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2025年3月25日のベトナム株式市場で、代表的指数であるVN-Indexが前日比43.42ポイント高(+2.69%)の1,658.19ポイントで引けた。全18業種が上昇するという全面高の展開となったものの、複数の大手証券会社は「市場は依然として底探りの局面にある」と警戒感を崩していない。米国とイランの軍事的緊張を背景としたエネルギー供給ショックのリスクが燻るなか、各社の見通しと投資戦略を詳しく読み解く。
市場の概況:全面高の力強い反発
3月25日の取引では、ホーチミン証券取引所(HSX)のVN-Indexが1,658.19ポイントまで回復。同時にハノイ証券取引所(HNX)のHNX-Indexも5.86ポイント高(+2.4%)の249.67ポイントで終えた。業種別では保険セクターが上昇率トップとなり、化学、石油・ガスセクターがそれに続いた。また、不動産と銀行が指数の押し上げ役として大きく貢献している。
一方で、海外投資家はHSXで売り越しとなり、HNXおよびUPCoM市場では買い越しという、やや方向感の定まらない動きだった。外国人投資家の動向はベトナム市場のセンチメントを左右する重要な指標であり、HSXでの売り越し継続は楽観一辺倒とはいかない状況を示している。
証券各社の見通し:一致するのは「慎重姿勢」
バオベト証券(BVSC):200日移動平均線を回復、ただし下方リスクに警戒
BVSCは、VN-Indexが200日移動平均線(MA200)を上回って引けたことを「市場が均衡状態を確立し、短期的により前向きな値動きに向かうための重要な転換点」と評価した。しかし同時に、戦争リスクが世界経済と金融市場に与える潜在的な影響を踏まえ、2022年の年間高値に相当する1,510〜1,535ポイントの強力なサポートゾーンを試す下落シナリオにも引き続き注意が必要だと強調している。投資家に対しては「テクニカルな反発局面を利用してポートフォリオのリバランスを行い、現金比率を高めに維持することを優先すべき」と助言した。
BIDV証券(BSC):底探り局面は継続中
BSCは簡潔ながら明確なメッセージを発している。全18業種が上昇し市場の幅(マーケット・ブレッドス)は良好だったと認めつつも、「市場は依然として底探りの局面にあり、投資家は慎重に取引すべきだ」と結論づけた。
サイゴン・ハノイ証券(SHS):レジスタンス1,680〜1,700ポイントで利食いを推奨
SHSは最も詳細な分析を提供している。短期的にVN-Indexはレジスタンスゾーンの1,680〜1,700ポイントを試す回復基調にあり、サポートは2025年12月の安値付近である1,630ポイント前後とした。注目すべきは以下の3点である。
第一に、VN-IndexがVN30(大型株30銘柄で構成される指数)よりも良好なパフォーマンスを見せており、中小型株に資金が集中している兆候がある点。第二に、2025年8〜10月から長期にわたって調整・保ち合いを経てきた銘柄群に買いが入り始めている点。第三に、原油価格の高止まりを背景に再生可能エネルギー関連銘柄に突出した取引が見られる点である。
SHSは、米国とイランの紛争緩和の見通しがエネルギー供給ショックへの懸念を和らげ、市場回復を後押ししていると指摘した。VN-Indexが1,600ポイントを下回った水準は投資機会を探るべき価格帯であったとする一方、1,680〜1,700ポイントに接近する局面では「高値追いは避けるべき」とし、短期的な投機ポジションの縮小を推奨。とりわけ原油高の影響を受けるセクターには注意が必要だと警告している。中長期的にはファンダメンタルズが良好で、経済の戦略的成長分野をリードする優良銘柄への投資を勧めている。
ティエンベト証券(TVS):MA200超えも出来高が伴わず「ダマシ」リスク
TVSはテクニカル分析の観点から興味深い警告を発した。VN-IndexがMA200を上回って引けたことは認めるが、この上抜けに出来高の大幅な増加が伴っていないため、「偽のブレイクアウト(ダマシ)」となり翌営業日に再び下落するリスクがあるという。逆に、出来高を伴ってMA200上で推移し続ければ回復トレンドが確認され、100日移動平均線(MA100)に相当する1,750ポイント付近のレジスタンスを試す展開も期待できるとした。不動産セクターと銀行セクターが引き続き指数上昇の主要なドライバーであることも指摘している。
