構造的課題も浮き彫りになっている。
2025年の協同組合セクター:数字で見る成長
ベトナム協同組合連盟(Liên minh Hợp tác xã Việt Nam)のディン・ホン・タイ副主席によると、2025年中に全国で新たに約2,000の協同組合と10の協同組合連合が設立された。2025年末時点の全体像は以下の通りである。
- 協同組合数:約3万6,270(前年比+5.8%)
- 協同組合連合数:153(同+7.0%)
- 合作組(トーホップタック、より小規模な互助組織):8万1,781(同+5.1%)
注目すべきは、活動が「良好」または「やや良好」と評価される協同組合の割合が65〜70%に達し、2021〜2025年期の目標を上回った点である。1協同組合あたりの平均売上高は約31億8,500万ドンで前年比7.5%増、平均利益は2億5,500万ドンで同6.3%増となった。
会員規模と人材の質
協同組合の総会員数は約710万人に上り、うち常勤労働者は270万人である。常勤労働者の平均年収は約5,700万ドンで、前年比5〜6%の増加を記録した。管理職の学歴も改善が進んでおり、短大・大学卒以上が約31%と目標を大きく上回った。残りの69%は初級・中級レベルだが、全体として人材の底上げが進行している。
農業が主戦場——全体の66%を占める
農業分野は引き続き協同組合セクターの中核であり、全体の約66%にあたる2万3,954の協同組合が農業に従事している。バリューチェーン連携モデル、ハイテク農業の導入、安全基準に準拠した生産体制の構築が進み、企業との連携による販路確保や直接輸出に乗り出す協同組合も出てきた。これはベトナム政府が推進する「農業再構造化」と「新農村建設(Nông thôn mới)」政策と軌を一にする動きである。
一方、非農業分野(工業・手工業、建設、環境など)の協同組合は安定的に推移しているものの成長は緩慢で、小規模・低技術・限定的な市場という課題を抱える。商業・サービス分野ではEC(電子商取引)プラットフォームへの参入など柔軟な転換を図る協同組合も現れているが、ブランド力の弱さが依然として壁となっている。
金融面:1,200超の人民信用基金が農村を支える
全国1,200以上の人民信用基金(Quỹ tín dụng nhân dân)が農村部への資金供給で重要な役割を果たしている。金利変動の影響を受けつつも安定運営を維持し、高利貸し(いわゆる「闇金融」)の抑制にも寄与している。2025年には中央レベルの協同組合支援発展基金が約8,900億ドンの融資を実行し約100プロジェクトを支援。地方基金は約3,200億ドンを融資した。さらに約500の協同組合がデジタル化・科学技術応用の支援を受け、その予算は1,500億ドンに上った。
構造的課題:信用アクセス、ブランド、物流コスト
ベトナム協同組合連盟のカオ・スアン・トゥー・ヴァン主席は、セクターが抱える課題を率直に指摘している。大半の協同組合は小規模で資本が乏しく、担保資産を持たないため銀行融資へのアクセスが困難である。経営者のガバナンス能力の不足、技術の遅れ、高度人材の欠如が業績の天井となっている。
製品面ではブランドの不在、品質のばらつきが市場競争力を削いでおり、マーケティングやEC活用も不十分である。物流コストの高さも利益を圧迫する要因だ。近代的な流通チャネル(スーパーマーケットやコンビニチェーンなど)における協同組合製品のシェアは極めて低く、直接輸出能力も限定的である。さらに、政府の支援策へのアクセスも手続きの煩雑さや条件の厳しさから十分に活用できていない現状がある。
2026年以降の展望と政策提言
2026年に向けて、協同組合連盟は2026〜2030年期の集団経済発展プログラムの本格始動に注力する。各地方は年間20〜30の新設協同組合、2つの連合、100の合作組の設立を目標に掲げつつ、経営不振の組織の立て直しも進める方針である。
カオ・スアン・トゥー・ヴァン主席は国会に対し、2023年協同組合法の早期改正を要請。政府には施行細則の完全な整備を求めた。加えて、各省庁に対して協同組合向けの技術研究・移転プログラムの強化(深加工、保存技術、循環型農業、DXなど)、支援基金への資本増強、農業協同組合やハイテク生産モデル向けの優遇融資パッケージの設計を提言している。
投資家・ビジネス視点の考察
GDP4.8%という協同組合セクターの貢献度は、ベトナム経済の「底辺の厚み」を示す指標として注目に値する。上場企業への直接的なインパクトは限定的だが、以下の観点から間接的な影響は無視できない。
農業関連銘柄への波及:協同組合がバリューチェーン連携や輸出に積極化することは、農業資材(肥料、種子、農薬)、農産物加工、冷蔵物流などの上場企業にとって潜在需要の拡大を意味する。特にロクチョイ・グループ(LTG)やパンパシフィック(PAN)など農業・食品系銘柄は、協同組合との連携モデルの拡大から恩恵を受ける可能性がある。
日系企業への示唆:ベトナムの農村部に販路を広げたい日系企業にとって、協同組合は有力なパートナー候補である。特に農業機械、冷蔵・保存技術、品質管理システムなどの分野では、協同組合のDX支援策と組み合わせたビジネス展開が考えられる。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに直接影響する要素ではないが、農村部の所得向上(年5〜6%増)は国内消費市場の底上げに寄与し、ベトナム経済全体の成長ストーリーを補強する材料となる。機関投資家がベトナムの「包摂的成長」を評価する際、協同組合セクターの発展は一つの裏付けデータとなり得る。
総じて、ベトナムの協同組合セクターは「量的拡大フェーズ」から「質的高度化フェーズ」への転換点に立っている。2023年協同組合法の改正動向や支援基金の資本増強の行方は、今後のセクター発展の鍵を握るポイントとして注視すべきである。
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