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ベトナム証券市場が、世界的な株価指数算出会社MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の新興市場(Emerging Market)認定基準18項目のうち17項目を充足できる見通しであることが、SSIリサーチ(ベトナム大手証券SSI証券の調査部門)の最新レポートで明らかになった。2026年のFTSE Russell(フッツィー・ラッセル)による新興市場格上げが目前に迫るなか、ベトナムはその先のMSCI格上げという中長期的な戦略目標に向けて着実に歩を進めている。
FTSE格上げは2026年9月が有力—SSIリサーチの見通し
SSIリサーチはFTSE Russellの専門的な助言を得て作成した最新レポートにおいて、ベトナムが2026年4月8日朝に公表予定のFTSE中間評価(Semi-Annual Review)を通過し、同年9月から各パッシブファンド(指数連動型ファンド)による資金流入が始まるとの見通しを示した。パッシブファンドからの資金流入額は推定で最大17億USD規模とされるが、サウジアラビアが2019年に格上げされた際と同様、一括ではなく3〜5回に分けて四半期ごとに段階的に組み入れられる可能性が高いとしている。市場への急激なインパクトを抑えるための措置である。
MSCI基準17/18充足の根拠—改革の全体像
FTSE格上げの次なる戦略目標として位置づけられるMSCIの新興市場認定に向け、ベトナムは複数の制度改革を同時並行で進めている。SSIリサーチによれば、以下の改革が順調に進展すれば18項目中17項目を満たすことが可能である。
(1)事前証拠金不要取引(NPF)の安定運用
外国人投資家にとって長年の障壁であった「取引前の証拠金(プリファンディング)要件」について、NPF(Non-Prefunding)メカニズムがすでに安定的に稼働している。これはMSCIが重視する「清算・決済(Clearing & Settlement)」基準の改善に直結する。
(2)CCP(中央清算カウンターパーティ)の導入
CCP(Central Counterparty Clearing)システムの導入もロードマップに沿って進んでおり、実現すれば証券貸借(Stock Lending)および空売り(Short Selling)に関するMSCI基準の充足が見込まれる。現時点では個別銘柄の空売りは認められていないものの、VN30先物およびVN100先物を通じたショートポジションの構築はすでに可能となっている。
(3)情報開示の英語化推進
規制当局および上場企業は段階的に英語での情報開示を拡充しており、MSCIが求める「透明性」「情報開示」「国内外投資家の平等なアクセス」に関する基準への対応が進んでいる。
(4)外国人持株比率上限(FOL)の緩和
ベトナムにとって最大のボトルネックの一つであった外国人持株比率上限(Foreign Ownership Limit=FOL)についても、顕著な進展がみられる。政府は航空業界の外資上限を34%から49%へ引き上げることを検討中であり、LPB(リエンベト・ポストバンク)など一部企業は自主的にFOL制限の見直しや撤廃に着手している。こうした動きの結果、ホーチミン証券取引所(HOSE)における実効FOL比率は2025年に41.71%から44.64%へ改善した。時価総額の大きい企業が外資100%の上限で新規上場したことも寄与している。
残る最大の課題—外国為替の自由化
18項目中、唯一充足が困難とされているのが「外国為替市場の自由化(FX Liberalization)」である。為替レートの完全な柔軟性確保や、制限のないヘッジ手段の提供には、なお時間を要する見通しである。
ただし、SSIリサーチはこの点について重要な補足を加えている。現在MSCIの新興市場に分類されているインド、インドネシア、韓国、フィリピン、台湾、エジプト、ブラジル、コロンビアといった国・地域も、この基準を完全には満たしていない。つまり、外国為替の自由化はMSCIのウォッチリスト入りや新興市場認定の「絶対的な前提条件」ではない可能性がある。これはベトナムにとって大きな追い風と言える。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のSSIリサーチのレポートは、ベトナム株式市場の構造改革が「FTSE格上げ」という直近のイベントだけでなく、その先のMSCI格上げまで視野に入れた包括的なものであることを示している。投資家にとっての主要なインプリケーションは以下の通りである。
①パッシブ資金の流入インパクト:FTSE格上げだけで推定17億USDのパッシブ資金が流入する見込みであり、将来のMSCI格上げが実現すれば、さらに大規模な資金流入が期待される。格上げの「期待」だけでも投資家行動に変化を与え、正式な格上げ前から資金が流入し始める傾向がある点は、先行事例(サウジアラビア、クウェートなど)が証明している。
②注目銘柄・セクター:FOL緩和の恩恵を受ける銀行、航空、不動産セクターに加え、HOSE上場の大型株全般がパッシブファンドの組み入れ対象となるため、流動性と株価の押し上げ効果が見込まれる。特にFOL制限を自主的に撤廃・緩和した企業は外国人投資家の買い対象になりやすい。
③日本企業への影響:ベトナムの市場インフラ整備は、すでにベトナムに進出している日本企業にとっても朗報である。市場の透明性向上、英語での情報開示拡充、決済制度の国際標準化は、日本企業のベトナム子会社による現地での資金調達や、日本の機関投資家によるベトナム株投資のハードルを下げることに直結する。
④リスク要因:外国為替の自由化が依然として未達である点、また格上げスケジュールが市場改革の進捗次第で後ろ倒しになるリスクは認識しておく必要がある。加えて、パッシブ資金流入は段階的に行われるため、短期的な過度の期待は禁物である。
総じて、ベトナム株式市場は「フロンティア」から「新興市場」へのステージ転換という歴史的な局面を迎えている。FTSE格上げを2026年の最重要カタリストとしつつ、その先のMSCI格上げまで見据えた中長期投資の視点が、今後ますます重要となるだろう。
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出典: 元記事












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