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ベトナム株式市場が2025年1月の高値から12%超の調整局面を迎えるなか、証券大手アグリセコ(Agriseco=ベトナム農業銀行系の証券会社)が「高配当×現金リッチ」をテーマに厳選した5銘柄のポートフォリオが注目を集めている。いずれも財務体質が健全で、中長期にわたる配当の持続性が高いと評価される企業ばかりだ。VN-Indexの不安定な地合いのなか、配当インカム戦略は日本の投資家にとっても有力な選択肢となり得る。
市場環境──なぜ今「高配当戦略」なのか
ベトナムの代表的株価指数であるVN-Indexは、2025年1月に記録した直近高値から12%以上下落している。背景には中東地域の地政学リスクの高まりがあり、原油価格の急騰がインフレ懸念やエネルギーコストの上昇、さらにはグローバルなサプライチェーンリスクへの警戒を一気に強めた。ベトナムは製造業の輸出比率が高く、エネルギーコストや物流コストの上昇は企業収益を直撃しやすい構造にある。
こうした局面では、投資家心理は一段と慎重に傾く。短期的なキャピタルゲインを狙うよりも、安定した配当(キャッシュフロー)を生むポートフォリオを構築し、下落リスクを緩和しながら長期的な資産形成を目指す――いわゆる「配当インカム戦略」が合理的な選択となる。アグリセコが今回公表した5銘柄は、まさにこの考え方に基づいて選定されたものである。
厳選5銘柄の詳細
① VEA(VEAM=ベトナムエンジン・農業機械総公社)──配当利回り約14%
VEAはポートフォリオの筆頭に挙げられた銘柄である。トヨタ・ホンダ・フォードとの合弁事業を通じた自動車関連収益を主軸とし、安定したキャッシュフローを誇る。配当利回り(現金配当ベース)は2023年が12.2%、2024年が12.7%、2025年が13.6%と年々上昇しており、現在の株価水準と2026年の予想配当をもとに算出した利回りは約14%に達する。
ROE(自己資本利益率)は直近4四半期で約30%と極めて高く、数年間にわたりこの水準を維持している。バランスシートを見ると、現金・現金同等物および短期金融資産の合計が1兆4,166億ドンに達し、総資産の約50%を占める。まさに「キャッシュリッチ」の代表格だ。バリュエーションもPER約6.1倍、PBR約1.7倍と、高いROEと配当利回りに対して割安感がある。
② BMP(ビンミン・プラスチック)──南部ナンバーワンの管材メーカー
BMP(ビンミン・プラスチック=ホーチミン市拠点の大手プラスチック管メーカー)は、ベトナム南部における塩ビ管市場でトップシェアを誇る。配当利回りは2023年が11.3%、2024年が9.0%、2025年が7.3%で、2026年予想ベースでは約10%の水準となっている。
2026年の事業見通しが明るい理由は大きく二つある。一つは南部市場での圧倒的なブランド力と販売網、もう一つはベトナム政府が公共投資の執行を加速していることだ。高速道路、工業団地、都市インフラなどの大規模プロジェクトでは大量のプラスチック管材が必要となり、BMPは最大の受益者の一つとなる。
財務面では借入金がほぼゼロに近く、現金・短期金融資産は2,000億ドン超で、総資産の約61%を占める。安定した営業キャッシュフローが高水準の現金配当を支えている。
③ SLS(ソンラー製糖)──西北地方の砂糖メーカー
SLS(ソンラー製糖=ベトナム北西部ソンラー省を拠点とする製糖会社)は、自社管理のサトウキビ原料地帯を西北地域に持ち、原料調達から製品販売まで一貫体制を敷いている。ROEは2025年に20%超を達成し、長年にわたり高い水準を維持してきた。
過去5年間の現金配当比率は額面に対し80〜200%と幅広いが、一貫して高水準だ。配当利回りは2023年が10.4%、2024年が10.8%、2025年が9.3%で、2026年予想ベースでも9.3%を見込む。ベトナムの砂糖産業は国内需要が底堅く、輸入砂糖に対するセーフガード措置も追い風となっている。
