ベトナム消費者の約9割が「グリーン商品」を支持も購入は消極的——価格の壁が立ちはだかる現実

Người tiêu dùng chần chừ sắm sản phẩm xanh vì giá cao
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ベトナムの消費者の大多数がサステナブル消費(持続可能な消費)に賛同しているにもかかわらず、実際にグリーン商品を購入するのは「たまに」に留まっている——その最大の理由は「価格の高さ」と「入手の難しさ」であることが、最新の調査で改めて浮き彫りとなった。急速な経済成長を遂げるベトナムにおいて、環境意識と購買行動の間に横たわるギャップは、消費財メーカーや小売企業にとって大きな課題であると同時に、中長期的には巨大なビジネスチャンスでもある。

目次

「意識は高いが、財布は開かない」——ベトナム消費者のジレンマ

ベトナムでは近年、気候変動への危機感や、都市部を中心とした大気汚染・水質汚染といった身近な環境問題を背景に、いわゆる「グリーン消費」への関心が急速に高まっている。オーガニック食品、エコ包装の日用品、再生素材を使ったファッション、電気自動車(EV)など、環境に配慮した商品やサービスを求める声はSNS上でも盛んに発信されている。

しかし、現実の購買行動は理想と大きく乖離している。調査によると、ほとんどのベトナム人がサステナブル消費を「支持する」と回答する一方で、グリーン商品に実際にお金を払うのは「thỉnh thoảng(たまに)」と答える人が大半を占めた。その理由として真っ先に挙げられたのが「価格が高い」という点である。一般的なグリーン商品は、同等の通常商品と比較して数割から場合によっては倍近い価格設定となっており、平均月収がまだ発展途上にあるベトナムの消費者にとって、日常的に選び続けるにはハードルが高い。

加えて「探しにくい」「どこで買えるか分からない」という流通面の課題も指摘されている。ベトナムの小売市場は、近年ウィンコマース(WinCommerce)が展開する「ウィンマート(WinMart)」やサイゴン・コープ(Saigon Co.op)系列の「コープマート(Co.opmart)」など近代的なスーパーマーケットチェーンが勢力を拡大してはいるものの、依然として伝統的な市場(チョー)や個人経営の零細小売店が消費の大きな部分を担っている。こうした伝統的チャネルでは、グリーン商品の品揃えはほぼ皆無に近く、消費者が日常の買い物のなかで自然に手に取れる環境が整っていないのが実情である。

なぜ価格差が生まれるのか——ベトナムのグリーン商品市場の構造的課題

グリーン商品が割高になる背景には、いくつかの構造的な要因がある。まず、ベトナム国内におけるグリーン商品の製造規模がまだ小さいため、スケールメリットが効きにくい。例えばオーガニック農産物を見ても、有機認証(ベトナムの国内基準やUSDA、EU基準など)を取得するには数年単位の土壌転換期間と厳格な管理体制が必要であり、それがコストに直結する。

さらに、サプライチェーン全体でのグリーン対応が進んでいない点も大きい。環境配慮型の包装材や輸送手段を導入するには追加投資が必要であり、その費用は最終的に小売価格に転嫁される。ベトナム政府は2020年に改正環境保護法を成立させ、拡大生産者責任(EPR)制度の導入を段階的に進めているが、企業側のコスト吸収力にはまだ限界がある。

また、消費者側の情報リテラシーも課題である。何をもって「グリーン商品」とするかの基準が曖昧で、いわゆる「グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)」を見抜く力が消費者に十分備わっていないとの指摘もある。このため、正当な価格のグリーン商品が、まがい物との比較で「割高」に見えてしまう皮肉な現象も起きている。

政府と企業の動き——グリーン消費を後押しする政策とビジネス戦略

ベトナム政府は「2050年までのカーボンニュートラル達成」を国際的に宣言しており(2021年COP26での約束)、国内においてもグリーン経済への移行を加速させる方針を打ち出している。具体的には、グリーンボンド(環境債)の発行促進、再生可能エネルギーへの投資優遇、環境ラベル制度の整備などが進められている。

企業側でも、ベトナム最大手の食品・飲料企業であるビナミルク(Vinamilk、ホーチミン市証券取引所上場、ティッカー:VNM)がオーガニック牛乳ブランドを展開し、サステナブルな酪農経営をアピールしている。また、マサングループ(Masan Group、ティッカー:MSN)傘下のウィンコマースは、自社のスーパーマーケット網を通じてエコ商品の棚を拡充し始めている。日系企業ではイオンベトナム(AEON Vietnam)が、日本で培ったプライベートブランドの知見を活かし、環境配慮型商品の現地展開を強化している。

こうした動きはまだ緒に就いたばかりであるが、ベトナムの人口構成が若く(平均年齢約32歳)、デジタルネイティブ世代の環境意識が相対的に高いことを踏まえると、中長期的にはグリーン消費市場の拡大ポテンシャルは極めて大きいと見られている。

投資家・ビジネス視点での考察

今回のニュースは、ベトナム消費市場における「グリーンプレミアム(環境配慮の上乗せ価格)」の壁を改めて示したものであるが、投資家やビジネスパーソンにとっては以下の視点が重要である。

1. 消費関連銘柄への影響:短期的には、グリーン商品のプレミアム価格を吸収できる高所得層をターゲットとする企業(ビナミルク、マサングループなど)が先行者利益を得やすい。一方、大衆向け市場でグリーン商品の低価格化を実現できた企業は、中長期的に爆発的な成長を見せる可能性がある。VNM(ビナミルク)やMSN(マサングループ)、さらには小売関連のMWG(モバイル・ワールド・インベストメント)などの動向は引き続き注目に値する。

2. 日本企業・ベトナム進出企業への示唆:日本企業は環境技術や品質管理において強みを持つ。ベトナムの消費者が「品質には関心があるが価格がネック」という段階にあるいま、日本企業が持つ高品質・環境配慮型の製品や技術をベトナム市場のコスト構造に合わせてローカライズできれば、大きなシェアを獲得するチャンスがある。イオンベトナムの取り組みはその先駆的事例と言えるだろう。

3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定する見込みであり、格上げが実現すれば海外からの機関投資家マネーの大量流入が予想される。ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視するグローバルファンドがベトナム市場に参入する際、グリーン関連事業に積極的な企業は投資対象として選好されやすい。すなわち、現時点でサステナブル戦略を打ち出している企業は、FTSE格上げの恩恵をより強く受ける可能性がある。

4. マクロ経済トレンドにおける位置づけ:ベトナムは2024〜2025年にかけてGDP成長率6〜7%台を維持しており、中間所得層の拡大が進んでいる。所得水準が上がれば、グリーン商品に手が届く消費者層も自然と拡大する。現在の「意識と行動のギャップ」は、所得成長とインフラ整備が進むにつれて徐々に縮小していくと見るのが妥当である。グリーン消費市場の立ち上がりは、ベトナム経済の成熟度を測る一つのバロメーターとも言えるだろう。


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出典: 元記事(VnExpress)

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