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前日に1,600ポイントの大台を割り込む急落を演じたベトナム株式市場(VN-Index)が、本日一転して大幅反発した。個人投資家が623.6億ドンの買い越し、証券会社の自己売買部門(プロップトレーディング)が269.0億ドンの買い越しと、国内勢が積極的に押し目を拾う展開となった。一方で外国人投資家は約485.6億ドンの売り越しを継続しており、需給構造のコントラストが鮮明になっている。
トランプ氏のイラン攻撃延期発言が世界的リスクオフを後退させる
前日の急落の主因は中東地域の地政学リスクの高まりだった。しかし、トランプ米大統領がイランの発電施設への攻撃を5日間延期すると発言したことで、中東情勢の緊迫度が一段階和らいだと受け止められた。これを受けて世界の株式市場やコモディティ(商品)価格が一斉に反発し、ベトナム市場もその流れに乗った格好である。
VN-Indexは寄り付き直後から買いが先行し、一時は前日比40ポイント以上の上昇を記録する場面もあった。しかし、買いの勢いが続かず徐々に上げ幅を縮小。最終的には前日比+23.60ポイントの1,614.77で取引を終えた。値上がり銘柄数273に対し値下がりはわずか59と、市場全体に「緑一色(ベトナムでは値上がりを緑で表示)」が広がった。
不動産・航空・保険セクターに資金流入、VICは逆行安
セクター別で最も注目されたのは不動産株である。NLG(ナムロンインベストメント)やTCH(ホアンフータイヘリテージ)がストップ高(上限値幅いっぱいの上昇)を記録。DXG(ダットサイグループ)やNVL(ノヴァランドグループ、ベトナム大手不動産デベロッパー)も場中で一時ストップ高に達する活況ぶりだった。
航空セクターではHVN(ベトナム航空)がストップ高に張り付いた。保険セクターも、足元の銀行預金金利の上昇が運用利回りの改善期待につながり、BVH(バオベト・ホールディングス、ベトナム最大手の保険・金融グループ)がストップ高となった。
銀行、証券、消費財、小売、素材といった主要セクターも軒並みプラス圏で推移した。唯一の例外はエネルギーセクターと、VIC(ビングループ、ベトナム最大のコングロマリット)で、VICは単独で1.27%下落するという逆行安を演じた。
売買代金は約2.2兆ドンと低水準—資金の本格参戦はまだ先か
ただし、本日の3市場合計のマッチング(板寄せ・ザラ場)売買代金は約2兆2,000億ドンにとどまった。これは直近の平均的な水準と比較しても低い。前日の急落で発生した含み損のある建玉が翌営業日(つまり明日)にようやく口座に反映されるため、多くの投資家は手元資金を温存し、より安い価格で再エントリーする機会を伺っていると見られる。地政学リスクが完全に消えたわけではないことも、資金の慎重姿勢を後押ししている。
外国人投資家は銀行株中心に売り越し継続
外国人投資家は全体で約485.6億ドンの売り越し。マッチングベースでは621.4億ドンの売り越しとなった。売り越しの中心は銀行セクターで、個別銘柄ではVIC、MWG(モバイルワールドグループ、ベトナム最大の家電・小売チェーン)、VHM(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産大手)、HPG(ホアファットグループ、ベトナム最大の鉄鋼メーカー)、BID(BIDV、国有大手商業銀行)、HDB(HDバンク)、STB(サコムバンク)、KBC(キンバックシティ)、MSN(マサングループ)が売り越し上位に並んだ。
一方で、外国人の買い越し上位にはBSR(ビンソン精油、ベトナム最大の製油所を運営)、VCK、VCI(ベトナム建設証券)、DGC(ドゥクザン化学グループ)、CTG(ベトコムバンク系のビエティンバンク)、FPT(FPTコーポレーション、ベトナム最大のIT企業)、VPB(VPバンク)など金融サービスや石油化学関連が入っており、セクターの選別が進んでいることがわかる。
個人投資家は銀行株を拾い、自己売買も銀行・航空を買い越し
個人投資家はマッチングベースで455.6億ドンの買い越し。買い越し上位にはSTB、HPG、MWG、HDB、VIC、SSI(サイゴン証券)、VPB、BID、SHB(サイゴン・ハノイ銀行)、VHM(ビンホームズ)が並び、外国人が売った銀行株や大型株を個人が拾う構図が鮮明だった。個人の売り越し上位はVCK、TCH、VCI、BSR、TPB(ティエンフォンバンク)、BVH、HDG、DGC、CIIなどで、外国人の買い越し銘柄と重なる「裏表の関係」が確認できる。
