ベトナム暗号資産課税、取引ごとの0.1%源泉徴収を撤回へ─通達草案の重要修正を読み解く

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ベトナム財政省は、暗号資産(コード化資産)市場における税務申告・源泉徴収・納税・確定申告に関する通達草案について、社会からの意見募集結果とその対応方針をまとめた文書を公表した。最大の注目点は、当初案に盛り込まれていた「取引ごとの譲渡収益に対する0.1%の源泉徴収」規定が削除されたことである。暗号資産市場の制度化を急ぐベトナムで、課税ルールの設計がどのように進んでいるのか、詳細を読み解く。

目次

取引ごとの0.1%源泉徴収規定を削除──その背景

通達草案の第4条第2項には、暗号資産の譲渡取引ごとに売却収益の0.1%を源泉徴収するという規定が盛り込まれていた。これに対し、ベトナム国家銀行(中央銀行)が「海外組織および個人の取引ごとの収益をどのように確定するか、具体的な規定が不足している」と指摘した。

この意見を受け、税務総局は同規定を削除し、暗号資産の譲渡収益については現行の税制における収益に関する一般規定に基づいて取り扱う方針へ転換した。つまり、取引ごとに逐一0.1%を天引きするのではなく、既存の所得税・法人税の枠組みの中で課税を行うことになる。

この変更は、実務上極めて大きな意味を持つ。暗号資産は1日に何十回もの取引が行われることが一般的であり、取引ごとの源泉徴収は取引所やサービス提供者にとって膨大な事務負担を生む。また、海外投資家の取引収益の把握という技術的課題が未解決のまま規定だけ先行させることへの懸念もあった。

居住者・非居住者の分類は維持──国籍基準の提案は却下

通達草案に含まれる申告書様式「01/TSMH」(暗号資産を譲渡する個人・海外組織向けの源泉徴収申告書)について、ダナン市人民委員会およびダナン市税務局は、個人を「居住者」と「非居住者」に分類するのではなく、暗号資産譲渡が発生したすべてのケースを一括管理する方式に変更すべきだと提案していた。居住ステータスは時間の経過とともに変わり得るため、初期登録情報に基づくサービス提供事業者の申告が不正確になるリスクがあるというのがその理由である。代替案として、ベトナム国籍の個人と外国籍の個人で分類する方法が提案された。

しかし、税務総局はこの提案を採用しなかった。その理由として以下の点が挙げられている。

  • 居住者・非居住者の分類は、個人所得税法および関連ガイダンスに適合しており、OECD(経済協力開発機構)の暗号資産報告フレームワーク(CARF)や二重課税防止協定の原則とも整合的である。
  • ベトナムの税法は国籍に基づいて納税義務を判定していない。ベトナム国籍の者が非居住者である場合もあれば、外国籍の者が居住者となる場合もあるため、国籍は納税義務の判定基準として不適切である。
  • 居住ステータスの変動は技術的な問題ではあるが、居住ステータスは課税年度ごとに判定されるため、既存の税務システムで対応可能である。逆に、最初から居住情報を収集しなければ、後のデータ照合や納税義務の調整に支障をきたす。

この判断は、ベトナムが国際的な税務透明性の枠組みに沿った制度設計を重視していることを明確に示している。OECDのCARFは、暗号資産に関する国際的な情報交換の標準フレームワークとして2027年頃の本格運用が見込まれており、ベトナムはこれに先行的に対応する姿勢を打ち出している。

制裁規定は通達に含めず──別途政令で対応

ホーチミン市税務局は、暗号資産のサービス提供者や譲渡を行う組織・個人に対する強制執行措置を通達に追加するよう提案していた。これに対し税務総局は、国家証券委員会(SSC)が暗号資産に関する処罰政令を主導して策定中であり、暗号資産市場における違反行為の処罰や執行措置はこの政令に基づいて行われると説明した。税務関連の違反については、税務管理法および関連するガイダンス文書の規定に従い処理される。

