ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナムの老舗照明・家庭用品メーカーであるランドン(Rạng Đông、ホーチミン証券取引所:RAL)が、2025年度の監査済み財務報告を公表した。売上高は前年比24%減の6,359億ドン、税引後利益は同39%減の361億ドンと大幅な減収減益に陥った。中国製品の大量流入、米国の関税政策、自然災害という「三重苦」が同社を直撃した格好である。
業績の詳細——売上・利益ともに急落
監査済み財務報告によれば、RALの純売上高は前年度の8,356億ドンから6,359億ドンへと24%減少した。税引後利益は593億ドン超から361億ドン超へと39%の大幅減となった。同社はホーチミン証券取引所(HOSE)に対し、前年同期比での業績乖離について正式に説明文書を提出している。
会社が挙げた「3つの存亡リスク」
RALの経営陣は、現在直面している経営環境の激変を、かつてベトナムが「ドイモイ(刷新)」政策を導入する前に同社が直面した危機に匹敵すると表現し、以下の3つのリスクを挙げた。
第一に、中国製品の「大洪水」である。中国国内の過剰生産能力を背景に、安価な中国製照明・家電製品がベトナム市場に大量流入している。加えて、外資系企業がベトナムに生産拠点を移転し、国内市場でランドンと直接競合するケースも増加しており、価格競争は熾烈を極めている。
第二に、デジタル技術・AIへの対応の遅れである。デジタルトランスフォーメーション(DX)やAI導入が新たな生産方式を確立しつつある中、これらへの対応が遅れれば市場でのポジションを失うリスクが現実のものとなる。同社は「デジタル転換の遅れは、そのまま市場地位の喪失につながる」と危機感を示した。
第三に、海外プラットフォーム企業の参入と米国関税リスクである。O2O(Online to Offline)を含むオンライン販売プラットフォームを武器とする外資系企業がベトナム市場を席巻し、ランドンの顧客を奪っている。さらに深刻なのが米国の関税政策で、ランドンのLED製品の輸出先として米国市場が実に53%を占めており、米国の不安定な関税政策が輸出事業に甚大な影響を及ぼしている。
値引き圧力・制度変更・自然災害が追い打ち
新たな税制政策の導入を受け、顧客や個人事業主が値引き(ディスカウント)を強く要求するようになり、これだけで売上高の約10%が押し下げられたという。また、偽造品・密輸品の取り締まり強化に伴い、多くの取引先が一時的に営業を停止する事態も発生した。さらに、ベトナム政府が推進する「定額課税(thuế khoán)の廃止と個人事業主の法人化」政策により、2025年6月1日からの電子インボイス制度への移行や在庫管理の見直しが必要となり、流通現場に大きな混乱が生じている。
加えて、2025年第4四半期にはベトナム中南部を中心に相次ぐ台風・洪水が発生し、甚大な被害をもたらした。ランドンのニャチャン支店の倉庫も急激な洪水により浸水し、大量の在庫商品が損傷する被害を受け、業績に直接的な打撃を与えた。
経営陣の対応策——「質の高い成長」とDX・グリーン転換
こうした状況に対し、RAL経営陣は以下の方針を打ち出している。まず、顧客の売掛金管理を強化し、債権回収リスクを低減する。安価な中国製品に流れた販売店が代金を支払えなくなるリスクが高まっているためである。同時に、科学技術の研究開発とイノベーションを加速し、「デジタル(AI)」と「グリーン」の双方の転換(いわゆる「ツイントランスフォーメーション」)を推進することで、先進的な生産方式を確立し、持続可能な成長を目指すとしている。
投資家・ビジネス視点の考察
RALの業績悪化は、ベトナム製造業が直面する構造的課題を象徴するケースである。以下の点に注目したい。
①中国の過剰生産問題の波及:中国のデフレ輸出はベトナムの照明業界にとどまらず、鉄鋼、繊維、家電など幅広いセクターに影響を与えている。ベトナム国内メーカーの利益率圧縮は今後も続く可能性が高く、同業他社の銘柄にも注意が必要である。
②米国関税リスク:LED製品の対米輸出比率53%という高い依存度は、トランプ政権下の関税政策の不確実性を考えると大きなリスク要因である。米国向け輸出比率の高いベトナム企業全般に共通する課題であり、ポートフォリオ構成時には輸出先の分散度を確認すべきである。
③日本企業への示唆:ベトナムに進出している日系照明・家電メーカーにとっては、中国製品との価格競争が激化する市場環境を再認識する必要がある。一方で、ランドンがDX・グリーン転換を推進する方針を示しており、日本企業が持つ省エネ技術やスマート照明技術での協業機会も考えられる。
④FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げに向けては、上場企業のガバナンスや情報開示の質が問われる。RALが監査済み報告書に基づき迅速に業績乖離の説明を行っている点は、開示姿勢としては評価できるが、業績そのものの回復がなければ、格上げ後の海外資金流入の恩恵を十分に受けられない可能性がある。
RALは1961年創業のベトナムを代表する老舗ブランドであり、国内での知名度は極めて高い。しかし、同社自身が認めるように「存亡の危機」に直面しており、DXとグリーン転換の成否が中長期的な投資判断の鍵を握ることになるだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント