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ベトナム財政省が2026年第1四半期の国家財政収支を公表した。歳入が歳出を上回り、29兆9,300億ドンの黒字を確保した一方、歳出は前年同期比23.1%増と急拡大しており、景気刺激のための減税措置が今後の歳入を圧迫する構図が鮮明になりつつある。
第1四半期の歳入:82兆9,400億ドン、伸び率は鈍化
財政省の報告によると、2026年3月単月の国家歳入は22兆8,100億ドンに達した。第1四半期の累計では約82兆9,400億ドンとなり、年間予算見通しの32.8%を消化、前年同期比では11.4%の増収である。中央財政と地方財政の進捗率はそれぞれ32.8%、33.1%とほぼ均等に推移した。
歳入の柱である国内税収は74兆700億ドンで、予算見通しの33.7%に相当し前年同期比12.5%増となった。しかし注目すべきは、前年同期の国内税収が37%もの高い伸びを記録していた点である。つまり、ベースが高かった影響を差し引いても、国内税収の成長モメンタムは明確に減速しているのだ。
外部環境と減税政策が歳入に二重の圧力
歳入鈍化の背景には、中東における地政学的緊張の長期化がある。グローバルサプライチェーンへの悪影響が続き、エネルギー価格の変動や投入コストの上昇が企業収益を圧迫している。こうした状況を受け、ベトナム政府は付加価値税(VAT)や環境保護税、各種手数料の減免措置を柔軟に適用し、企業支援と消費喚起を図ってきた。しかし、これらの政策は短期的に歳入基盤を縮小させるという副作用を伴う。
輸出入関連の歳入は7兆7,400億ドンで予算見通しの27.8%、前年同期比7.6%増と堅調だった。一方、原油関連収入は1兆1,200億ドンにとどまり、予算見通しの26.1%を消化したものの前年同期比15.8%の減収となった。国際原油価格の下落と精算ベースの生産量減少が響いた格好である。
歳出は53兆100億ドン、公共投資の執行率が改善
歳出面では、3月単月が21兆9,100億ドン、第1四半期累計で53兆100億ドンとなった。年間予算の16.8%に相当し、前年同期比23.1%増と大きく拡大した。支出構造としては、開発投資と社会保障が引き続き優先されている。
開発投資支出は約11兆6,100億ドンで、国会決定予算の10.4%を消化した。首相が割り当てた計画に対する執行率は11.5%と、前年同期の9.7%から明確に改善しており、公共投資の加速が確認できる。経常支出は予算の20.8%を消化し、行政機関の運営と社会政策の実施を支えた。
国債発行と緊急財政措置
中央財政の資金調達については、第1四半期末までに8兆100億ドンの政府債を発行した。平均償還期間は10.02年、平均利回りは年4.06%であった。長期債中心の発行戦略が維持されている。
また、中央予算の予備費から5,588億ドンが緊急対応に充当された。内訳は公安省向けの4,754億ドンと、自然災害・疫病対策のための834億ドンである。加えて、テト(旧正月)期間および年初の端境期に国民を支援するため、国家備蓄米15,500トン超が放出された。
特筆すべきは、エネルギー市場の不安定化を受け、首相が2025年の中央歳入増収分から8,000億ドンを2026年予算に追加計上し、商工省を通じてガソリン価格安定化基金へ一時貸付する決定を下したことである。財政省はこれを「国内ガソリン価格の変動抑制を通じ、マクロ経済の安定、インフレ抑制、国民生活の保護に寄与する臨時措置」と位置付けている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の財政データからは、ベトナム経済の足腰の強さと、同時に浮かび上がるリスクの両面が読み取れる。
株式市場への影響:公共投資の執行率改善は、建設・インフラ関連銘柄にとってポジティブな材料である。一方、減税措置の長期化は財政余力の縮小を意味し、将来的な増税や歳出抑制への警戒が必要だ。原油収入の減少はペトロベトナム(PVN)グループ傘下の上場企業(PVD、PVS、GASなど)の業績見通しにも影を落とす。
日系企業への示唆:VAT減税や手数料減免はベトナム内需を下支えしており、消費財や小売分野で事業展開する日系企業には追い風である。ただし、ガソリン価格安定化基金への巨額拠出が示すように、エネルギーコストの不確実性は製造業の操業コスト計画に影響を与え得る。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに向け、ベトナム政府が財政規律を維持できるかは外国人投資家の注目点である。第1四半期の黒字確保は好材料だが、財政省自身が「黒字は持続的とは言い切れない」と指摘している点は重要だ。歳入の減速と歳出の拡大が同時に進む中、年後半にかけて財政収支が悪化すれば、マクロ安定性への評価に影響する可能性がある。
中期的な視点:ベトナムは経済成長を維持しつつ減税で民間を支援するという「アクセルとブレーキの同時操作」を行っている。2026年通年の財政目標を達成するためには、下半期に税収の回復が不可欠であり、中東情勢や原油価格の動向が鍵を握る。投資家としては、四半期ごとの財政データと政策変更を注視し、ポートフォリオの機動的な調整を心がけたい。
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