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2026年3月23日、ベトナム株式市場の代表的指数であるVN-Indexが前日比56.64ポイント安(▲3.44%)の1,591.17ポイントで取引を終え、心理的節目である1,600ポイントを一気に割り込んだ。中東の地政学リスク激化、原油価格の急騰、そしてマージンコール(追証)に伴う強制売りが重なり、全18セクターが下落するという「全面安」の展開となった。翌24日の市場見通しについて、主要証券各社の分析を総合的に読み解く。
3月23日の市場概況──全面安、外国人も売り越し
VN-Index(ホーチミン証券取引所の主要指数)は寄り付き直後から強い売り圧力にさらされ、56.64ポイント安の1,591.17ポイントで引けた。下落率3.44%は2025年4月以来の大幅な下げ幅である。同時にHNX-Index(ハノイ証券取引所の指数)も5.92ポイント安(▲2.43%)の237.54ポイントへ沈んだ。
セクター別では、全18業種がそろって下落。特にメディア(Truyền thông)セクターの下落が最も大きく、石油・ガスセクター、産業財・サービスセクターがこれに続いた。金融セクターや化学・石油化学セクターにも顕著な売りが波及している。外国人投資家はホーチミン取引所(HSX)およびUPCOM市場で売り越し、ハノイ取引所(HNX)のみ小幅な買い越しにとどまった。
注目すべきは、この急落にもかかわらず売買代金(流動性)が比較的低調だった点である。BSC証券(ベトナム投資開発銀行系の証券会社)は「流動性の低さは市場心理がまだ矛盾を抱えていることを示している」と指摘しており、パニック的な投げ売りと様子見が混在する不安定な状態であることがうかがえる。
急落の背景──中東情勢・原油高・マージンコール
今回の急落を引き起こした主因として、証券各社が共通して挙げるのが中東における地政学リスクの再燃である。BVSC(バオベト証券)は「中東の地政学的衝突に沈静化の兆しが見られず、国内のインフレリスクと為替リスクを高めている」と警告する。原油価格の急騰はベトナムのような輸入依存度の高い経済にとって、物価上昇圧力と通貨ドン安圧力の二重の打撃となる。
テクニカル面では、VN-Indexが200日移動平均線(MA200、約1,650ポイント付近)を明確に下抜けたことが市場心理を大きく悪化させた。MA200の喪失は中長期トレンドの転換シグナルとして広く認知されており、これを契機に信用取引の追証(マージンコール)が連鎖的に発生。SHS証券(サイゴン・ハノイ証券)は「市場は強制売り(giải chấp)の圧力にさらされており、次の取引日も圧力はさらに強まる」と述べている。
また、VCBS(ベトコムバンク証券)はテクニカル指標の詳細を示し、日足チャートにおいてボリンジャーバンドの下限に張り付いていること、RSI(相対力指数)とMACD(移動平均収束拡散法)がともに売られすぎ水準にあるにもかかわらず反転の兆候が見えないことを指摘。さらに一目均衡表の赤い雲が引き続き下方に移動しており、「短期的な市場の勢いは依然として強い下押し圧力の下にある」と結論づけた。
証券各社が示す下値目処──1,500〜1,580ポイントに集中
各社が予測する下値サポート水準をまとめると、以下のようになる。
| 証券会社 | 下値サポート予測 | キーワード |
|---|---|---|
| BVSC(バオベト証券) | 約1,550ポイント | 現金比率を高く維持、損切り厳守 |
| BSC(BIDV系証券) | 約1,535ポイント | 流動性低迷、市場心理は矛盾 |
| SHS(サイゴン・ハノイ証券) | 1,500〜1,535ポイント(2022年の高値水準) | 1〜2取引日後に反発の可能性 |
| TVS(ティエンベト証券) | 1,530〜1,550ポイント | 底打ち確認まで新規買い控え |
| YSVN(元大ベトナム証券) | 1,558〜1,568ポイント | ダイバージェンス発生、反発の芽あり |
| VCBS(ベトコムバンク証券) | 1,500〜1,550ポイント(1,580が守れない場合) | レバレッジ縮小推奨 |
| SSI証券 | 約1,580ポイント | 反応を見極める段階 |
概ね1,530〜1,580ポイントの範囲がコンセンサスとなっており、この水準は2022年のVN-Index史上最高値圏(約1,500〜1,535ポイント)と重なる。SHS証券はこの歴史的な「旧高値」がサポートとして機能するかどうかが最大の焦点であると強調している。