つまり、今回の通達はあくまで「税務申告・徴収の手続き」を定めるものであり、違反時の制裁は別の法令体系で整備されるという役割分担が明確にされた形である。

暗号資産課税は証券課税モデルを準用

司法省は、暗号資産市場における申告・源泉徴収・納税・確定申告の具体的な手続き・書類・様式を明確化するよう求めていた。これに対する税務総局の説明は、制度設計の全体像を理解する上で重要である。

2025年政府決議第05号(05/2025/NQ-CP)の第4条第9項に基づき、暗号資産の取引・譲渡・事業にかかる税制は、独自の税制が整備されるまでの間、証券に準じて適用される。このため、通達草案における手続き・書類・様式は、現行の証券に対する税務管理メカニズムを基盤とし、デジタルプラットフォーム上のビジネスに対する税務管理に関する政令第117/2025号(117/2025/NĐ-CP)も参照して設計されている。

具体的には以下のように整理される。

  • 暗号資産の事業・サービス提供活動(取引市場の運営、自己売買、保管、発行プラットフォームの提供など、証券事業に類似する活動)は、パイロット期間中はベトナム国内企業のみが実施可能。これらの企業は、政令第126/2020号および通達第80/2021号に基づく通常の事業活動と同じ申告・納税メカニズムを適用し、新たな行政手続きや書式は発生しない。
  • 暗号資産の譲渡活動は、基本的に証券の譲渡と同様の扱いとなり、国内外の投資家が参加する。海外組織、居住者・非居住者の個人による暗号資産の取引・譲渡に対する納税義務は、サービス提供事業者による源泉徴収・代理納付のメカニズムを通じて履行される。これは現行の証券譲渡で適用されているモデルと同一である。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の通達草案修正は、ベトナムにおける暗号資産の制度化が着実に進んでいることを示すと同時に、いくつかの重要な示唆を含んでいる。

1. 市場の成熟度向上のシグナル:取引ごとの0.1%源泉徴収という「やや粗い」課税方式が撤回され、既存の税体系との整合性が重視されたことは、ベトナム当局が暗号資産市場を一時的なブームではなく、金融インフラの一部として制度設計していることの表れである。これはベトナム証券市場全体のガバナンス向上にも資する動きといえる。

2. FTSE新興市場指数格上げとの関連:ベトナムはFTSE新興市場指数への格上げが2025年9月のレビューで決定される可能性が取り沙汰されている。暗号資産市場の課税・規制制度の整備は、直接的にはFTSEの評価基準(市場マイクロストラクチャー、規制環境など)に影響するものではないが、ベトナムの資本市場全体の制度的成熟度を国際的に示す材料の一つとなる。特にOECDのCARFへの対応姿勢は、国際的な税務透明性の観点からプラスに評価される可能性がある。

3. 証券会社・取引所関連銘柄への影響:暗号資産の課税が証券と同じ枠組みで行われることが明確化されたことで、将来的にベトナムの証券会社やフィンテック企業が暗号資産関連サービスに参入する際のルールの予見可能性が高まった。SSI証券、VNダイレクト証券(VND)、ホーチミン証券取引所に上場するFPTなどのテクノロジー企業にとって、中長期的なビジネス機会の拡大につながる可能性がある。

4. 日本企業への示唆:ベトナムでフィンテックやデジタル資産関連事業を展開する、あるいは今後参入を検討する日本企業にとって、課税ルールの枠組みが証券準用で整理されつつある点は重要な情報である。ただし、パイロット期間中の暗号資産事業・サービス提供はベトナム国内企業に限定されるため、日本企業が直接サービス提供者として参入するには、現地法人を通じた対応が必要となる。二重課税防止協定の適用を意識した居住者分類の維持は、日越租税条約の枠組みとも整合的であり、日本人投資家にとっても課税関係の明確化に寄与する。

ベトナムは暗号資産に対して全面禁止でもなく、無規制でもない「規制されたパイロット」というアプローチを取っている。課税制度の設計が具体化するにつれ、市場参加者にとっての不確実性は低減する方向にある。今後、国家証券委員会が策定中の処罰政令や、独自の暗号資産税制の制定動向にも注視が必要である。


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出典: 元記事

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