④ SMB(サベコ・ビンディン=ビンディンビール)──配当利回り約14%
SMB(サベコ・ビンディン=ベトナム最大手ビールグループSabeco傘下のビール・飲料メーカー)は、中部高原〜南中部沿岸地域を主要市場とする地域密着型のビール会社である。Sabeco(サイゴンビール=タイ・ビバレッジ傘下)のエコシステムに属しており、ブランド力と流通網で安定した収益を上げている。
配当利回りは2023年が12.2%、2024年が8.1%、2025年が13.8%で、2026年予想ベースでは約14%という高水準だ。借入金比率は低く、現金・短期金融資産は4,310億ドンで総資産の41%を占める。バリュエーションはPER約6.6倍、PBR約1.9倍と、ROEと配当利回りの高さを考慮すれば十分に割安と評価できる。
⑤ SCS(サイゴン・カーゴサービス)──航空貨物の雄
SCS(サイゴン・カーゴサービス=ホーチミン市タンソンニャット国際空港で航空貨物の荷役・取扱サービスを提供)は、同空港の貨物ターミナルで45〜48%のシェアを握るドミナント企業である。借入金はほぼゼロ、現金・短期金融資産は1,500億ドン超で総資産の72%を占めるという驚異的なキャッシュリッチ体質を誇る。
2026年の成長ドライバーとしては、①航空貨物需要の長期的な拡大トレンド、②建設中のロンタイン新国際空港(ドンナイ省、ホーチミン市近郊に2026年開業予定の大型空港)の貨物ターミナル運営への参入機会が挙げられる。現金配当比率は25〜30%で安定しており、2026年予想の配当利回りは10.4%に達する。
投資家・ビジネス視点の考察
1. ベトナム株式市場への影響
VN-Indexが調整局面にある今、高配当・低バリュエーション銘柄には資金の逃避先としての役割が期待される。アグリセコが公表した5銘柄はいずれもPERが6〜7倍台、配当利回りが9〜14%と、日本や他のアジア市場と比較しても突出した水準にある。市場全体のセンチメントが改善するまでの「守りのポートフォリオ」として、機関投資家の注目度は高まるだろう。
2. 日本企業・日本人投資家への示唆
VEAはトヨタ・ホンダとの合弁利益が収益の柱であり、日本の自動車産業と密接なつながりを持つ。日本人投資家にとっては馴染みのあるビジネスモデルであり、為替リスクを考慮しても年14%近い配当利回りは魅力的だ。BMPについてはベトナムのインフラ投資拡大の恩恵を受けるため、同国に進出する建設・素材関連の日本企業にとっても市場動向の先行指標となり得る。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数への格上げが決定される見込みである。格上げが実現すれば、パッシブファンドを中心に数十億ドル規模の海外資金がベトナム市場に流入すると見られている。流動性が高まれば、今回のような高配当・優良財務銘柄の再評価が進む可能性がある。特にVEAやSCSのように外国人投資家の保有余地がある銘柄は、格上げ前後の資金流入で株価の見直し買いが入るシナリオも考えられる。
4. ベトナム経済のトレンドにおける位置づけ
ベトナム政府はGDP成長率8%以上を目標に掲げ、公共投資の大幅な増額を進めている。BMP(プラスチック管材)やSCS(航空貨物)は、まさにこのインフラ・物流拡大トレンドの直接的な恩恵を受けるセクターだ。一方、SLS(製糖)やSMB(ビール)は内需型の安定成長銘柄であり、景気サイクルに左右されにくいディフェンシブ性を備えている。5銘柄のセクター分散は、単なる高配当狙いにとどまらない戦略的なポートフォリオ構築として評価できる。
ベトナム市場のボラティリティが高まる局面だからこそ、「配当という確実なリターン」を軸に据えた投資戦略の価値は増す。今回のアグリセコの推奨リストは、ベトナム株投資の入口として、あるいは既存ポートフォリオのリスク分散先として、日本の投資家にとっても参考になるだろう。
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