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ベトナムの大手証券会社ベトキャップ(Vietcap Securities、ティッカー:VCI)が、2025年の税引後利益目標を過去最高となる2,300億ドンに設定した。同社の会長を務めるのは、ベトナムの元首相グエン・タン・ズン氏の娘であるグエン・タイン・フォン氏である。事業環境がより厳しくなるとの見通しにもかかわらず、強気の業績目標を掲げた背景には何があるのか。
ベトキャップとは何者か——グエン・タイン・フォン氏の存在感
ベトキャップ証券(正式名称:Công ty Cổ phần Chứng khoán Bản Việt)は、ホーチミン市に本社を置くベトナムの主要証券会社の一つである。ホーチミン証券取引所(HOSE)にティッカー「VCI」で上場しており、証券仲介業務、投資銀行業務、自己売買、資産管理など幅広い金融サービスを展開している。
同社の会長であるグエン・タイン・フォン氏は、2006年から2016年までベトナム首相を務めたグエン・タン・ズン氏の娘として知られる。フォン氏はスイスのジュネーブ大学で学んだ経歴を持ち、ベトナム金融業界で長年にわたりリーダーシップを発揮してきた人物である。彼女が率いるベトキャップは、特にIPO(新規株式公開)のアドバイザリー業務やM&A仲介において高い実績を誇り、ベトナム資本市場の発展に深く関わってきた企業だ。
2025年の業績目標——「困難な環境」でも過去最高益を狙う
ベトキャップが今年度の利益目標として掲げた2,300億ドンは、同社にとって過去最高水準となる。注目すべきは、同社自身が2025年の事業環境について「以前よりも困難になる」と予測している点である。
ベトナムの証券業界は、2022年後半の不動産・社債市場の混乱を経て2023年から2024年にかけて回復基調にあった。しかし2025年に入り、米中貿易摩擦の再燃、世界的な関税引き上げリスク、そしてベトナム国内の不動産セクターの構造的課題など、複数の逆風要因が意識されている。こうした環境下で過去最高益を目標に掲げるということは、ベトキャップ経営陣がなんらかの成長ドライバーに確信を持っていることを示唆している。
考えられる要因としては、以下が挙げられる。第一に、ベトナム株式市場の取引量は中長期的に増加トレンドにあり、新規口座開設数も堅調に推移していること。第二に、投資銀行部門での大型案件のパイプラインが充実している可能性。第三に、自己売買ポートフォリオの運用益に対する自信である。
ベトナム証券業界の競争環境
ベトナムの証券業界は近年、激しい競争にさらされている。SSI証券、VNダイレクト証券(VND)、ホーチミン市証券(HCM)、MB証券(MBS)といった大手が市場シェアを競い合う構図が続いている。さらに、韓国系のミレアセット証券やKB証券ベトナムといった外資系プレーヤーも手数料競争を仕掛けており、仲介業務の利益率は低下傾向にある。
こうした中でベトキャップが差別化を図っているのが、投資銀行業務とリサーチ力である。同社のアナリストレポートは、国内外の機関投資家から高い評価を受けており、これが大型案件の獲得につながっている。特に近年は、国営企業の株式売却(エクイタイゼーション)や外資向けの株式公開支援などで実績を積んできた。
投資家・ビジネス視点の考察
VCI株への影響:過去最高益の目標設定は、短期的にはVCI株にポジティブなシグナルとなる。ただし、「困難な事業環境」という但し書きがある以上、四半期ごとの進捗を慎重にモニタリングする必要がある。目標未達となった場合の株価調整リスクも考慮すべきである。
ベトナム証券セクター全体への示唆:大手証券会社が強気の利益目標を掲げているということは、業界全体として2025年もベトナム株式市場の取引活性化を見込んでいることを意味する。SSI、VND、HCMなど同業他社の目標値と比較することで、業界全体のコンセンサスが見えてくるだろう。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、証券セクターにとって最大の追い風である。格上げが実現すれば、海外からの資金流入が大幅に増加し、証券会社の仲介手数料・カストディ収入の拡大が期待される。ベトキャップの強気目標の背景には、この格上げを見据えた外国人投資家向けサービスの拡充戦略がある可能性が高い。ベトナム当局はKYC(本人確認)のデジタル化や決済期間の短縮(T+2への移行)、外国人投資家の事前入金要件の緩和など、格上げに向けた制度改革を急ピッチで進めており、こうした環境整備も証券業界の成長を下支えしている。
日本企業への影響:日本からベトナム株式市場への投資は年々拡大しており、ベトキャップを含む現地証券会社との提携・口座開設を通じたベトナム個別株投資も広がりつつある。日系証券会社がベトナム市場へのアクセスを拡大する際、現地のパートナー選定においてベトキャップの動向は一つの参考指標となるだろう。
また、グエン・タイン・フォン氏という政治的にも注目度の高い人物が経営トップを務めている点は、良くも悪くも同社のガバナンス評価に影響を与える要素である。ベトナムでは近年、反汚職キャンペーン(「溶鉱炉」と呼ばれる)が進行中であり、政治と経済の距離感が常に市場の関心事となっている。投資家としては、同社の経営の透明性やコンプライアンス体制にも注目しておきたい。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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