証券会社の自己売買部門はマッチングベースで243.3億ドンの買い越し。銀行セクターと旅行・レジャーセクターを中心に買いを入れた。買い越し上位はACB(アジア商業銀行)、VJC(ベトジェット航空)、MWG、HDB、VIC、FPT、VIB(ベトナム国際銀行)、MSN、STB、TPBで、航空株やIT株も含む幅広い買いが目立つ。売り越し上位はDGC、VPB、VNM(ビナミルク)、NVL、ETF関連のFUEVFVN30やFUEVFVNDなどであった。
国内機関投資家は310億ドンの売り越し、不動産は買い
国内の機関投資家(投資信託・年金基金等)は全体で310.4億ドンの売り越し、マッチングベースでは77.5億ドンの売り越しとなった。銀行株を売り越す一方で、不動産セクターを最も多く買い越しており、TCH、VHM、BID、VCB(ベトコムバンク)、KBC、VIC、PVT、MWG、BVH、TPBが買い越し上位に並んだ。
注目のブロック取引:MBB株で約378億ドンが外国人間で移動
協議取引(ブロック取引)の総額は2,770.5億ドンで前日比20.7%減少し、全取引金額の12.5%を占めた。注目すべきはMBB(MBバンク、旧軍隊商業銀行)で、約1,460万株・378.3億ドン相当が外国人投資家同士の間で移動した。このほかSTB、HDB、TPB、VIBなど銀行株、小売のPET(ペトロリメックス系列)やMWGでもブロック取引が確認されている。
資金配分の変化:中小型株シフトが進行
セクター別の資金配分比率を見ると、不動産、石油ガス、建設・資材、海運、航空、保険への配分が増加した一方、銀行、証券、鉄鋼、食品、水産養殖、小売、IT、倉庫・物流への配分が減少した。マッチングベースでは、中型株(VNMID)および小型株(VNSML)への資金配分が増加し、大型株(VN30)への配分が減少する「中小型シフト」が進行している点が注目される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の急反発は、地政学リスクの一時後退という外部要因に支えられたものであり、売買代金の低さが示す通り、市場参加者の本格的な強気転換とは言い難い。以下の点を整理しておきたい。
①需給構造の二極化:外国人が銀行株・大型株を売り、個人と自己売買がそれを買い支えるという構図は、ここ数ヶ月のベトナム市場で繰り返されているパターンである。外国人の売り越し基調が続く限り、VN-Indexの上値は重い展開が想定される。
②不動産セクターへの資金流入:不動産関連銘柄のストップ高が相次いだ背景には、銀行預金金利の上昇局面における「実物資産への回帰」期待や、政府の不動産関連法改正(2024年施行の改正土地法・改正住宅法等)による規制明確化への評価がある。ただし、NVLやDXGなど財務体質に懸念が残る銘柄も含まれており、選別が必要である。
③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、実現すればパッシブ資金の大量流入をもたらす。現在の外国人売り越しは、格上げ前の「持ち替え(ポートフォリオ調整)」の側面もあり得る。外国人がFPTやBSRなどIT・エネルギー関連を選別的に買い越している点は、格上げ後の指数構成銘柄を意識した動きとも解釈できる。
④日本企業・日本人投資家への示唆:ベトナムに進出している日本企業にとって、ドン建て資産の評価や現地パートナー企業の株価動向は経営判断に直結する。特に不動産・建設セクターの活況は、工場用地・オフィス賃料の動向にも波及し得る。また、日本の個人投資家がベトナム株に投資する場合、外国人売り越しの受け皿として個人マネーが機能している現状は、短期的には逆張りの好機に見える一方、地政学リスクや売買代金の細りを考慮すると慎重な姿勢も求められる。
⑤VICの逆行安が示すもの:ビングループ(VIC)はベトナム市場最大の時価総額を誇る銘柄だが、EV(電気自動車)事業を手掛けるビンファストの業績不振やグループ内の資金繰り懸念が根強く、市場全体が反発する中でも売られる展開となった。大型株の中でも「質の選別」が進んでいることを示唆しており、今後も個別銘柄の精査が重要である。
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