ベトナム株式市場が急落する中、電力株が逆行高——GEE・PC1・NT2など注目銘柄の中長期展望を解説

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中東地域の地政学リスクがアジア市場全体を揺るがす中、ベトナムのVN-Indexも午前の取引で22.65ポイント安の1,650.15まで下落し、値下がり銘柄は247に達した。ところが、わずか66銘柄しか上昇しなかったその中で、電力セクターの銘柄群が際立つ逆行高を演じている。GEE、PC1、TV2、NT2、GEGといった電力関連株がなぜ買われているのか、その背景と中長期の展望を詳しく解説する。

目次

全面安の中で「逆行高」を見せた電力銘柄群

中東紛争の激化は原油価格の高騰を通じてインフレ懸念を再燃させ、世界の株式市場にリスクオフの波が広がっている。ベトナム市場もアジア株安に連動し、VN-Index(ホーチミン証券取引所の主要指数)は大幅続落となった。しかし、その荒れた相場の中で資金が集中したのが電力セクターである。具体的には以下の銘柄が市場全体の下落を尻目に力強い上昇を見せた。

  • GEE(GEE Energy、旧Gia Lai Electricity Joint Stock Company=ベトナム南中部の電力会社)
  • PC1(Power Construction Joint Stock Company No.1=電力建設大手)
  • TV2(Tư vấn Xây dựng Điện 2=電力建設コンサルティング企業)
  • NT2(Nhon Trach 2 Thermopower Joint Stock Company=ニョンチャック2火力発電所運営)
  • GEG(Gia Lai Electricity Joint Stock Company=再生可能エネルギー発電事業者)

電力株への資金流入は前週からすでに始まっていた。背景には、市場全体のボラティリティが高まる中で電力セクターが持つ「ディフェンシブ(防御的)」性格への注目がある。ベトナムでは現在、銀行の預金金利が年7%前後、一部銀行のキャンペーン金利では8%超に達しており、現金保有の魅力が高い局面でもある。それでも電力株が買われるのは、中東情勢の緊迫によるエネルギー価格上昇が電力会社の収益環境を構造的に押し上げるとの見方が広がっているためである。

石炭火力発電——国内炭の価格優位性が追い風に

ベトナムの証券会社BSC(BIDV Securities Company)が発表した電力セクターのアップデートによると、石炭火力発電は他の燃料に比べてコスト上昇が緩やかなため、電力供給における稼働率(ディスパッチ)が引き上げられる見通しである。ベトナムの発電用石炭は約70%が国内産であり、その価格は政府によって厳格に管理されている。結果として国内炭価格は国際価格を30〜40%下回る水準に抑えられており、これがLNG(液化天然ガス)など輸入燃料に対する大きなコスト優位性となっている。

国内ガス火力発電——安定供給と優先稼働の恩恵

国内の天然ガスを使用するガス火力発電所は、電力システムの安全性確保のため引き続き優先的に稼働される位置づけにある。BSCによれば、国内ガスの供給は2026〜2027年にかけて比較的安定した水準が見込まれている。ベトナム南部を中心に、バクリエウ(Bạc Liêu)沖やナムコンソン(Nam Con Son)盆地からのガス供給パイプラインが整備されており、国内ガス火力は安定的な発電源として中期的に重要な役割を担い続ける。

LNG火力発電——ニョンチャック3・4号機の動向

ベトナム初の本格的なLNG火力発電所であるニョンチャック(Nhơn Trạch)3号機および4号機は、事前に輸入したLNG在庫を活用して5〜6月頃まで安定稼働を続ける見通しである。注目すべきは、LNG価格が13 USD/MMBTU(百万英国熱量単位)を上回る水準が続く場合、両発電所は国内ガスへの燃料切り替えが可能であるという点だ。国内ガスの価格は輸入LNGに対して35〜40%安いため、この切り替えオプションは収益性を大きく左右する。中東情勢の長期化で国際LNG価格が高止まりした場合、むしろ国内ガスへのシフトを通じて採算が改善するという逆説的な構図が生まれる。

水力発電——競争市場価格の上昇が追い風も限定的

水力発電はベトナムの電力供給において常に最優先で稼働される電源である。燃料価格の高騰は競争電力市場(CGM:Competitive Generation Market)における市場価格を押し上げるため、水力発電事業者の利益改善に寄与する。しかしBSCは、水力発電の競争市場での販売比率がわずか2%にとどまる点を指摘しており、燃料高による恩恵の程度は慎重に見極める必要があるとしている。水力発電は大部分がEVN(ベトナム電力公社)との長期契約に基づく固定価格での販売であり、市場価格上昇の恩恵を受けにくい構造になっている。

