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ベトナム株式市場のVN-Indexが3月23日、前日比3.44%安(▲56.64ポイント)の1,591.17ポイントで取引を終え、2025年11月以来およそ7カ月ぶりの安値水準に沈んだ。ストップ安(フロア価格)に張り付いた銘柄は38に達し、前週末に続く大規模な売り浴びせが市場を完全に制圧した格好である。直近2営業日でVN-Indexは約108ポイントを消失しており、投資家心理は極度の悪化局面に突入している。
午後場で一気に崩壊——買い手不在の「パニック売り」
午前の取引では、ストップ安銘柄はわずか5にとどまっていた。しかし午後に入ると新たなマージンコール(追証)に伴う強制決済の波が押し寄せ、売り圧力が急激に拡大。終値ベースでストップ安銘柄は38に膨れ上がった。午前時点で2%超の下落銘柄は159だったが、大引けでは216銘柄に増加した。
注目すべきは、ホーチミン証券取引所(HoSE)の午後の売買代金が午前比でわずか8%の増加にとどまった点である。これは売り手が買い手を見つけられず、大幅に値を下げてようやく約定を成立させたことを意味する。実際、数十銘柄で「買い板がゼロ(trắng bên mua)」という異常事態が発生し、需要が完全に蒸発していたことが浮き彫りになった。
大型株も総崩れ——VN30の27銘柄が下落
市場の中核を構成するVN30指数も3.17%下落。30銘柄中、上昇で引けたのはわずか3銘柄にすぎなかった。
ストップ安となったVN30銘柄(4銘柄):
- DGC(ドゥックザン・ケミカルズ、化学大手)
- MWG(モバイルワールド、家電・携帯販売大手)
- GVR(ベトナムゴム・グループ)
- VIC(ビングループ傘下Vincom Retail等を含むベトナム最大コングロマリット)
時価総額トップ10の下落状況:
- VPB(VPバンク)▲4.19%
- MBB(MBバンク)▲3.66%
- BID(ベトナム投資開発銀行=BIDV)▲3.27%
- CTG(ベトコンバンク=VietinBank)▲3.27%
- TCB(テクコムバンク)▲3.18%
- VHM(ビンホームズ、不動産最大手)▲2.00%
- GAS(ペトロベトナム・ガス)▲1.83%
- HPG(ホアファット・グループ、鉄鋼最大手)▲1.54%
午後場ではVN30構成銘柄30のうち24銘柄が午前の終値からさらに下げ足を速めた。GAS(ペトロベトナム・ガス)は午後だけで2.78%下落して参照価格を割り込み、STB(サコムバンク)は午後に3.69%沈んで終日では5.36%安、TPB(TPバンク)も午後に2.27%下げて終日4.43%安と、銀行株を中心に投げ売りが加速した。
一方、わずかながら反発を試みた銘柄もあった。VHM(ビンホームズ)は午後に4.37%戻したものの終値では2%安、VRE(ビンコム・リテール)は2.42%戻して3.06%安、VPL(バンフーレジャー)は1.95%戻して0.89%安にとどまった。しかし、いずれも参照価格を回復するには至らなかった。
中小型株はさらに壊滅的——ストップ安34銘柄
中小型株セクターの被害はより深刻である。ストップ安34銘柄のうち、1銘柄あたり数百億ドン規模の売買代金を伴ったものとして、BSR(ビンソン精製)、VCI(バンタイ証券)、VND(VNダイレクト証券)、VCG(ビナコネックス)、GEX(ジェレックスグループ)、NVL(ノバランド、不動産大手)、HCM(ホーチミンシティ証券)、DXG(ダットサイゴン不動産)などが挙げられる。
3%超の下落銘柄は168に達し、これだけでHoSE全体の約定代金の67.3%を占めた。つまり市場で取引された金額の約3分の2が、大幅下落銘柄に集中していたことになる。これは「パニック的な投げ売りが市場を完全に支配していた」ことの明確な証左である。
逆行高はごくわずか——防衛的銘柄に資金集中
午前場では健闘していたMSN(マサングループ)、BSR、DPM(ペトロベトナム肥料化学)も午後には失速した。最終的に有意な出来高を伴って上昇を維持できたのは以下のごく少数にとどまった。
- VNM(ビナミルク、乳業最大手)+1.33%
- DCM(カマウ肥料)+1.61%
- TCX +3.99%
- KSB(カインホア鉱物)+1.91%
- NAB(ナムアバンク)+3.31%
- TCO +6.58%
- SBT(タンビンシュガー)+1.70%
ビナミルク(VNM)やサイゴンビール(SAB、+0.70%)など、ディフェンシブ銘柄に退避資金が向かった構図が見て取れる。
外国人投資家は引き続き売り越し——MWGとHDBに大口売り
海外投資家はこの日、HoSEで約300.7億ドンの売り越しとなった(午前は212.2億ドンの売り越し)。個別では以下の通り大口の売買が観測された。
