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ベトナム最大級の外資系資産運用会社であるDragon Capital(ドラゴンキャピタル)の従業員平均年収が30億ドンを超えていたことが明らかになった。ベトナムの一般的な給与水準と比較すると桁違いの高報酬であり、同国の金融・資産運用業界の急成長と人材獲得競争の激しさを如実に物語る数字である。
年間人件費約5,700億ドン、一人当たり30億ドン超
報道によると、Dragon Capitalは前年度の人件費として約5,700億ドン(gần 570 tỷ đồng)を計上した。これを従業員数で割ると、一人当たりの平均年収は30億ドン(hơn 3 tỷ đồng)を超える水準となる。この「人件費」には基本給のほか、ボーナス、社会保険料の会社負担分、各種手当などが含まれるのが一般的であるため、実際の手取り額はこれよりやや低くなるものの、それでもベトナム国内では極めて高水準であることに変わりない。
参考までに、ベトナムの労働者全体の平均月収は2024年時点で約750万〜800万ドン程度とされており、年収に換算すると約9,000万〜1億ドン前後である。Dragon Capitalの平均年収30億ドン超は、全国平均の実に30倍以上に相当する計算だ。ホーチミン市の大手銀行や証券会社の幹部クラスでも年収10億ドンに届けば高水準と言われる中、この数字がいかに突出しているかがわかる。
Dragon Capitalとは何者か
Dragon Capital Group(ドラゴンキャピタル・グループ)は、1994年にホーチミン市で設立されたベトナム最古参かつ最大級の外資系資産運用会社である。創業者はイギリス人のドミニク・スクリベン(Dominic Scriven)氏で、ベトナムがまだドイモイ(刷新)政策の初期段階にあった時代から同国の資本市場に深く関与してきた人物として知られる。スクリベン氏は長年の貢献が認められ、ベトナム政府から労働勲章を授与されたこともある。
同社の運用資産総額(AUM)は数十億ドル規模とされ、旗艦ファンドである「Vietnam Enterprise Investments Limited(VEIL)」はロンドン証券取引所に上場している。ベトナム株式市場の主要銘柄に幅広く投資しており、VinGroup(ビングループ)、Vinhomes(ビンホームズ)、FPT、Masan Group(マサングループ)など、ホーチミン証券取引所(HOSE)の時価総額上位銘柄の大株主として頻繁に名前が挙がる存在である。
従業員数は資産運用会社としてはそれほど多くないとみられるが、少数精鋭で巨額の資産を運用するビジネスモデルゆえに、一人当たりの付加価値が極めて高い。結果として、高い人件費が許容される構造になっている。
なぜこれほど高報酬なのか—ベトナム金融人材市場の実態
Dragon Capitalの高報酬の背景には、複数の構造的要因がある。
第一に、ベトナムにおける高度金融人材の絶対的な不足が挙げられる。ベトナムの証券市場は2000年にようやく開設されたばかりであり、欧米や日本と比較すると歴史が浅い。CFA(公認金融アナリスト)資格保有者や、グローバルな機関投資家との折衝経験を持つ人材は依然として限られており、優秀な人材の争奪戦が激しい。
第二に、外資系運用会社としてのグローバル報酬水準の適用がある。Dragon Capitalは海外の機関投資家から資金を預かって運用しており、報酬体系も国際的な資産運用業界の基準に準拠している。シンガポールや香港の同業他社と人材を奪い合う構図であるため、報酬水準もそれに見合ったものとなる。
第三に、運用資産の拡大に伴う運用報酬・成功報酬の増加がある。ベトナム株式市場は近年、個人投資家の急増と海外資金の流入によって取引規模が拡大しており、Dragon Capitalのようなファンドの運用益も増大傾向にある。これが人件費に反映されていると考えられる。
ベトナム金融業界全体で進む「報酬インフレ」
Dragon Capitalの事例は突出しているとはいえ、ベトナムの金融業界全体で報酬水準が上昇傾向にあることは間違いない。大手商業銀行のVietcombank(ベトコムバンク)、Techcombank(テクコムバンク)、MB Bank(MBバンク)などでも近年、従業員一人当たりの平均収入が上昇していることが各社の決算資料から確認されている。証券会社でも、SSI証券やVNDirect証券など大手は高い報酬で人材を囲い込んでいる。
こうした動きは、ベトナムの金融セクターが量的拡大だけでなく質的高度化の段階に入りつつあることを示唆している。デリバティブ市場の拡充、ETF商品の多様化、そして後述するFTSE新興市場指数への格上げ議論など、市場のインフラが整備される中で、それを支える高度人材への需要が急速に高まっているのである。
投資家・ビジネス視点の考察
1. ベトナム資産運用業界の成熟度を測る指標として
Dragon Capitalが国際水準の報酬を支払えるということは、それだけの運用収益を安定的に生み出していることの裏返しである。これはベトナム株式市場が外資系機関投資家にとって「投資に値する市場」として定着しつつあることを意味する。日本からベトナム株に投資する個人投資家にとっても、市場の流動性やガバナンスが改善している一つの傍証として捉えることができる。
2. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれているFTSE(フッツィー)新興市場指数へのベトナムの格上げが実現すれば、グローバルなパッシブファンドからベトナム市場に大量の資金が流入することが期待される。Dragon Capitalのような大手運用会社は、この格上げの最大の恩恵を受ける立場にあり、さらなる運用資産の拡大と収益増加が見込まれる。格上げを見据えて今から人材確保と組織強化を進めている可能性も高い。
3. 日本企業への示唆
ベトナムに進出している日系金融機関や、ベトナム関連の投資商品を扱う日本の運用会社にとって、現地の金融人材コストの上昇は無視できない要素である。優秀なベトナム人アナリストやファンドマネージャーの採用競争は今後さらに激化する可能性があり、報酬戦略の見直しが求められるだろう。一方で、ベトナム金融市場の高度化は、日本の金融ノウハウやフィンテック技術の輸出機会でもある。
4. 関連銘柄への影響
Dragon Capital自体はベトナム国内市場に上場していないが、同社が大株主として名を連ねる上場企業群の動向には注目すべきである。Dragon Capitalのポートフォリオの売買動向は、VN-Index(ベトナム株価指数)の方向性を占う上で重要な手がかりとなる。また、ベトナムの証券会社株(SSI、VND、HCMなど)は、市場の取引量拡大や格上げ期待の恩恵を直接受けるセクターであり、金融業界全体の活況を示す今回のニュースはポジティブな材料と言えるだろう。
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出典: 元記事












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