ユアンタ・ベトナム証券(YSVN):短期上昇継続を予想も低ポジション維持を推奨
YSVNは比較的楽観的な見方を示し、翌営業日もVN-Indexの上昇が続くと予想した。前回のMA200割れが「フォールス・ブレイク(偽の下方ブレイク)」であったことが今回の反発で確認され、テクニカルシグナルは改善しているとの認識だ。ただし、短期(1カ月以内)の投資戦略としては株式ポジションを低く保ち、「打診買い」にとどめるよう推奨しており、手放しの強気ではない。直近のレジスタンスは1,690ポイントとした。
ベトコムバンク証券(VCBS):RSI・MACD改善もレジスタンス帯で揉み合いか
VCBSはチャート分析に基づき、日足でRSIとMACDヒストグラムが二番底を形成後に反発し、CMF(チャイキン・マネーフロー)指標も上向きで資金流入の回復を示していると指摘した。ただしVN-Indexが1,660〜1,700ポイントのレジスタンスゾーンに差し掛かっているため、上昇過程での揉み合い・振るい落としに注意が必要だとしている。投資戦略としては、電力、公共投資、不動産など上昇基調を維持しているセクターの保有継続と、サポート確認に成功した銘柄への短期スイングトレードを提案した。
SSI証券:回復の慣性は続くが需給の綱引きに注意
ベトナム最大手証券の一角であるSSI証券(SSI)は、VN-IndexがMA200を上回って引けたことでトレンド面での改善シグナルが出ているとしつつ、「需給の検証過程で振るい落としの圧力が早期に戻る可能性がある」と指摘した。均衡状態が確立・維持されれば短期的にはより安定した展開が期待できるとし、レジスタンスを1,680〜1,700ポイント、サポートを1,580〜1,600ポイントと設定している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の43ポイント高という急反発は印象的だが、7社の証券会社が揃って「慎重」「底探り」「振るい落としリスク」といった文言を並べている点に注目すべきである。市場参加者の間では、今回の反発は大幅下落後のテクニカルなリバウンドに過ぎず、トレンド転換の確認にはまだ時間が必要という見方がコンセンサスだ。
地政学リスクの影響:SHSが言及した米国・イラン間の軍事的緊張は、ベトナム経済にとって原油価格の高騰を通じた二重の打撃をもたらしうる。ベトナムは石油の純輸入国へと転じつつあり、エネルギーコストの上昇は製造業の利益率を直撃する。一方で再生可能エネルギー関連銘柄が急騰している背景には、こうした構造的なエネルギー転換への期待がある。
テクニカルの焦点:各社が一致して注目しているのがMA200(200日移動平均線)の攻防だ。TVSが警告するように、出来高を伴わないMA200超えは「ダマシ」になりやすく、翌営業日以降の値動きがトレンド判断の鍵となる。1,680〜1,700ポイントのレジスタンスを明確に突破し、さらにMA100(約1,750ポイント)を目指す展開となれば、本格的な回復局面入りと見なせるだろう。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSEラッセルによるベトナムの「フロンティア」から「新興市場」への格上げは、中長期的に数十億ドル規模のパッシブ資金流入をもたらすと期待されている。しかし、格上げを前にした現在の不安定な市場環境は、外国人投資家のHSXでの売り越しにも表れているように、短期的なポジション調整と中長期的な格上げ期待が交錯する複雑な状況を生み出している。格上げが正式に決定すれば、銀行・不動産といった大型セクターへの資金流入が加速する可能性が高く、現在の調整局面は中長期投資家にとって仕込みの好機となりうる。
日本企業・投資家への示唆:ベトナムに進出している日本企業にとって、原油高に起因するコスト増は生産コスト上昇を通じて業績を圧迫するリスクがある。一方、ベトナム株に投資する日本の個人投資家にとっては、各社が推奨するように「現金比率を高めに維持しつつ、ファンダメンタルズの強い銘柄を打診買いする」という戦略が合理的だろう。公共投資関連や電力セクターなど、ベトナム政府の政策的な追い風を受ける分野は、地政学リスクに対する相対的な耐性が期待できる。
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出典: VnEconomy元記事












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