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ベトナム農業・環境省が、グリーンプロジェクト(緑のプロジェクト)および循環型プロジェクトの認定基準、さらにESG(環境・社会・ガバナンス)フレームワークの適用に関する首相決定の草案を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。認定を受けたプロジェクトには年2%の利子補給が適用される見通しで、ベトナムのグリーンファイナンス制度が大きく前進する可能性がある。
背景——なぜ今、具体的基準が必要なのか
ベトナムでは2020年環境保護法や政令08/2022/NĐ-CPなどで「グリーン信用」「循環型経済」の推進が謳われてきた。2025年7月には首相決定21/2025/QĐ-TTgが公布され、グリーン債券・グリーン信用の発行に必要な環境基準と認証手続きが定められたばかりである。しかし農業・環境省は、同決定があくまで「グリーン債券・グリーン信用向けの環境基準」に限定されており、プロジェクトそのものを「グリーン」と認定するための包括的な基準が存在しない点を問題視している。
循環型プロジェクトについても同様で、首相決定222/QĐ-TTg(2035年までの循環型経済国家行動計画)で優先分野は示されたものの、各分野で具体的にどの技術要件を満たせば「循環型」と認定されるのか、詳細な技術基準は未整備のままであった。さらに、認定を受けた事業者に対する投資支援メカニズム(利子補給など)も制度として確立されておらず、民間企業——とりわけ中小企業や個人事業主——がグリーン・循環型投資に踏み切るインセンティブが不十分だとされてきた。
草案の骨子——45種類・7分野のグリーンプロジェクト
草案によると、グリーンプロジェクトの対象は以下の7つの重点分野にまたがる計45種類のプロジェクトとなる。
- エネルギー(再生可能エネルギー、省エネ関連など)
- 交通(電動化、公共交通インフラなど)
- 建設(グリーンビルディング、省エネ建築など)
- 水資源(水処理、節水技術など)
- 農林水産・生物多様性保全
- 加工・製造業
- 環境サービス(廃棄物処理、環境修復など)
各プロジェクト類型ごとに、目標と具体的要件が明記される方針である。
循環型プロジェクト——3類型×8分野
循環型プロジェクトについては、以下の3つの類型が設定された。
- 循環設計型プロジェクト:非再生資源や水資源の使用削減、原材料効率の向上、省エネルギーを実現する設計・生産を行うもの。
- 循環使用型プロジェクト:再利用、修理、改修、用途変更、再製造、リース、シェアリングなどにより、材料・設備・製品の使用寿命を延長するもの。
- 資源回復型プロジェクト:廃棄物の分別・収集・処理・リサイクルなどにより、廃棄物発生の抑制と環境負荷の低減を図るもの。
対象となる分野は8つに整理されている。農林水産、エネルギー、鉱物、加工・製造、建設、交通、商業サービス・物流、そして工業団地・都市開発区である。各分野に具体的な技術要件が紐づけられる。
ESGフレームワーク——企業規模別の52指標
草案のもう一つの注目点は、ESG(環境・社会・ガバナンス)基準として52の指標を設定し、企業規模に応じて報告義務の範囲を段階的に定めている点である。
| 企業規模 | 最低充足指標数(52指標中) |
|---|---|
| 超小規模企業 | 7 |
| 小規模企業 | 10 |
| 中規模企業 | 12 |
| 個人事業主・家族経営 | 4 |
| その他の企業(大企業等) | 40 |
大企業については52指標中40指標以上の情報開示が求められ、国際基準に沿った持続可能性報告書の作成も推奨される。中小企業や個人事業主には負担を軽減した段階的な適用となっており、ベトナム経済の大多数を占める中小・零細企業にも裾野を広げる設計となっている。
利子補給2%の意味
本決定の最大のインセンティブは、認定を受けたグリーン・循環型プロジェクトに対して国家予算から年2%の利子補給が行われる点である。ベトナムの商業銀行の貸出金利は依然として年8〜12%前後で推移しており、2%の利子補給は資金調達コストを大幅に引き下げる効果が期待できる。これまで「基準が曖昧でグリーンローンが使えない」と嘆いていた民間企業にとって、明確な認定基準の整備と経済的インセンティブの組み合わせは、投資判断を後押しする大きな変化となるだろう。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:本制度が正式に施行されれば、再生可能エネルギー、廃棄物処理、グリーンビルディング関連企業への資金流入が加速する可能性がある。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する環境関連銘柄、工業団地開発企業、さらにはグリーンボンド発行を計画する銀行セクターにポジティブな影響が想定される。
日本企業への影響:ベトナムに進出している日系製造業にとって、サプライチェーン上でのESG対応は既に避けられない課題である。今回の基準が整備されることで、ベトナム側のパートナー企業やサプライヤーにもESG報告が求められるようになり、日系企業のサプライチェーン管理がより体系的に行える環境が整う。一方で、基準への適合コストが取引先に転嫁される可能性もあり、調達戦略の見直しが必要になるケースも出てくるだろう。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2025年9月にFTSEラッセルがベトナムをセカンダリー・エマージング市場に格上げするかどうかの判断を下す見込みであるが(2026年9月の最終決定に向けた段階的評価)、ESG開示制度の整備は機関投資家が重視するガバナンス改善の一環として、格上げ判断にプラスに働く要素である。ベトナム政府が国際基準に沿ったESGフレームワークを法制度として整備する姿勢は、グローバルな資金を呼び込むうえで大きなシグナルとなる。
ベトナム経済全体の位置づけ:ベトナムは2050年カーボンニュートラル目標を掲げ、COP26でのコミットメント以降、グリーン移行を加速させている。今回の基準策定は、政策の「理念」を「実行可能な制度」に落とし込む重要なステップであり、今後のグリーンボンド市場の拡大、カーボンクレジット取引市場の整備とも連動する動きとして注目すべきである。
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