バリュエーションから見た「割安感」
SHS証券は興味深いバリュエーション分析を提示している。現時点の市場全体の時価総額は約3,660億ドル超で、2025年GDP比約71%に相当する。市場全体のPER(株価収益率)は約13.0倍、ビングループ(ベトナム最大手のコングロマリット)関連を除くと約12.1倍まで低下する。これは2025年4月9日のVN-Index底値時のPER11倍、同年のVN-Index1,200ポイント近辺時のPER12倍に接近する水準であり、ファンダメンタルズの観点からは「割安圏」に入りつつあるとの見方だ。
SHSは「強制売りの嵐が1〜2取引日で収まれば、市場は反発に転じる可能性が高い。VN-Indexが主要サポートに到達し、PERが2025年4月の底値水準に近づく局面は、リスク管理を前提とした良い投資機会になり得る」と前向きな見解も示している。
一方、元大ベトナム証券(YSVN、台湾系の元大グループ傘下)はやや楽観的な分析を提示。VN30-IndexおよびVN-Indexの動量指標にブル・ダイバージェンス(価格は安値を更新しているが指標は安値を更新しない現象)が出現しているとし、1,560ポイントを維持できれば1,560〜1,631ポイント(MA200のリテスト)のレンジ推移に移行する可能性があると述べた。
各社の投資戦略──共通するのは「慎重姿勢」
証券各社の投資助言を総合すると、短期的なスタンスは明確に「守り」で一致している。
- BVSC:現金比率を高く維持。保有ポジションは損切りラインを厳格に管理し、特に短期ポジションは逆指値を徹底すべき。
- TVS:VN-Indexが底打ちを確認するまで新規買いは控えるべき。
- YSVN:短期(1カ月以内)では市場から離れ、株式保有比率を低く抑えることを推奨。
- VCBS:冷静さを保ち、レバレッジ(信用取引比率)を引き下げ、重要なサポートを割った銘柄は整理すること。下落が一巡し資金流入の兆候が見える銘柄を選別して待機する戦略を推奨。
- SHS:ポートフォリオの比率を適切に維持しつつ、ファンダメンタルズが良好な業界トップ企業、成長性の高い戦略セクターへの投資を志向すべき。
投資家・ビジネス視点の考察
①ベトナム株市場全体への影響:MA200割れと全面安は、ベトナム市場にとって2025年4月のトランプ関税ショック以来の本格的な調整局面入りを意味する。短期的にはマージンコールの連鎖が需給を悪化させる構造的なリスクがあり、信用残高の水準が注目される。ただし、PER12〜13倍という水準はアジア新興市場の中でも相対的に低く、中長期の資金にとっては仕込み場となる可能性もある。
②原油高とベトナム経済:ベトナムは石油の純輸入国に転じており、原油高は貿易収支とインフレ双方に悪影響を与える。ベトナム国家銀行(中央銀行)が為替防衛のために金利政策を引き締める可能性も意識される。これは不動産・建設セクターなど金利感応度の高い業種にとって追加のネガティブ要因となり得る。
③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に最終判断が見込まれるFTSEラッセルによるベトナムの「フロンティア」から「セカンダリー・エマージング」への格上げは、中長期的に数十億ドル規模のパッシブ資金流入をもたらすとされる。しかし短期の市場混乱が続けば、外国人投資家の売り越しが格上げ期待を相殺するリスクがある。格上げが実現すれば、今回の下落局面は事後的に「絶好の買い場」と評価される可能性が高いが、タイミングの見極めが重要である。
④日本企業・日本人投資家への示唆:ベトナムに生産拠点を持つ日本企業にとっては、ドン安・インフレが現地コストに影響する点に注意が必要だ。一方、ベトナム株への投資を検討している個人投資家にとっては、証券各社が示す1,500〜1,560ポイント付近まで引きつけてからの段階的な買い下がり戦略が合理的と考えられる。ただし、地政学リスクの行方次第では一段安の可能性も排除できないため、ポジションサイズの管理とストップロスの設定は不可欠である。
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出典: VnEconomy元記事












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