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ベトナムの大手商業銀行であるMB(軍隊商業銀行、ティッカー:MBB)が、中小企業(SME)顧客向けの特別イベントを開催し、ピックルボール世界ランキング1位のアナ・リー・ウォーターズ(Anna Leigh Waters)選手を招いた交流会を実施した。銀行がスポーツスターを活用してSME顧客のエンゲージメントを高めるという、ベトナム金融業界でも異色のマーケティング施策として注目を集めている。
イベントの概要
MBが今回開催したのは、同行のSME顧客に特化した招待制イベントである。目玉となったのは、米国出身で現在ピックルボールの世界ランキング1位に君臨するアナ・リー・ウォーターズ選手とのエクスクルーシブな交流機会だ。参加した中小企業の経営者やオーナーたちは、同選手と直接対面し、スポーツを通じたネットワーキングを楽しんだとされる。
なぜピックルボールなのか
ピックルボールは、テニス・バドミントン・卓球の要素を融合したラケットスポーツで、近年世界的に爆発的な人気を獲得している。特に米国では競技人口が急増し、プロリーグ「MLP(Major League Pickleball)」の創設やメディア放映権の高騰など、産業としても急成長中である。ベトナムにおいても、2023年頃からハノイやホーチミン市を中心に専用コートが次々とオープンしており、都市部の富裕層やビジネスパーソンの間で「新しい社交スポーツ」として浸透しつつある。MBが今回のイベントにピックルボールを選んだ背景には、同スポーツがまさにSME経営者層の関心事と合致しているという戦略的判断があると考えられる。ゴルフに代わる「次のビジネス社交スポーツ」としてのポジションを狙う動きとも言えるだろう。
MBのSME戦略とその背景
MB(正式名称:Ngân hàng TMCP Quân đội、英語名:Military Commercial Joint Stock Bank)は、ベトナムの銀行セクターにおいてトップ5に入る大手行であり、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するティッカー「MBB」は、外国人投資家からも高い人気を誇る銘柄の一つである。同行は従来、リテールバンキングの強化で知られてきたが、近年はSMEセグメントへの注力を明確に打ち出している。
ベトナムでは、経済全体の約97%を中小企業が占めるとされ、GDPへの貢献度も約40%に達する。しかし、中小企業の銀行融資へのアクセスは依然として限定的であり、正式な銀行借入を利用できている中小企業は全体の3割程度に過ぎないとの推計もある。こうした「アンダーバンクド」な市場を獲得するため、MBをはじめベトナムの主要銀行はSME向けの専用商品やサービスの拡充を進めている。今回のような顧客向けイベントは、単なるプロモーションにとどまらず、SME経営者同士のビジネスマッチングの場を提供するという付加価値も持つ。銀行がプラットフォーマーとしての役割を果たすことで、融資関係を超えた深い顧客関係の構築を目指しているのである。
ベトナム銀行業界のマーケティング競争
ベトナムの銀行業界では、顧客獲得競争がますます激化している。テクコムバンク(Techcombank、ティッカー:TCB)はランニングイベント「Techcombank Ho Chi Minh City International Marathon」のメインスポンサーとして大規模なブランディングを展開し、VPバンク(VPBank、ティッカー:VPB)は音楽フェスティバルへの協賛で若年層への訴求を強めてきた。こうした中、MBが世界的なスポーツスターを招いてSME顧客に特化したイベントを開催したことは、「量」ではなく「質」を重視した差別化戦略として位置づけられる。ピックルボールという新興スポーツを選んだ点にも、先進的・革新的な企業イメージの構築という意図が読み取れる。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュース自体は、MBBの株価を直接動かすような材料ではないが、同行のSME戦略が着実に進行していることを示すシグナルとして注目に値する。SMEセグメントは、リテールや大企業向け融資と比較して利鞘(NIM)が高い傾向にあり、MBがこの分野でのシェアを拡大できれば、中長期的な収益性の向上につながる。2025年時点でMBBは、ROE(自己資本利益率)がベトナム銀行セクターでもトップクラスの水準を維持しており、SME戦略の深化はその優位性をさらに強固にする可能性がある。
日本企業との関連で言えば、ベトナムに進出している日系中小企業にとっても、MBのSME向けサービスの充実は直接的なメリットとなり得る。日系企業がベトナム現地法人の運転資金や設備投資の融資先として、MBのような積極的なSME支援を行う銀行を検討する余地は十分にあるだろう。
また、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナムの銀行セクターは外国人投資家の注目度がさらに高まることが予想される。MBBは時価総額・流動性ともにFTSE組み入れ候補の上位に位置しており、こうしたブランド力の強化施策が海外からの評価にもプラスに作用する可能性がある。ベトナム銀行株への投資を検討する際には、各行のSME戦略の進捗度合いも重要な判断材料の一つと言えるだろう。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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