主な売り越し銘柄:
- MWG(モバイルワールド)▲419.8億ドン
- HDB(HDバンク)▲337.8億ドン
- VHM(ビンホームズ)▲183.9億ドン
- VIC(ビングループ)▲157.6億ドン
- STB(サコムバンク)▲102.8億ドン
主な買い越し銘柄:
- MSN(マサングループ)+204億ドン
- VNM(ビナミルク)+151.5億ドン
- VCK +120.5億ドン
- FPT(FPTコーポレーション、IT最大手)+112.6億ドン
- TCX +91.4億ドン
外国人が買い向かったのはVNM、FPTなど業績安定株やIT関連に限られ、不動産・銀行を中心にリスク回避姿勢が鮮明となっている。
背景にある国際情勢——原油100ドル突破とアジア株全面安
今回の急落は、ベトナム固有の材料だけでは説明がつかない。国際情勢の緊迫化が最大のトリガーとなっている。WTI原油先物はこの日100ドル/バレルを突破し、ブレント原油も109ドル/バレル前後に達した。エネルギーコストの高騰はベトナムの製造業・輸送業に直撃するだけでなく、インフレ懸念を通じて金融政策の引き締め観測を強める。
アジア株式市場も同日、全面安の展開となった。
- 日経225(日本)▲3.68%
- 上海総合指数(中国)▲3.63%
- ハンセン指数(香港)▲3.52%
- KOSPI(韓国)▲6.49%
VN-Indexの▲3.44%は、これらと比較しても突出して悪い数字ではない。しかし、直近2営業日で108ポイントもの急落を演じている点で、新興市場特有のボラティリティの高さが改めて露呈した形だ。
テクニカル面の焦点——2025年11月の安値1,580ポイントが目前
VN-Indexは1,591.17ポイントまで下落し、2025年11月10日に記録した直近安値1,580.54ポイントに肉薄している。テクニカル的にはこの水準がサポートラインとして意識されるが、元記事が指摘する通り「2025年11月当時と現在では市場の背景が根本的に異なる」点に注意が必要である。昨年11月は地政学リスクがここまで深刻化しておらず、原油価格もこの水準にはなかった。仮に1,580ポイントを割り込めば、次のサポートは2024年後半の水準まで見当たらず、下値の見極めが一段と難しくなる。
投資家・ビジネス視点の考察
1. マージンコールの連鎖リスク:2営業日連続の大幅安は、信用取引のマージンコール(追証発生)→強制決済→さらなる下落、という悪循環を引き起こしやすい。ベトナムの証券会社はマージンレシオを50〜60%に設定しているケースが多く、短期間に10%近い下落が生じると一気に追証ラインに到達する。週明け以降もこの連鎖が続くかどうかが最大の焦点となる。
2. 外国人の動向とFTSE格上げへの影響:ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定を控えている。格上げが実現すれば数十億ドル規模のパッシブ資金流入が見込まれるが、現在のような急落局面では外国人の売り越しが続いており、短期的には格上げ期待だけでは買い支えとならない。ただし、中長期的に見れば格上げが実現した場合のリバウンド余地は大きく、現在の水準がエントリーポイントになり得るかどうか、慎重な見極めが求められる。
3. 原油高とベトナム経済への影響:ベトナムは石油精製能力の拡充を進めてきたとはいえ、依然として燃料の相当量を輸入に頼る。WTI100ドル超えの長期化は輸入インフレを加速させ、ベトナム国家銀行(中央銀行)の利下げ余地を狭める。製造業のコスト増は、ベトナムに生産拠点を置く日系企業にとっても無視できない要因である。
4. 日本企業・投資家への示唆:ベトナムに進出している日系製造業や、ベトナム株ETFを通じた投資家にとって、現在の局面はリスク管理の再点検が急務である。特にHPG(ホアファット)やFPTなど日本の機関投資家の保有比率が高い銘柄の値動きには注視が必要だ。一方、外国人が買い越しているFPTやVNMは相対的に底堅い動きを見せており、質への逃避(フライト・トゥ・クオリティ)の流れが確認できる。ポートフォリオの組み替えを検討する際の参考材料となろう。
5. 今後の注目ポイント:1,580ポイント近辺での攻防、原油市場の動向、海外主要市場のリバウンドの有無、そしてベトナム政府・中央銀行からの市場安定化メッセージの有無が、目先の方向感を左右する。マクロ環境が落ち着かない限り、戻り売り圧力は根強いと見るべきだろう。
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出典: 元記事












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