ベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空(Vietnam Airlines)が、米ボーイング社から最新鋭の狭胴型旅客機「ボーイング737-8」を50機購入する契約を締結した。総額約81億ドル(約20兆ドン超)に上るこの取引は、同社30年以上の歴史において最大規模の商談であり、ベトナム航空業界の今後10〜15年の構造を左右する戦略的決断として注目を集めている。
トー・ラム書記長立ち会いのもと、ワシントンで歴史的調印
この歴史的な契約は、米国ワシントンD.C.で行われた。署名式には、ベトナム共産党のトー・ラム書記長率いる高官代表団が立ち会った。同代表団は、ドナルド・トランプ大統領の招待によるガザ和平評議会の開幕会議に出席するため訪米しており、その外交日程の中で実現した形だ。
この契約は単なる航空会社の設備投資にとどまらない。2023年にベトナムと米国が「包括的戦略パートナーシップ」を樹立してから間もなく3年を迎える中、両国間の経済・貿易協力が深化していることを象徴する出来事でもある。
2030年に151機体制へ──コロナ禍からの完全復活
ベトナム航空は、50機のボーイング737-8を2030年から2032年にかけて順次受領する計画だ。これにより、2030年時点での保有機数は約151機に拡大する見込みである。
実は、同社は2017年から2021〜2025年を見据えた狭胴機50機の導入計画を練っていた。当時の候補はエアバスA320neoまたはボーイング737 MAXだった。しかし、新型コロナウイルスの世界的流行がこの計画を直撃。2020〜2021年には深刻なキャッシュフロー悪化と機材余剰に見舞われ、計画の全面見直しを余儀なくされた。
その後、航空市場は力強く回復。特にベトナム国内線と東北アジア路線は、狭胴機の航続距離に適した需要を示している。2025年、ベトナムの航空業界は過去最高となる8,350万人の旅客を輸送し、前年比10.7%増を記録した。今後5年間も二桁成長が続くとの予測もある。
737-8の強み──燃費20%削減と環境性能
ボーイング737-8は、737 MAXファミリーに属する最新鋭の狭胴型旅客機である。最大約200席の客室構成と最長6,570キロメートルの航続距離を持ち、国内線から近距離国際線まで柔軟に運航できる。
搭載されるCFM LEAP-1Bエンジンと最適化された空力設計により、前世代機と比較して燃料消費を約20%削減。1機あたり年間約3,600トンのCO₂排出削減が可能とされる。客室には「ボーイング・スカイ・インテリア」と呼ばれる最新仕様が採用され、LED照明、大型収納棚、ワイヤレスエンターテインメントシステムなどが乗客体験を向上させる。
ベトナム航空局の専門家は、機材稼働率を適切に管理すれば、燃料費と整備コストの最適化を通じて競争激化の中でも利益率を維持できると評価している。
過去最高業績を背景にした投資判断
ベトナム航空のダン・ゴック・ホア会長によれば、50機の737-8は国内幹線である南北路線(ハノイ〜ホーチミン)、そして重点市場である東南アジアと東北アジアの路線に投入される予定だ。
資金調達については、2025年に国内銀行のほか、米輸出入銀行(US EXIM Bank)やシティバンクなど米国の金融機関と協議を進めている。
同社の2025年度業績は過去最高を更新した。連結売上高は121兆4,290億ドンに達し、前年比約10%増。税引後利益は7,713億ドンを超えた。新規・再開路線は過去最多の14路線に上り、欧州、東北アジア、東南アジア、南アジアへのネットワークを拡大した。
同社幹部は「健全な財務基盤を持つベトナム航空は、長期的パートナーシップにおいて信頼できる相手だ。今こそ飛躍の好機である」と自信を示している。
航空産業エコシステムへの波及効果
この大型契約は、ベトナム航空単体にとどまらず、同国の航空産業全体に波及効果をもたらす可能性がある。
ロンタイン国際空港(ホーチミン近郊で建設中)、ノイバイ国際空港(ハノイ)、タンソンニャット国際空港(ホーチミン)といった主要空港の拡張・改良と連動すれば、国内路線網の拡充が加速する。ハノイ〜ホーチミン、ハノイ〜ダナン、ホーチミン〜ダナンといった幹線の増便は、混雑緩和と運航信頼性の向上につながる。
さらに、中部高原、メコンデルタ地域と主要経済圏を結ぶ二次路線の開発も視野に入る。これは観光、投資、貿易の活性化を促進するだろう。
国際市場では、東北アジア、東南アジア、南アジアでの競争力強化が期待される。地域間競争が激化する中、最新鋭機材の保有は市場シェア維持・拡大の前提条件となっている。
加えて、大型機材契約にはパイロット・整備士の育成、MRO(整備・修理・オーバーホール)サービス、航空金融、保険といった周辺需要が付随する。機材規模が一定水準に達すれば、ベトナム国内の航空産業エコシステムへの投資誘致も現実味を帯びてくる。
日本企業・投資家への示唆
ベトナム航空の大型投資は、同国が「世界の工場」から「消費市場」へと転換しつつある象徴的な動きでもある。航空需要の急拡大は、製造業のサプライチェーンだけでなく、観光、小売、サービス産業の成長を裏付けている。
日本企業にとっては、航空機関連部品・素材のサプライヤー、MROサービス、パイロット訓練、空港運営といった分野での協業機会が広がる可能性がある。また、ベトナム〜日本間の航空便増加は、ビジネス渡航や観光交流のさらなる活性化につながると期待される。
ベトナム航空は2035〜2040年に保有機数を200〜230機、うち狭胴機を130〜160機に拡大する長期目標を掲げている。今回の50機契約はその第一歩に過ぎない。東南アジアの航空市場における同社の存在感は、今後さらに高まっていくだろう。
出典: Vn Economy
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