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ベトナムの大手証券会社VPBankS(VPBank Securities、VPバンク証券)が、2026年度の税引前利益目標を6,453億ドン(tỷ đồng=10億ドン単位で6.453)、売上高目標を1兆1,074億ドンに設定した。前年比でそれぞれ44.2%増、39%増という意欲的な数字であり、ベトナム証券業界全体の成長トレンドを象徴する動きとして注目される。
VPBankSとは何者か——親会社VPBankとの関係
VPBankS(正式名称:Công ty Cổ phần Chứng khoán VPBank)は、ベトナムの民間大手銀行であるVPBank(ベトナム繁栄商業株式銀行)傘下の証券子会社である。VPBank自体はホーチミン証券取引所(HOSE)に上場しており、時価総額ベースでベトナムの銀行セクター上位に位置する。リテールバンキングや消費者金融(傘下のFEクレジット)で知られるが、近年は証券・投資銀行部門の強化を加速させており、VPBankSはその中核的な役割を担っている。
VPBankSは2024年にホーチミン証券取引所へ株式を上場しており、ティッカーコードは「VPB」ではなく証券子会社としての独自コードで取引されている。親会社の強固な資本基盤とブランド力を背景に、個人投資家向けブローカレッジから機関投資家向けの投資銀行業務まで幅広くサービスを展開している。
2026年計画の具体的内容——44%増益は何を意味するか
今回発表された2026年度の経営計画の主要数値は以下の通りである。
- 税引前利益目標:6,453億ドン(前年比44.2%増)
- 売上高(営業収益)目標:1兆1,074億ドン(前年比39%増)
前年比44.2%の増益目標は、ベトナムの証券業界の中でもかなり強気な水準である。これは単なる楽観的見通しではなく、いくつかの構造的要因に裏打ちされたものと見られる。
急成長を支える3つの追い風
1. ベトナム株式市場の取引量拡大
ベトナムの株式市場は2025年後半から取引量が顕著に回復しており、ホーチミン証券取引所(HOSE)の1日平均売買代金は大幅に増加している。個人投資家の証券口座数も右肩上がりで増え続けており、ベトナムの人口約1億人のうち証券口座保有率はまだ10%前後と、先進国に比べて拡大余地は大きい。取引量の増加はブローカレッジ手数料収入に直結するため、VPBankSのような大手証券会社にとっては最も基本的な成長ドライバーとなる。
2. 新KRXシステムの本格稼働
ホーチミン証券取引所は、韓国取引所(KRX)の技術支援を受けて開発された新しい取引システムを導入した。このシステムにより、空売り、日中取引(イントラデイトレード)、デリバティブ商品の多様化など、これまで制限されていた取引手法が段階的に解禁される見通しである。これにより市場全体の流動性が飛躍的に高まることが期待されており、証券会社のマージンレンディング(信用取引)収入やトレーディング収益の拡大につながる。
3. 投資銀行業務(IB)の拡大
ベトナムでは国営企業の株式化(エクイタイゼーション)や民間企業のIPO、社債発行が活発化しており、引受業務やアドバイザリー業務の需要が増加している。VPBankSは親会社VPBankの法人顧客基盤を活用し、投資銀行部門の収益拡大を図っている。特に不動産セクターの回復に伴い、不動産企業の社債発行・資金調達ニーズが再び高まっている点は、証券会社のIB収益を押し上げる要因となる。
ベトナム証券業界全体の競争環境
ベトナムの証券業界は近年、再編と淘汰が進んでいる。大手では、SSI証券(ベトナム最大手の独立系証券会社)、VNDirect証券、ホーチミン市証券(HSC)、MB証券、Vietcap証券などがシェアを競い合っている。銀行系証券会社は親銀行の顧客基盤と資本力を武器に急速にシェアを伸ばしており、VPBankSもその典型例である。
一方で、手数料の値下げ競争やデジタル化投資の負担が増しており、中小証券会社にとっては厳しい環境が続いている。業界全体としては「強者がさらに強くなる」寡占化のトレンドが明確であり、VPBankSの大幅な増益目標はこの業界再編の波に乗ったものと解釈できる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム証券セクターへの投資妙味
VPBankSの強気な業績目標は、同社固有の要因だけでなく、ベトナム証券セクター全体の成長ポテンシャルを反映している。証券会社の業績は株式市場の取引量と高い相関を持つため、ベトナム市場全体が拡大基調にあるかどうかが鍵となる。現時点では、個人投資家の参入増加、外国人投資家の関心の高まり、新取引システムの稼働といったポジティブな要素が揃っており、セクター全体として追い風が吹いている状況である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連性
2026年9月にも決定が見込まれるFTSE(フッツィー)新興市場指数へのベトナムの格上げは、証券業界にとって最大の追い風となり得る。格上げが実現すれば、グローバルなパッシブファンドからの大規模な資金流入が見込まれ、市場の取引量は飛躍的に増加する可能性がある。VPBankSが2026年度にこれほど強気な計画を立てている背景には、このFTSE格上げによる市場活性化への期待が織り込まれている可能性が高い。
日本企業・日本人投資家への示唆
日本の証券会社や金融機関にとって、ベトナムの証券業界は提携先・投資先として引き続き注目度が高い。実際に、過去にはSBI証券やみずほ証券、大和証券グループなどがベトナム証券会社への出資や業務提携を行ってきた実績がある。VPBankSのような成長余地の大きい証券会社は、日本の金融機関にとっても戦略的パートナーとなり得る存在である。
個人投資家の視点では、ベトナム証券セクターの銘柄は株式市場全体の成長に対するレバレッジ(てこ)の効いた投資先となる。市場が拡大すれば証券会社の業績はそれ以上のペースで伸びる構造にあるため、ベトナム市場全体の成長ストーリーに賭けたい投資家にとっては有力な選択肢となるだろう。ただし、市場の調整局面では逆方向にも大きく振れるリスクがある点には留意が必要である。
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