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ベトナム国会は、ガソリン・軽油・航空燃料に課される主要3税(環境保護税、付加価値税(VAT)、特別消費税)の税率を一律0%に引き下げる措置を正式に決定した。適用期間は2025年6月30日までとされており、燃料価格の大幅な引き下げを通じて国民生活と企業活動の双方を支える狙いがある。世界的なエネルギー価格の不安定さが続く中、ベトナム政府が打ち出した極めて大胆な財政措置として注目に値する。
決定の概要—3つの税がすべてゼロに
今回の国会決議で対象となったのは、以下の3つの税目である。
- 環境保護税(Thuế bảo vệ môi trường):ガソリン・軽油など化石燃料に対し、環境負荷を理由に課される目的税。
- 付加価値税(VAT/Thuế giá trị gia tăng):日本の消費税に相当する間接税で、通常税率は10%。
- 特別消費税(Thuế tiêu thụ đặc biệt):嗜好品や一部の特定品目に課される税で、ガソリンには従来10%が適用されていた。
これら3税をすべて0%とする措置は、ベトナムの燃料税制史上でも極めて異例のことである。適用対象にはガソリン(RON95、E5RON92など)、ディーゼル(軽油)、そして航空燃料(ジェット燃料)が含まれる。適用期限は2025年6月30日までと明記されており、同日をもって措置は終了する予定である。
背景—なぜ今、ゼロ税率なのか
ベトナムでは2022年以降、ロシア・ウクライナ紛争に端を発した世界的なエネルギー価格高騰の影響で、燃料価格が国民生活を圧迫し続けてきた。政府はこれまでも環境保護税の段階的な引き下げやVATの一時的な減税措置を講じてきたが、今回はそれらを一気にゼロまで下げるという踏み込んだ決定に至った。
ベトナムはASEAN域内でも急速なモータリゼーションが進行中であり、オートバイの保有台数は7,000万台以上、自動車の登録台数も年々増加している。ガソリン価格は物流コスト・食料品価格に直結するため、燃料税の引き下げはCPI(消費者物価指数)を抑制する最も即効性のある手段と位置づけられている。
加えて、2025年前半はベトナム経済にとって重要な局面にある。政府はGDP成長率の二桁達成を含む野心的な目標を掲げており、企業の生産コスト低減を通じて輸出競争力を維持することが急務となっている。燃料税のゼロ化は、こうしたマクロ経済戦略の一環として理解すべきである。
航空燃料への適用—観光・航空セクターにも恩恵
今回の措置が航空燃料(ジェット燃料/Nhiên liệu bay)にも適用されている点は見逃せない。ベトナムではコロナ後の国際観光客の回復が著しく、2024年には外国人観光客数が過去最高を更新した。航空燃料コストの低減はベトジェットエア(VietJet Air/ホーチミン証券取引所:VJC)やベトナム航空(Vietnam Airlines/ホーチミン証券取引所:HVN)といった航空会社の収益改善に直結する。特にLCC(格安航空会社)であるベトジェットにとっては、燃料費が営業費用の30〜40%を占めるため、業績へのインパクトは大きい。
歳入減とのトレードオフ
一方で、この措置は国家財政にとっては大幅な歳入減を意味する。燃料関連の3税は、ベトナム国家予算において安定的な収入源の一つであり、環境保護税だけでも年間数兆ドン規模の歳入をもたらしてきた。政府はこの歳入減を、景気刺激効果による法人税・所得税の増収や、燃料消費量の増加に伴うその他の経済効果で相殺できるとの見通しを示しているとみられるが、財政赤字の拡大リスクは注視が必要である。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響
燃料税ゼロ化は、短期的には以下のセクターにポジティブなインパクトをもたらす可能性が高い。
- 運輸・物流セクター:ジェミニ(Gemadept/GMD)、ヴィエトナムポスト、各陸運企業など、燃料コストが直接的に利益率に影響するセクターは恩恵を受ける。
- 航空セクター:前述のVJC、HVNは、燃料費低減がそのまま営業利益の改善に直結する。
- 消費・小売セクター:物流コストの低下は最終消費財の価格抑制につながり、消費マインドの改善を通じて小売セクターにもプラスの波及効果が期待される。
- 石油・ガス上流セクター:ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム系企業群への影響は限定的だが、国内の燃料需要増加が間接的なプラス材料となる可能性がある。
日本企業・ベトナム進出企業への影響
ベトナムには多くの日本の製造業が進出しており、工場の稼働や製品の国内輸送に燃料コストは不可避である。今回の税率ゼロ化は、こうした在ベトナム日系企業にとってもコスト低減の追い風となる。特にベトナム北部のハノイ近郊やバクニン省、南部のビンズオン省やドンナイ省に生産拠点を持つ企業は、物流費の軽減効果を直接享受できるだろう。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月にFTSEラッセルによるベトナムのフロンティア市場から新興市場への格上げ判断が見込まれている中、今回のような積極的な財政政策は「政府の経済運営能力」の一指標として海外投資家に好印象を与える。インフレを抑制しつつ成長を加速させる政策ミックスは、ベトナムの投資先としての魅力向上に寄与する。ただし、6月末以降に税率が元に戻った場合のリバウンドリスク(一時的な物価上昇)には留意が必要である。
ベトナム経済全体における位置づけ
ベトナム政府は近年、VAT減税(通常10%→8%への一時的引き下げ)や各種手数料の免除など、需要喚起型の財政政策を積極的に展開してきた。今回の燃料税ゼロ化もその延長線上にあるが、3税同時のゼロ化という点でこれまでの措置を大きく上回るスケールである。2025年後半の政策運営——すなわち、措置終了後の「出口戦略」をどのように設計するかが、次の注目点となるだろう。
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出典: 元記事(VnExpress)












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