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ベトナム株式市場で売買代金が急減し、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になっている。5月22日の両取引所(ホーチミン証券取引所=HOSE、ハノイ証券取引所=HNX)の売買代金は約19兆7,000億ドン(板寄せ・協議取引除く)にとどまり、市場は「休むも相場」の局面に入った可能性がある。
売買代金の急減が示すもの
22日の売買代金19兆7,000億ドンは、前日の18兆3,000億ドンからはわずかに回復したものの、依然として極めて低い水準である。先週の両取引所平均は1日あたり22兆7,000億ドン、今週前半3営業日の平均は約28兆3,000億ドンであったことを考えると、週後半にかけて急速に取引が細っていることがわかる。短期の投機資金(いわゆる「ホットマネー」)が防御姿勢に転じ、取引自体を控えている状況を如実に反映している。
VN指数1900超えから72%の銘柄が下落
今回の局面で特に注目すべきは、中長期投資家にとっても厳しい環境が続いている点である。VN指数(VNI)が5月7日に1,900ポイントを突破して以降、VNAllshare(ベトナム株式市場のほぼ全銘柄をカバーする指数)構成銘柄のうち実に72%が値下がりしている。そのうち25%は5%超の下落、約半数が3%超の下落を記録した。指数自体は主力の大型株(いわゆる「柱銘柄」)に支えられて堅調に見えるが、個別銘柄レベルでは広範な調整が進行中である。
この日もVinグループ(ベトナム最大手コングロマリット)関連銘柄が午後に若干持ち直したものの、主導セクター全体としては弱含みが続いた。VNIが上昇する局面では柱銘柄以外の上昇は限定的で、VNIが下落する局面では幅広い銘柄が影響を受けるという非対称な構造が、投資家心理をさらに悪化させている。22日だけでも約100銘柄が1%超の下落となり、その多くは直前まで指数と逆行して上昇していた銘柄であった。
短期トレードも「ブルトラップ」頻発で困難
短期売買の観点からも状況は厳しい。ここ2週間、いわゆる「ブルトラップ」(上昇に見せかけて反落する罠)が頻発している。具体例として、5月20日の「急落後の急反発」局面で終値付近で買い付けた場合、22日の受渡日(T+2)時点で2%程度の利益を確保できた銘柄はわずか約10%にすぎなかった。T+(受渡日までの短期売買)で利益を得られる銘柄は存在するものの、確率的には極めて低い状況である。
つまり、現在の市場環境では短期的なリターンとリスクのバランスが著しく悪化しており、わずかな機会を「拾い集める」ような取引戦略は割に合わないということである。
デリバティブ市場も難易度が上昇
先物・デリバティブ市場も同様に難しい局面を迎えている。VN30指数(時価総額上位30銘柄で構成)の大きな変動がベーシス(先物と現物の価格差)によって相殺される展開が続いた。VN30が2,022ポイントから2,002ポイント付近まで下落した局面ではベーシスが13〜14ポイントのディスカウントとなり、ショート(空売り)で利益を取ることが困難であった。一方、2,002ポイント付近からの反発は午前の引け間際のわずか数分で発生し、ロング(買い)のエントリーも現実的には不可能であった。午後のVN30は2,015ポイント付近でのリテスト(再挑戦)に失敗し、ベーシスは改善したものの値幅が不十分で、ショートの効率も極めて低かった。VN30の終値は2,010.93ポイントであった。
翌営業日のVN30のレジスタンス(上値抵抗)は2,015、2,032、2,042、2,051、2,064、2,074ポイント。サポート(下値支持)は2,002、1,991、1,981、1,966、1,954、1,938ポイントとされている。
今後の見通し——「休む」が最善策か
投機資金が縮小・防御モードに入っていることから、今後数日間の売買代金はさらに減少する可能性がある。売買代金が薄い中では大型の柱銘柄の影響力がより顕著になるが、指数の上下よりも重要なのは、現物市場がまだエントリーすべきタイミングではないという点である。一方、デリバティブ市場は薄商い環境下で柱銘柄への影響が出やすく、かえって活発化する可能性がある。
現時点では市場の地合いを好転させる明確なカタリスト(材料)は見当たらない。情報面でも新たな好材料はなく、むしろ地政学的な紛争リスクの再燃が懸念材料として残る。中長期投資家も含め、しばらくは様子見が賢明であり、薄商いの中で小幅な調整局面が訪れる可能性が高いと考えられる。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の売買代金急減と広範な個別銘柄の調整は、ベトナム市場が抱える構造的な課題を改めて浮き彫りにしている。VN指数が大型株に偏重した構造であるため、指数が堅調でも個人投資家の体感は大きく異なるという「指数と実態の乖離」問題である。
2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定を控え、市場の流動性や価格発見機能の改善が求められている中での売買代金急減は、やや気がかりな兆候である。ただし、格上げが実現すれば海外機関投資家の資金流入が期待され、現在のような薄商い局面はむしろ中長期的な仕込みの好機となる可能性もある。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、ベトナム株の軟調が直接的に事業に影響を与えるわけではないが、ベトナム国内の投資マインドの冷え込みは消費や不動産など内需関連セクターの先行指標として注視すべきである。
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