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ベトナムで建設資材の価格が急騰している。2025年3月初旬から上昇が始まり、品目によっては25〜30%もの値上がりを記録した。背景には供給の逼迫があり、公共インフラ工事から民間不動産開発まで幅広いプロジェクトへの影響が懸念されている。
何が起きているのか—建設資材価格の急騰の実態
ベトナム国内の建設資材市場では、2025年3月に入って以降、レンガ、セメント、鉄鋼、砂利、砂といった主要資材の価格が軒並み上昇している。特に一部の資材では25〜30%という大幅な値上がりが確認されており、建設業界全体に衝撃を与えている。この価格上昇は単なる季節的な変動ではなく、供給側の構造的な制約が主因とされている。
供給逼迫の背景—なぜ資材が足りないのか
ベトナムでは近年、建設資材の供給を制約する複数の要因が重なっている。まず、政府による環境規制の強化がある。河川からの砂の採取は長年にわたりベトナムの建設業を支えてきたが、過剰採取による河岸の浸食や洪水リスクの増大が社会問題化し、各省・市が採取許可の発行を厳格化している。特にメコンデルタ地域やホーチミン市周辺では、砂の供給が慢性的に不足しており、価格高騰の最大の要因の一つとなっている。
また、ベトナム政府が推進する大型インフラプロジェクトが資材需要を一気に押し上げていることも見逃せない。南北高速道路(ベトナムの南北を結ぶ全長約2,000kmの高速道路網)の整備や、ロンタイン国際空港(ホーチミン市近郊に建設中のベトナム最大級の新空港)の建設工事が本格化しており、セメント、鉄鋼、砂利などの需要が急増している。これに加え、各地方でも省道の拡幅や産業団地のインフラ整備が同時進行しているため、全国的に資材の奪い合いが起きている状況である。
さらに、一部の採石場や砂利採取場では許認可の更新手続きが遅延しており、操業停止に追い込まれるケースも報告されている。行政手続きの煩雑さがサプライチェーンのボトルネックとなっている格好である。
建設業界への影響—コスト増が工期とプロジェクト採算を直撃
建設資材価格の急騰は、ベトナムの建設業界に多方面で影響を及ぼしている。まず、すでに契約済みの工事では、資材コストの上昇分を施工業者が自己負担せざるを得ないケースが多く、中小のゼネコンや下請け業者の経営を圧迫している。固定価格契約で受注した業者にとっては、利益率の大幅な低下、場合によっては赤字転落のリスクすらある。
公共事業においても影響は深刻である。ベトナム政府は2025年に公共投資の支出を加速させる方針を打ち出しているが、資材価格の上昇は予算超過の原因となり得る。各省の建設局が公表する資材単価表の改定が追いつかず、入札価格と実勢価格の乖離が拡大しているとの指摘もある。
不動産開発の分野でも、マンションや住宅の建設コストが上昇し、最終的には販売価格への転嫁が避けられないとの見方が強い。すでにホーチミン市やハノイでは不動産価格の高騰が社会問題化しており、建設資材の値上がりがこの傾向をさらに加速させる可能性がある。
ベトナム特有の構造問題—資材供給の脆弱性
ベトナムの建設資材市場には、日本のような成熟市場とは異なる構造的な脆弱性が存在する。第一に、資材の流通経路が複雑で、中間業者が多層的に介在するため、需給の逼迫時に投機的な買い占めや便乗値上げが起きやすい。第二に、品質基準の統一が不十分な品目もあり、安価な代替品への切り替えが品質リスクを伴う。第三に、地域間の輸送インフラが未整備な部分があり、ある地域で余剰がある資材が、不足している地域に迅速に供給されないという非効率が生じている。
政府はこうした問題への対応として、人工砂(砕砂)の利用促進や、採石場の新規許認可の迅速化などの施策を打ち出しているが、短期的な効果は限定的とみられている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の建設資材価格の急騰は、ベトナム株式市場における複数のセクターに影響を与える。
セメント・鉄鋼メーカー:ハバン・セメント(HT1)、ビナコネックス(VCG)、ホアファット・グループ(HPG、ベトナム最大の鉄鋼メーカー)といった建設資材メーカーにとっては、販売価格の上昇が業績の追い風となる可能性がある。ただし、原材料コストや物流コストの上昇も同時に発生しているため、利益率の改善幅は慎重に見極める必要がある。
建設・ゼネコン:コテコンズ(CTD)やホアビン建設(HBC)など、大手建設会社はコスト増の直撃を受ける立場にある。特に固定価格契約の比率が高い企業ほど、短期的にはマイナスの影響が大きい。一方で、価格スライド条項を盛り込んだ契約を持つ企業は相対的に影響が軽微となる。
不動産デベロッパー:ビングループ(VIC、ベトナム最大手のコングロマリット)やノバランド(NVL)といった不動産大手は、建設コストの上昇を販売価格に転嫁できるかが焦点となる。高価格帯の物件を手がける企業は価格転嫁が比較的容易だが、中低価格帯を主力とするデベロッパーは需要の減退リスクに直面する。
日本企業への影響:ベトナムに進出している日系ゼネコン(大林組、清水建設など)や、工場建設を計画している製造業にとっても、建設コストの上昇は無視できない要素である。特に2025〜2026年にかけてベトナムでの工場新設・増設を予定している企業は、資材調達戦略の見直しを迫られる可能性がある。
FTSE格上げとの関連:2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げに向けて、政府は公共投資の拡大やインフラ整備を加速させている。この方針自体は株式市場にとってポジティブだが、建設資材の供給ボトルネックが解消されなければ、インフラ整備の遅延を招き、格上げに向けた経済成長シナリオに水を差すリスクもある。投資家としては、資材供給の正常化に向けた政府の政策対応をウォッチすることが重要である。
ベトナム経済は2025年も高成長を維持する見通しだが、建設資材価格の高騰はインフレ圧力の一因ともなり得る。中央銀行(ベトナム国家銀行)の金融政策にも間接的な影響を与える可能性があり、マクロ経済の観点からも注視すべきニュースである。
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出典: 元記事(VnExpress)












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