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世界的な株式・債券の同時売りが2022年以来最大規模で進行するなか、ベトナム株式市場もVN-Indexが高値から336ポイント(17.5%)下落する厳しい局面を迎えている。しかし足元ではMidcap(中型株)銘柄群に底値拾いの資金が流入し、短期売買(T+トレーディング)中心の慎重な回復局面が始まっている。MBS証券やユアンタ証券など現地主要証券会社の分析をもとに、今後の投資戦略を読み解く。
イラン戦争ショック——世界市場から「安全な避難先」が消えた
世界の株式市場と債券市場は、2022年以来もっとも激しい同時売りに見舞われている。直接的な引き金は、イランを巡る中東紛争の激化と、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡がほぼ封鎖状態に陥ったことである。MSCI全世界株式指数(MSCI All Country World Index)は3月だけで約9%下落し、エネルギー価格の急騰が世界経済全体にショックを与えている。
注目すべきは、従来「安全資産」とされてきた金までもが14%の急落を記録した点である。投資家がこれまで利益を上げてきた資産を手当たり次第に利益確定売りしており、金融市場に「逃げ場がない」という異常事態が出現している。
アジア新興市場から記録的な資金流出——520億ドル規模
イラン紛争勃発以降、外国人投資家はアジア株式市場から約520億ドルを売り越した。ブルームバーグが2009年以降のデータを集計した結果、月間ベースで過去最大の資金流出に迫る勢いである。この規模は、2020年3月のコロナ・パンデミック時の資金逃避を上回り、2022年6月のウクライナ戦争時の約2倍に達する。
特にエネルギー輸入依存度が高い台湾、韓国、インドの市場が売りの中心となっている。ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約2割が通過する要衝であり、ここが封鎖されれば、エネルギーの大半を輸入に頼るアジア各国の経済は直撃を受ける。原油高が製造コストやインフレを押し上げ、企業収益と消費の双方を圧迫するという構図である。
ベトナムVN-Index——中東危機で11%下落、アジア域内でも大きな打撃
ベトナムのVN-Indexは高値からの累計下落幅が336ポイント(17.5%)に達し、中東紛争勃発後だけで11%の下落を記録した。これはアジア域内の主要市場と比較しても大きな落ち込みである。同期間の下落率は、韓国が12.9%、日本が9.3%、インドが9.4%、台湾が5.9%であり、ベトナムは韓国に次ぐ被害を被っている。
ベトナムは石油の純輸出国から近年は純輸入国に転じつつあり、原油価格の高騰はインフレ圧力や経常収支の悪化に直結する。さらに、外国人投資家のアジア一斉引き揚げの波に巻き込まれやすいフロンティア/新興市場としての脆弱性も改めて浮き彫りとなった。
回復局面の実態——低い出来高、しかしMidcapに底値拾い資金
直近の反発局面で注目すべき特徴がいくつかある。まず、売買代金は約2兆6,000億ドン(約2万6,000億ドン)と直近5週間の最低水準にとどまっている。大きな資金の本格的な買い戻しはまだ始まっていない。
一方で、市場の「広がり」を示すブレッド指標はかなりポジティブである。特に大きく値を下げていたMidcap(中型株)銘柄群に底値拾いの資金が集中している。具体的には以下のセクターが注目されている。
- 住宅用不動産(Bất động sản dân cư):3週連続で上昇
- ベトテル(Viettel)関連:2週連続上昇。ベトナム最大の軍系通信コングロマリットのグループ企業群
- 証券セクター:大幅下落からの反発局面
- 電力(Sản xuất điện)・保険(Bảo hiểm):ディフェンシブ銘柄として2週連続上昇
MBS証券(ベトナム大手証券)は、来週も売買代金は2万2,000億〜2万5,000億ドンの低水準が続くと予想。VN-Indexが200日移動平均線(MA200)を回復できれば、1,600ポイント付近が強力なサポートゾーンとして固まるとの見方を示している。
テクニカル面の見通し——1,700〜1,740ポイントが上値の壁
MBS証券の分析では、今回の反発はベースシナリオで1,700ポイント、もっとも楽観的なシナリオでも1,730ポイントが上値抵抗帯になるとされている。ユアンタ証券(台湾系の大手証券会社でベトナムにも進出)も同様に、1,700ポイントと1,740ポイントの2つのレジスタンスを想定している。
ただし両社とも、短期トレンドは依然として下向きであり、外部環境の不確実性が払拭されない限り、本格的な上昇転換は難しいとの認識で一致している。
今週の注目ポイント——利益確定売りリスクと推奨戦略
過去2〜3週間にわたって上昇してきた銘柄群、すなわちVN-Indexに先行して底入れしダイバージェンス(乖離)を見せていたセクターは、今週利益確定売りに晒される可能性が高い。具体的にはベトテル関連、保険、電力が2週連続高、住宅不動産が3週連続高であり、低い出来高の中でのT+(短期売買)主体の相場ではいつ売りが出てもおかしくない状況である。
MBS証券とユアンタ証券が共通して推奨する投資戦略は以下の通りである。
- ポジション(保有比率)は低めに抑える
- 上昇局面で追随買い(追っかけ買い)をしない
- 調整局面で試し買い程度にとどめる
- ダイバージェンス(指数と乖離して先行底入れ)を見せている銘柄、切り上がった底値を形成している銘柄、明確な横ばい蓄積パターンの銘柄を選別する
資金の行き先としては、大型のブルーチップよりもMidcap群が引き続き有望とされている。第1四半期のNAV(純資産価値)確定に伴う機関の売買が入るブルーチップよりも、住宅不動産、肥料、電力、小売、保険、銀行といったMidcapセクターのほうが値幅を取りやすいとの見立てである。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株市場への影響:今回の中東危機は、ベトナム市場がグローバルなリスクオフの波に対して依然として脆弱であることを改めて示した。外国人投資家の大規模な売り越しが続く限り、指数全体の回復には時間がかかる。一方で、Midcap銘柄への資金シフトは、ベトナム市場特有の個人投資家主導の構造を反映しており、国内勢の底値拾い意欲自体は健在であることを示している。
日本企業・ベトナム進出企業への影響:原油価格の高騰はベトナムの製造業コストを押し上げる要因となる。ベトナムに生産拠点を持つ日系企業にとって、電力コストや物流費の上昇は利益率を圧迫しうる。ただし、ベトナム政府が電力供給の安定化を推進していることもあり、電力関連銘柄がディフェンシブとして買われている点は注目に値する。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2025年3月にFTSEラッセルがベトナムをセカンダリー・エマージング市場に格上げするかどうかの最終判断は2026年9月に持ち越される見込みだが、現在のような外国人資金の大量流出局面は、格上げ後に期待されるパッシブ資金の流入とは対照的な状況である。逆に言えば、格上げが実現すれば、現在の外国人売り越しの反転要因となりうる。現在の株価水準は、中長期的な格上げテーマを意識した仕込みの好機と捉える向きもある。
戦略的な位置づけ:今回の局面は「嵐の中の選別投資」が問われるフェーズである。短期的にはT+の小刻みな売買でリスクを限定しつつ、中期的にはMidcapの中でもファンダメンタルズが堅固な銘柄(住宅不動産の大手、電力・再生可能エネルギー、肥料メーカーなど)を安値で拾う戦略が有効と考えられる。ただし、ホルムズ海峡の状況や原油価格の推移という外生変数が最大のリスク要因であり、ポジション管理の徹底が不可欠である。
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