ベトナム失業保険制度が2026年に大改正へ─保険料算定基準の一本化と企業責任の強化

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2025年に成立した改正雇用法(Luật Việc làm 2025)が2026年1月1日に施行されることに伴い、ベトナムの失業保険制度が大きく変わる。最大の変更点は、失業保険料の算定基準となる上限給与額を「地域別月額最低賃金の20倍」に一本化することだ。従来は公務員系と民間系で異なっていた算定ルールが統一され、企業の納付責任も大幅に強化される。数千万人の労働者と、ベトナムに進出する日系企業を含むすべての雇用主に直接影響する重要な法改正である。

目次

保険料算定基準の一本化──「基礎給与の20倍」から「地域別最低賃金の20倍」へ

2013年制定の旧雇用法では、国家が定める給与体系の適用を受ける労働者(公務員・国営企業職員など)については「基礎給与(mức lương cơ sở)の20倍」を、それ以外の民間労働者については「地域別月額最低賃金の20倍」を、それぞれ失業保険料算定の上限としていた。つまり、二つの異なる基準が並立していたのである。

改正雇用法2025では、この二本立てを廃止し、すべての労働者について「政府が公布する地域別月額最低賃金の20倍」を上限とする単一基準に統一した。ベトナムでは2024年7月に地域別最低賃金が改定され、第1地域(ハノイ市・ホーチミン市など大都市圏)で月額496万8,000ドンとなっている。この水準を前提とすれば、上限額は約9,936万ドンとなる計算だが、2026年時点での最低賃金額がどう設定されるかによって具体的な金額は変動する。

この一本化は、ベトナム政府が段階的に進めてきた「基礎給与制度の廃止」と軌を一にするものだ。公務員給与改革の一環として基礎給与という概念自体が見直されるなか、社会保険・失業保険の算定基準もこれに合わせて整理された形である。

企業の納付責任を厳格化──滞納・未納への制裁と労働者への補償義務

改正法では、雇用主による失業保険料の滞納(chậm đóng)や未納(trốn đóng)への対処規定が新たに追加された。その処理は社会保険法の規定に準じて行われ、行政処分の対象となる。

さらに注目すべきは、労働者が労働契約を終了する際に雇用主が保険料を完納していなかった場合の補償義務である。雇用主は失業保険の各種給付に相当する金額を労働者に直接支払わなければならないと明記された。これは従来の法律にはなかった規定であり、企業のコンプライアンス負担を大きく引き上げるものだ。

障がい者雇用で保険料減額──インセンティブ制度の新設

改正法は、障がい者を新規採用した雇用主に対し、最大12カ月間にわたって失業保険料(雇用主負担分)を減額する優遇措置を設けた。ベトナムでは障がい者の就労機会が依然として限られており、社会的包摂を促す政策としての意義が大きい。日系製造業をはじめ、CSR(企業の社会的責任)の観点からも注目すべき制度である。

その他の主な変更点

休業中の保険料納付:休業中でも月額給与が社会保険の最低算定基準額以上である場合は、その給与額に基づいて失業保険料を納付する義務がある。

納付の一時停止:労働者が拘留中または業務停止処分を受けている期間は、労使双方とも失業保険料の納付を一時停止できる。その後、給与が全額遡及支給された場合は、停止期間分の保険料を追納する。追納は社会保険の追納と同時に行われる。

保険料免除の拡大:旧法では、産休・傷病休暇で14日以上無給の場合と、労働契約の一時停止中のみ保険料が免除されていた。改正法では、理由を問わず「月に14営業日以上無給」であれば、その月の保険料納付が免除されることとなった。適用範囲が大幅に広がったといえる。

オンライン手続きの導入:内務省雇用局の失業保険課(Cục Việc làm, Bộ Nội vụ)のチャン・トゥアン・トゥ課長によれば、改正法および施行令により、失業保険給付の申請を国家公共サービスポータル(Cổng dịch vụ công quốc gia)を通じてオンラインで提出することが可能となった。書類や手続きの詳細も明確化され、労働者の利便性が大きく向上する見通しである。

投資家・ビジネス視点の考察

日系企業・外資企業への影響:ベトナムには2024年時点で約2,000社の日系企業が進出しており、製造業を中心に大量の現地労働者を雇用している。今回の法改正は、失業保険料の算定上限の変更、滞納時の補償義務の明確化、障がい者雇用インセンティブなど、人事・労務管理の実務に直結する内容が多い。特に、労働契約終了時に保険料未納があれば企業が直接補償するという規定は、給与計算・退職手続きのオペレーションを見直す必要性を示唆している。進出企業は早期に現地の法務・労務アドバイザーと連携し、2026年1月の施行に備えるべきである。

ベトナム株式市場への影響:制度変更自体は直接的に株価を動かす材料にはなりにくいが、企業の社会保険関連コストの上昇要因として中長期的に注視が必要だ。特に労働集約型の製造業やサービス業(繊維・アパレル、食品加工、小売チェーンなど)では、数万人規模の従業員を抱えるケースも多く、コンプライアンスコストの増加が利益率に影響する可能性がある。一方で、オンライン化推進はHRテック・フィンテック企業にとっては追い風となりうる。

FTSE新興市場指数の格上げとの関連:ベトナムは2026年9月にもFTSEによる新興市場への格上げが決定される見込みだが、格上げの判断基準にはガバナンスや法制度の透明性も含まれる。社会保険・失業保険制度の整備と運用の厳格化は、ベトナムの制度的成熟を示す一要素として、間接的にポジティブな評価材料となりうる。

マクロ的な位置づけ:今回の改正は、ベトナム政府が進める社会保障制度の近代化・デジタル化の流れに位置づけられる。基礎給与制度の廃止、社会保険法の改正、電子政府の推進といった一連の改革と一体的に捉えるべきであり、ベトナムが「中所得国の罠」を回避しつつ持続的な経済成長を目指すうえでの制度的基盤整備の一環と言える。


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出典: 元記事

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