2026年短期見通し——エルニーニョ再来で火力発電にさらなる追い風

BSCは2026年の短期見通しとして、火力発電の稼働率が2025年対比で大幅に上昇すると予測している。その根拠は主に3点である。

  1. 電力需要の力強い伸び:ベトナム商工省(Bộ Công Thương)は2026年の電力消費量の伸びを7.8〜13.4%と予測している。半導体やデータセンター関連の外資誘致加速、さらには家庭用エアコン普及率の上昇が電力需要を押し上げている。
  2. エルニーニョ現象の再来予測:2026〜2027年にエルニーニョが回帰し、記録的な高温が予測されている。これは水力発電にとっては渇水リスクとなり、その分を補うベースロード電源としての火力発電の重要性が一段と高まる。
  3. 国内燃料の価格優位性:石炭・国内ガスの価格上昇は輸入LNGに比べて緩やかであり、コスト面での優位が維持される。

BSCは、こうした環境下で特に注目すべき銘柄としてPOW(PetroVietnam Power Corporation=ペトロベトナム系電力会社)およびNT2を挙げている。

中長期の成長ドライバー——2026〜2030年の電源開発計画

証券会社ベトキャップ(Vietcap Securities)の試算によれば、ベトナム全国の発電設備容量は2026〜2030年の5年間で年6〜14%のペースで拡大する見通しである。これは過去5年間の約5%という伸びを大きく上回る。とりわけ注目されるのが陸上風力発電で、約20,000 MWの新規導入が計画されており、その総投資額は約260億USDに達する見込みである。

政策面でも追い風が期待されている。ベトキャップは以下のような新制度・ガイドラインの早期公布が業界全体の成長を後押しすると見ている。

  • 再生可能エネルギーの入札・競売プロセスにおけるPPA(電力購入契約)価格交渉ステップの撤廃の可能性
  • 再生可能エネルギー向け新価格枠組みの策定
  • LNG火力発電および洋上風力発電に対するコミットメント発電量(Qc)の引き上げメカニズム

エネルギー安全保障の確保が喫緊の課題となる中、地政学リスクの高まりが政策加速の触媒になり得るとベトキャップは分析している。

電力建設銘柄——PC1とTV2のバリュエーション

電力建設セクターの代表格であるPC1とTV2についてBSCは、現在のPER(株価収益率)は相対的に高い水準にあると指摘する。しかし、大型プロジェクトの落札が公表されれば2026年予想ベースのフォワードPERは大幅に低下する可能性があり、その場合は目標株価の引き上げ余地があるとしている。20,000 MWもの陸上風力発電プロジェクトが控えていることを考えれば、建設需要のパイプラインは極めて厚い。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の電力株の逆行高は、単なる短期的なセクターローテーションにとどまらない構造的な意味合いを持つと考えられる。

第一に、ベトナム電力セクターは中長期の成長テーマである。年間7〜13%超の電力需要成長率は東南アジアでもトップクラスであり、半導体・AI関連のデータセンター誘致が本格化する2026年以降はさらに加速する可能性がある。日本企業にとっても、JERAやJICA(国際協力機構)がベトナムのLNG発電・再エネプロジェクトに深く関与しており、電力インフラ整備はビジネス機会の宝庫である。

第二に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連も重要だ。格上げが実現すれば、ベトナム市場全体に大規模な海外パッシブ資金が流入する。その際、流動性が高く業績の安定したディフェンシブ銘柄は、外国人投資家のポートフォリオ組み入れ候補として真っ先に注目される。電力セクターはまさにその条件を満たすセクターの一つである。

第三に、地政学リスクが長期化する場合のヘッジ手段としての電力株の有効性が再認識されている。ベトナムは原油・ガスの純輸入国に転じつつあるが、国内炭・国内ガスという「価格統制された国産燃料」を活用できる火力発電事業者は、国際エネルギー価格の乱高下から相対的に守られている。この構造は日本のエネルギー事情とは対照的であり、ベトナム電力株のユニークな投資魅力といえる。

リスク要因としては、EVNとの電力販売価格の改定遅延、再エネ関連政策の施行の遅れ、そしてエルニーニョが予想より穏やかだった場合の水力回復による火力稼働率の下振れなどが挙げられる。投資にあたっては、各銘柄の燃料構成、PPA契約条件、資本構成を個別に精査することが不可欠である。


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出典: 元記事

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