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ベトナム株式市場で外国人投資家の買い越しが鮮明になっている。週末のHoSE(ホーチミン証券取引所)では約840億6,000万ドンの買い越しを記録し、板寄せベースでは3営業日連続の買い越しとなった。FTSE(英フッツィー・ラッセル)がベトナムを新興市場に格上げすると正式発表してからわずか3日後のタイミングであり、「先回り資金」の流入が始まったとの観測が市場で広がっている。
VN-Indexは小幅高、市場の実態は「二極化」
週末のVN-Indexは前日比13.32ポイント高(+0.77%)で引けた。ただし、この上昇は一部の大型株に大きく依存している。VIC(ビングループ/ベトナム最大のコングロマリット)が+1.68%、TCB(テクコムバンク)が+4.37%、GAS(ペトロベトナムガス)が+2.93%と上昇し、この3銘柄だけで指数全体の上昇幅13.32ポイントのうち約7.5ポイント、すなわち半分以上を稼ぎ出した。
HoSE全体の騰落銘柄数を見ると、値上がり164銘柄に対し値下がり144銘柄と、どちらか一方に大きく偏った状態ではない。1%超の上昇が67銘柄、1%超の下落が53銘柄で、大多数の銘柄は極めて狭いレンジでの推移にとどまった。
資金フローは「強い銘柄」に集中
興味深いのは、売買代金の偏りである。上昇率上位の銘柄群がHoSE全体の約定代金の27.4%を占めた一方、下落率上位の銘柄群はわずか6.7%にとどまった。つまり、強い銘柄には積極的に資金が流入しているのに対し、弱い銘柄では売り圧力そのものが限定的であることを示している。
下落サイドで目立った銘柄としては、CII(ホーチミンインフラ投資)が-1.85%(約定代金421億2,000万ドン)、PDR(ファットダット不動産)が-1.80%(198億2,000万ドン)、BVH(バオベト・ホールディングス/ベトナム最大の保険グループ)が-4.26%(122億7,000万ドン)、HHV(ハイハ・ベトナム)が-1.16%(107億3,000万ドン)などが挙げられる。これらの銘柄はいずれも直近の高値からの下落幅が大きく、ザラ場中のCIIは-3.64%、PDRは-3.81%、HHVは-3.04%まで売り込まれる場面もあった。さらに注目すべきは、これら下落銘柄に対して「押し目買い」がほとんど入らなかったことである。数十億ドン規模の取引がある下落銘柄でも、買い需要の乏しさが明確に見て取れた。
ブルーチップ・中型株に幅広い資金流入
一方、上昇サイドでは約20銘柄が100億ドン超の売買代金を伴いつつ1%以上の上昇を記録した。主要銘柄ではVIC +1.68%、TCB +4.37%、VNM(ビナミルク/ベトナム最大の乳製品メーカー)+1.62%、GAS +2.93%、PLX(ペトロリメックス/ベトナム最大の石油小売り)+4.18%など。VN30構成銘柄では11銘柄が上昇上位グループに入り、VN30指数自体も+0.69%で引けた。
中型株にも資金が広がっており、EIB(エクシムバンク)+2.21%、BSR(ビンソン精製)+7.00%、MSB(MSB銀行)+5.37%、DCM(カマウ化学肥料)+3.44%、PVT(PVトランス)+3.69%、DPM(ファーライ化学肥料)+2.11%、PC1(パワーコンストラクション1)+1.86%と、いずれも100億ドン超の活発な商いを伴っていた。
外国人投資家の動き:板寄せベースで3日連続の買い越し
この日最大の注目点は、外国人投資家がHoSEで840億6,000万ドンの買い越しを記録したことである。買い越し上位銘柄はTCB +217億9,000万ドン、HPG(ホアファットグループ/ベトナム最大の鉄鋼メーカー)+179億2,000万ドン、MBB(MBバンク)+100億2,000万ドン、VNM +94億ドン、MSN(マサングループ)+71億7,000万ドン、BSR +70億7,000万ドン、DXG(ダットサイゴン不動産)+54億6,000万ドン、VCB(ベトコムバンク/ベトナム最大の国営商業銀行)+51億9,000万ドン、NVL(ノバランド)+50億9,000万ドン、VCI(バンタイン証券)+50億7,000万ドンであった。
ここで重要なのは「板寄せ(通常取引)」と「相対取引(ブロック取引)」を分けて見る必要があるという点である。例えば前日は全体で2,473億ドンの売り越しだったが、板寄せだけでは778億ドンの買い越しであった。さらにその前日も全体では602億ドンの売り越しながら板寄せでは580億ドンの買い越しだった。相対取引は大口の特殊案件で、1対1の当事者間取引のため市場価格への直接的な影響は限定的である。板寄せベースの動きこそが日々の市場センチメントをより正確に反映しており、その意味で「3日連続買い越し」は明確なトレンド転換のシグナルと言える。
FTSE格上げ決定と外国人口座開設急増の「偶然の一致」
この外国人の動きが注目されるのは、FTSEがわずか3日前にベトナムの新興市場への格上げを正式に発表したタイミングと重なるからである。さらに興味深いデータがある。ベトナム証券保管センター(VSD)の統計によると、2025年3月に外国人投資家が新規に開設した証券口座は個人が393口座、機関投資家が34口座であった。国内投資家と比べれば小さな数字だが、外国人投資家の中では機関投資家の口座開設数が過去4年間で最多、個人投資家に至っては過去5年間で最多を記録している。
格上げの正式決定前から、海外の機関投資家が着々とベトナム市場参入の「準備」を進めていたことがこの数字から読み取れる。FTSE新興市場指数に連動するパッシブファンドの資金流入は格上げが実効化する2025年9月以降に本格化するとみられるが、アクティブファンドや先回りを狙うスマートマネーはすでに動き始めている可能性が高い。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の市場動向からは以下のポイントが読み取れる。
第一に、FTSE格上げに向けた資金フローの変化が現実のものとなりつつある。板寄せベースでの3日連続買い越しと、外国人口座開設の急増は、単なる短期的な需給変動ではなく、構造的な資金シフトの初期段階である可能性がある。FTSE新興市場指数への組み入れにより、推定で数十億ドル規模のパッシブ資金がベトナム市場に流入するとの試算もあり、TCB、HPG、VNM、VCBなどの大型株はその最大の受益銘柄となる。
第二に、市場の二極化は「選別投資」の時代への移行を示唆している。強い銘柄に資金が集中し、弱い銘柄には押し目買いすら入らない状況は、外国人資金を含めた市場全体が「質」を重視し始めていることの表れである。流動性が高くファンダメンタルズの裏付けがある銘柄とそうでない銘柄の格差は、今後さらに拡大する可能性がある。
第三に、日本企業・日系投資家にとっての示唆も大きい。ベトナムの新興市場格上げは、同国の資本市場インフラの整備(プレファンディング廃止、外国人投資規制の緩和など)が進んだ結果であり、日系企業のベトナムにおけるM&Aや資本調達環境も改善が期待できる。また、日本の年金基金やアセットマネジメント会社がFTSE新興市場指数をベンチマークとしている場合、ベトナム株への配分が自動的に発生するため、日本からの投資資金流入も増加する見通しである。
総じて、ベトナム株式市場はFTSE格上げという歴史的転換点を迎え、外国人投資家の行動パターンに明確な変化が見え始めている。短期的にはVN-Index全体の上昇モメンタムは依然として限定的だが、個別銘柄レベルでは「格上げプレミアム」を織り込む動きがすでに始まっていると見るべきである。
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